2026/9/12
ハンガリー憲法調査で、私が特に興味深く感じたテーマの一つが、「憲法改正と国民投票」の関係です。
日本国憲法では、憲法改正は国会だけで決めることはできません。
衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、最後は国民投票によって、主権者である国民の承認を得る必要があります。
一方、ハンガリーでは考え方が大きく異なります。
1949年憲法以来、憲法改正について国民投票を行わないことが原則とされ、現在の基本法でも、憲法改正は国民投票の対象から除外されています。
憲法改正は、国会議員の3分の2以上の賛成によって行われるとのことです。
ところが、この制度が大きな問題を生みました。
2010年、オルバン政権が国会で3分の2を超える議席を獲得し、一つの政治勢力だけで憲法を改正できる状況が生まれました。
現政権側からは、前政権がその多数を背景に、権力維持につながる憲法改正を繰り返したとの厳しい評価が示されました。
その反省から、現在検討されている新しい憲法では、憲法改正のハードルをさらに高くすることが議論されており、その選択肢の一つとして「国民投票」が検討されています。
しかし、ここが非常に興味深い点です。
現地での議論では、憲法制定にできるだけ国民の意思を反映させるべきとの認識が共有される一方で、憲法改正を必ず国民投票にかける制度にすることには慎重な意見もありました。
理由の一つとして、偽情報や情報操作によって、国家の基本に関わる重大な問題が左右される危険が指摘されました。
また、国民投票は最終的には「賛成か反対か」という二者択一になりがちです。
そのため、国民投票だけではなく、専門家の議論、国民対話、アンケート、国民からの提案などを通じ、憲法制定の過程そのものに幅広く国民が参加する方法も検討されています。
ここに、日本とハンガリーの非常に重要な違いがあります。
憲法を最終的に決めるのは、議会なのか、国民なのか。
そして、国民の意思を尊重することと、一時的な世論や情報操作から国家の基本原則を守ることを、どう両立させるのか。
これは、民主主義と立憲主義の根幹に関わる問いです。
日本では、憲法改正について最後に判断するのは、主権者である国民です。
だからこそ国会には、国民が十分な情報と議論をもとに判断できる、具体的な憲法改正の選択肢を示す責任があります。
スイスでは、国民投票が民主主義を動かす日常的な制度として機能していました。
ハンガリーでは今、憲法改正に国民投票を認めない制度そのものを見直すべきか、議論が始まっています。
両国の異なる経験から得た知見を持ち帰り、主権者である国民に具体的な選択肢を示すため、憲法審査会の議論をさらに前へ進めてまいります。
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