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【精神障害者支援】家賃高騰と人手不足――当事者・事業所から切実な声

2026/9/8

家賃高騰で、精神障害のある方が通う事業所そのものが揺れています。相談支援を担う人材も足りていません。当事者・事業所から届いた声をもとに、家賃補助の拡充、荒川区に学ぶ相談支援事業所への独自支援、ピアサポーターの養成と雇用を、新宿区に求めます。

皆さま、こんにちは。新宿区議会議員の川村のりあきです。

「月3万3千円、家賃を上げると言われた」

「相談支援を担う人が足りない」

「自分も、同じ病気で苦しんでいる誰かの役に立ちたい」

先日、新宿区内の精神障害者支援団体や当事者、ご家族でつくる「新宿精神保健ネットワーク連絡会」の皆さまと、来年度予算に向けた要望懇談を行いました。

そこで聞いたのは、単なる「福祉予算を増やしてほしい」という話ではありませんでした。

家賃高騰によって事業所そのものを維持できなくなる危機。

地域で暮らすために必要な相談支援を担う人材の不足。

そして、支援されるだけではなく、自分の経験を生かして誰かを支えたいという当事者の願いです。

精神障害があっても、住み慣れた新宿で自分らしく暮らし、働き、誰かの力になる。その当たり前の願いを支えるために、いま新宿区に何が必要なのか。現場から寄せられた声をご報告します。

「月3万3千円の値上げ」――家賃高騰が事業所を直撃

精神障害のある方が通う就労継続支援B型事業所などの中には、新宿区内の民間賃貸物件を借りて運営しているところがあります。地価も家賃も高い新宿では、施設の家賃は事業運営を左右する大きな負担です。

今回の懇談では、ある事業所から、「昨年11月、オーナーから月3万3千円の家賃値上げを求められた」との報告がありました。年間にすれば約40万円の負担増です。

しかし、簡単に「払えません」と言える話ではありません。契約を更新できなければ、そこで日々を過ごしている利用者の居場所そのものが失われかねないからです。

さらに、「耐震性の高い建物に移りたい。しかし、新宿の家賃では移転できない」という声も出されました。安心して通える場所を確保したくても、家賃が壁になる。これは事業者だけの経営問題ではありません。障害のある方が地域で暮らし続けられるかどうかという問題です。

「障害福祉には100億円近い一般財源を充てている」?――それで支援拡充を止めていいのか

懇談では区側から、障害福祉分野には区の一般財源から約100億円規模を充てているとの趣旨の説明があったとのことです。この説明は?で、こう受け止められた区側の説明は問題としか言いようがありません。ただ、これを理由に家賃補助などのさらなる拡充は難しいとされたそうです。

しかし私は、ここに大きな疑問があります。

障害福祉に多くの財源が必要なのは、行政にとっての「赤字」だからではありません。障害のある方が地域で生活するために必要な行政サービスだからです。

問題は「障害福祉にいくら使っているか」だけではありません。現場でいま何が起きているのか。必要な支援が届いているのか。家賃高騰によって事業所が維持できなくなれば、結果として困るのは利用している当事者です。

財政規模だけを理由に扉を閉ざすのではなく、現在の補助制度が、新宿の家賃水準に見合っているのかを検証する必要があります。

荒川区では最大500万円――相談支援を「増えるのを待つ」のではなく増やす

もう一つ深刻なのが、相談支援を担う人材不足です。

障害福祉サービスを利用するための計画をつくり、本人の希望を聞きながら必要なサービスにつなぐ相談支援専門員。長期入院している精神障害のある方が地域生活へ移るための支援。こうした地域生活を支える「つなぎ役」が足りないという声が相次ぎました。

ここで参考になるのが荒川区です。荒川区は2025年度から、計画相談支援などを行う区内事業所を対象に、独自の「指定特定相談支援事業所体制整備補助金」を創設しました。常勤・専従の相談支援専門員を新たに配置した場合などに、実績に応じて1事業所あたり最大500万円を補助する仕組みです。さらに、新規開設・移転や、他事業所との協働体制を確保するための補助も設けています。

「相談支援事業所が足りない」で終わるのではなく、足りないのであれば、増やすために自治体が財政支援する。この姿勢は、新宿区も大いに学ぶべきです。

「今度は僕が誰かの役に立ちたい」――当事者から出た言葉

今回の懇談で、私が特に心に残ったのが、当事者の方のお話でした。

現在、自らの経験を生かして、同じような苦しみを抱える人を支えるピアサポーターを目指しています。その原点には、ご自身が支えられた経験があります。

依存症の治療を受けていた時、手を差し伸べてくれたのは、自身もアルコール依存症を経験したスタッフだったといいます。その時のことをこう話してくださいました。

「同じ苦しみ、同じ地獄を経験した人だからこそ、私のことを100%理解してくれた」

そして現在も、同じ双極性障害を抱えながらピアスタッフとして働く人の姿が、ご自身の大きな励みになっているそうです。

「その人が職員として元気に働いている姿を見るだけで、僕自身の『仕事をがんばろう』という毎日のモチベーションになっています」

そして最後に、「今度は、僕がピアサポーターとなって、新宿のこの場所で、病に苦しんでいる誰かの役に立ちたい」と話してくださいました。

私は、この言葉を行政にこそ受け止めてほしいと思います。

「支援される人」から「支える人」へ

ピアサポートの大きな力は、同じような経験をした人だからこそ分かり合えることです。専門職による支援と、当事者だからこそできる支援。どちらか一方ではありません。両方が組み合わさることで、地域での暮らしを支える力はもっと強くなります。

そして重要なのは、善意だけに頼らないことです。「誰かの役に立ちたい」という当事者の力を、きちんと仕事として位置づけ、対価を保障する。ピアサポーターの養成と雇用を、新宿区の地域移行支援の中にしっかり位置づけるべきです。

物価高の中で「年間約30万円減る」――現場から届いたもう一つの訴え

地域活動支援センターからは、補助制度の変更に伴い、今年度の補助額が昨年度より年間約30万円減る見込みだとの訴えもありました。

人件費も物価も上がっています。福祉の現場では、人材確保そのものが難しくなっています。その時に補助額が下がれば、影響を受けるのは現場で働く職員と利用者です。

ここについては、なぜ減額になるのか、制度変更の根拠は何なのか、事前にどのような説明を行ったのかを区に確認する必要があります。「30万円だから小さい」という問題ではありません。ぎりぎりの人員で運営している事業所にとっては、一人ひとりを支える時間にも直結する問題です。

一方で、新宿区は新庁舎に「約500億円」

ここで考えたいのが、新宿区全体の予算の優先順位です。

区は現在、本庁舎の将来的な建て替えに向け、庁舎整備基金の積み立てを始めています。区の公式資料では、候補地によって費用が異なるため、庁舎建設・設計監理など全候補地に共通する費用として、約500億円を新庁舎整備の想定費用としています。

しかも、この約500億円には、解体工事、借上げ庁舎、基盤整備、補償費用、地方債利子などは含まれていません。区は、この想定費用の約50%、約250億円以上を基金で賄うことを目指しています。

もちろん、老朽化した庁舎を将来どうするのかという検討は必要です。しかし私は問いたい。将来の庁舎のために巨額の基金を積み立てる一方で、いま家賃高騰に苦しむ障害福祉事業所への支援を「財政的に難しい」として終わらせてよいのでしょうか。

2015年には約32億円をかけて免震改修

現在の本庁舎については、2014年から2015年にかけて、設計・工事費約32億円をかけた免震改修と防災機能強化が行われています。区自身も当時、大地震の後も防災拠点として継続使用できるよう耐震性を確保する工事だと説明していました。

だからこそ、現在の庁舎をいつまで活用できるのか。建て替えの時期は本当に妥当なのか。500億円規模の整備より先に、いま暮らしと福祉に必要な支援はないのか。区民の皆さまと十分に議論する必要があります。

お金があるか、ないかではなく「何を優先するか」

今回の懇談を通じて、改めて感じたことがあります。

家賃高騰で事業所が苦しんでいる。相談支援を担う人が足りない。ピアサポーターとして働きたい人がいる。補助制度の変更で現場の負担が増えている。

一つひとつは別々の問題に見えます。しかし根っこにあるのは、精神障害があっても、新宿で安心して暮らし続けられる地域をどうつくるのかという一つの問いです。

財政には限りがあります。だからこそ問われるのは、「お金があるか、ないか」ではなく、「何を優先するのか」です。

私は、今回寄せられた現場と当事者の声を、予算・決算審議、そして今後の区議会質問につなげます。

家賃補助の拡充。相談支援事業所への独自支援。ピアサポーターの養成と雇用。地域活動支援センターへの補助制度の検証。どれも、当事者が地域で生きていくための基盤です。

「誰かの役に立ちたい」を支えられる新宿へ

「支援を受ける人」と「支援する人」。その境界は、決して固定されたものではありません。支えられた経験が、いつか誰かを支える力になる。今回、佐藤さんのお話を聞いて、そのことを改めて教えていただきました。

「今度は、自分が誰かの役に立ちたい」

その願いを、行政が制度と予算で後押しする。障害があってもなくても、一人ひとりが地域の中で役割を持ち、自分らしく生きられる。そんな新宿をつくるために、これからも現場の皆さまと一緒に取り組んでいきます。

📣 皆さまの声をお寄せください

精神障害のある方やご家族、福祉事業所で働く皆さまからのご意見・経験をお待ちしています。

「家賃高騰で事業所運営が厳しくなっている」

「相談支援につながれない」

「ピアサポートをもっと広げてほしい」

「補助制度について現場から伝えたいことがある」

ぜひお聞かせください。いただいた声を、次の議会質問と制度改善につなげていきます。

📌 これまでの歩み

・2014年5月〜2015年11月:新宿区本庁舎、設計・工事費約32億円をかけて免震改修・防災機能強化を実施

・2025年4月:荒川区が「指定特定相談支援事業所体制整備補助金」を創設。常勤・専従の相談支援専門員を新規配置した事業所などに最大500万円を補助

・2025年11月頃:新宿区内のある就労継続支援B型事業所などが、オーナーから月3万3千円の家賃値上げを求められる

・現在:新宿区、新庁舎整備に向け庁舎整備基金の積み立てを継続中(想定費用約500億円、うち約250億円以上を基金で賄う方針)

・2026年夏:「新宿精神保健ネットワーク連絡会」との来年度予算要望懇談を実施。家賃高騰、相談支援の人材不足、ピアサポーター養成、地域活動支援センターの補助制度などについて切実な声が寄せられる

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川村のりあき(川村範昭)

日本共産党新宿区議会議員 6期24年

「区民のためなら、あきらめない」

出典・参考資料

・新宿区「新宿区庁舎整備基金の設置について」(新庁舎整備の想定費用約500億円の内訳・基金約250億円以上の目標を記載)

https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000440120.pdf

・新宿区「区役所本庁舎免震改修その他工事に本格着手しました」(2014年5月〜2015年11月・設計+工事費約32億円)

https://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/soumu01_001026.html

・荒川区「指定特定相談支援事業所体制整備補助金交付事業」(2025年度創設、増員補助は相談支援専門員1事業所最大500万円等)

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a030/shiteitokuteisoudanshienjigyohojyo.html

・荒川区「指定特定相談支援事業所体制整備補助金交付要綱」

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/reiki_int/reiki_honbun/p800RG00001588.html

※事業所の家賃値上げ(月3万3千円・実施時期)、地域活動支援センターの補助額減(年間約30万円)、区が説明した障害福祉分野への一般財源約100億円規模という数字、当事者さまのご発言等は、今回の要望懇談で寄せられた報告・発言に基づくものです。制度上の詳細については、引き続き区の資料等でも確認していきます。

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川村 のりあき

川村 のりあき

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