2026/5/23
「貸切バスを使え」では解決しない
―磐越道事故が問う、学校移動の制度的空白と交通オプション多様化への提言
磐越自動車道で高校生の命が失われた。この事故を「一校の管理不足」「運転手個人の問題」として片付けることは、政治の怠慢である。背景にあるのは、道路運送法の空白、責任の所在の曖昧さ、そして「正規の貸切バスは高すぎる」という現場の現実だ。私・馬淵澄夫は、「貸切バスを使え」という正論の先にある制度設計を提言する。
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1.事故の本質―三つの制度的欠陥が重なった構造的惨事
福島県郡山市の磐越自動車道で、北越高校(新潟市)男子ソフトテニス部の部員が死亡したマイクロバス事故。事故バスは旅客運送に必要な「緑ナンバー」ではなく「白ナンバー」のレンタカーであり、国交省が「白バス行為」(道路運送法違反)に該当するか調査中だ。
この事故は、以下の三つの構造的欠陥が重なった結果である。
・【欠陥①】道路運送法の「有償性」認定の抜け穴―名目を変えれば規制を免れる構造 ・【欠陥②】学校・運行会社・レンタカー会社の三者間における責任・保険の空洞化 ・【欠陥③】個人による代行運転に対する資格・要件の不存在
そして、これら三つの欠陥を生み出した根本には「正規の貸切バスは費用が高すぎる」という現場の切実な現実がある。全国の学校で、コスト削減を動機とした白ナンバー車・個人代行運転の活用が常態化している可能性があり、今回の事故はその氷山の一角だ。
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2.「貸切バスを使え」では解決しない―ライドシェア議論と同じ構図
金子国交大臣は文科省と連携して安全確保策を検討する方針を表明した。しかし、この種の省庁間連絡会議が「現行制度の枠内での運用改善」にとどまりがちであることを、私は強く懸念する。
■ 正論が現場を追い詰める逆説
「安全のためには正規の貸切バスを使え」は正論だ。しかし、年間の部活動・校外活動の移動コストが数十万円単位で増加するとすれば、多くの学校・保護者がその負担に耐えられず、結果として今回と同様の「抜け道」に頼らざるを得ない状況が続く。規制強化だけでは、違法行為をより地下に潜らせるだけになりかねない。
■ ライドシェア議論と同じ構図
この問題はライドシェア解禁をめぐる議論と本質的に同じ構図を持っている。「既存の旅客運送制度の枠外にある移動ニーズが存在する」「それが現状ではアンダーグラウンドでノールールで行われている」「正規の選択肢はコストが高すぎて普及しない」という三点が共通している。
ライドシェア議論で問われたのが「タクシーに乗れないニーズをどう制度的に救うか」であったように、今回問われるべきは「貸切バスを使えないニーズをどう制度的に救うか」である。答えは「使わせる」ではなく「安全な代替選択肢を制度化する」ことだ。
■ 縦割り行政の限界
道路運送法(国交省)・学校保健安全法(文科省)・自動車運転代行業法(国家公安委員会・国交省)が複雑に絡み合うこの問題を、二省庁の連絡会議だけで整合的に設計することには構造的な限界がある。内閣官房が横断的に調整する体制が不可欠だ。
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3.私が提言する「貸切バス+α」の制度設計
私・馬淵澄夫は、以下の四つの柱からなる制度改革を提言する。核心は、「貸切バスが唯一の安全な選択肢」という固定観念を超え、安全基準を満たした複数の移動オプションを制度的に認め、そのすべてを適切な規制と支援の下に置くことだ。
【柱1】道路運送法の「みなし有償規定」と第78条の学校行事への適用拡大
名目上「レンタカー代+人件費」であっても、バス手配・運転者提供・移動が一体的に対価を伴って提供された場合は道路運送法上の有償旅客運送と「みなす」規定を設け、脱法回避を封じる。同時に、同法第78条(自家用有償旅客運送)の適用範囲を、一定条件下で学校行事の移動にも拡張する。過疎地での住民輸送モデルを参照しつつ、安全基準・保険要件・運転者資格を条件として付加することで、合法的な低コスト移動の選択肢を制度的に創出する。
【柱2】学校活動における移動安全管理の法令化
学校保健安全法または文科省令の改正により、校外活動時の移動に関する安全管理義務規定を設ける。移動計画・車両情報・運転者資格・保険証券の事前確認と教育委員会への届出を義務化し、デジタル届出システムで実効的な事前審査を可能にする。「第三者経由の手配」については、学校の保険適用を認めない規定を設け、実質的に学校が責任主体となる体制を強制する。
【柱3】「準旅客輸送資格(仮称)」の創設
第二種免許よりも取得しやすく、かつ安全教育・健康診断・飲酒検知義務を課す中間資格を創設する。地域NPO・学校関連団体・地域の運送事業者が一定の安全水準を担保した上で学校移動支援に参入できる制度的根拠を設ける。自動車運転代行業法の適用対象を「学校・社会活動における非営利的な有人輸送」にまで拡大する方向でも検討する。中小・地域事業者への過度な負担とならないよう、猶予期間と財政支援をセットで講じることが前提だ。
【柱4】費用支援と「学校移動支援事業者認定制度(仮称)」
部活動・校外活動の移動費用について、地方交付税措置または補助金制度を整備する。「安全な選択肢はあるが高くて使えない」という現場の現実に、財政的に応える。地域のバス事業者・タクシー事業者・運送会社が学校行事の移動支援に参入しやすくするための認定制度を設け、認定事業者への費用助成と利用校へのマッチング支援を行う。これはライドシェアのプラットフォーム的発想を、公共的な安全管理の枠組みに組み込むものだ。
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4.今こそ問いの設定を変えるとき
「どうすれば貸切バスを使わせるか」ではなく、「安全な移動の多様な選択肢すべてを制度の傘の下に置くためにどのような設計が必要か」―この問いの転換こそが、今回の事故から政治が学ぶべき最大の教訓だ。
前衆議院議員として、また長年にわたり交通・安全保障政策に取り組んできた政治家として、私は「貸切バス+αの制度化」という新たな政策フレームを提起し、国会・政府・地方自治体に向けた政策提言を継続していく。
子どもたちの安全を守るための制度改革を、スピード感を持って実現する。それが、この悲劇から政治が果たすべき責任だ。
馬淵澄夫(前衆議院議員・中道改革連合)
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