
近年、自民党の支持率低迷が続いていますが、かつて自民党を支持していた層は一体どこへ流れていったのでしょうか。「選挙ドットコムちゃんねる」では、JX通信社代表の米重克洋氏をゲストに迎え、最新の調査データからその実態を紐解いています。
選挙ドットコムとJX通信社が8月16~17日にかけて行った全国意識調査では「あなたは、第2次安倍晋三政権が発足した2012年以降、衆院選か参院選で一度でも比例代表で自民党に投票したことがありますか?」と尋ねると、電話調査では約半数、インターネット調査でも約4割が「投票経験がある」と回答しました。
与党としては妥当な水準とも言える結果ですが、一方で別に尋ねた「あなたは、今年7月に行われた参院選の比例代表で、どの政党に投票しましたか?」への回答結果と掛け合わせることで、過去に自民党に投票した経験がある人々が、今回の参議院選挙でどの党に投票したかの傾向を探っていきます。

多くの政党で一定の割合が自民への投票経験があると回答しましたが、特に顕著だったのは、国民民主党、参政党、日本保守党に投票した層でこれらの党の支持層の半数から6割もの大きな割合を、過去に自民党に投票した経験がある人々が占めていたのです。
米重氏「巷間よくいわれているような安倍政権の時に自民党を支持していた人たちが物価高などを契機に離反していたったということを裏付けている数字が出ている」
かつての「一強多弱」と言われた政治構造から、「多党化」へとまさにレジームチェンジが起きていることを示唆しています。
さらに、米重氏は、今後も自民党支持層の流出が多少は続く可能性を指摘しています。直近の政権下で物価高が進んだこと、そしてそれによって特に若い世代の離反が進んでいることがその背景にあります。去年の衆院選から今年の参院選にかけても支持層の流出が続いているため、との見方を示しました。
米重氏は自民党にとっての喫緊の課題として、①いかに支持基盤をつなぎ止めるか②参政党や保守系の勢力、国民民主党に流出した支持層をどう取り戻すか、の2点を指摘しました。
今回の調査では、「次の自民党総裁に誰を望むか」という質問も。
ネット調査では高市氏が1位、次いで小泉氏、石破氏の順でした。

電話調査では石破氏がトップ、次いで高市氏、小泉氏の順となっています。

両調査の結果の違いは、各候補者の支持層の違いを明確に表しています。
• 高市氏:比較的若年層からの支持が強い傾向にあります。
• 石破氏:現在の内閣支持層の構造でも明らかなように、高齢層からの支持が相対的にかなり強い傾向にあります。
• 小泉氏:中年層から高年層、特にテレビ視聴者層からの支持が厚い傾向が見られます。
注目すべきは、世論調査の結果と実際の党員票の結果が大きく異なる可能性があるという点です。前回の総裁選でもそうであったように、世論調査では低く出る高市氏が、党員調査ではそれほど弱くない可能性もあると米重氏は見ています。これは、党員が世論調査の対象となる緩い支持層と異なり、簡単に流出しないためです。
新しい総裁が誕生した場合、支持率は本当に変わるのでしょうか。米重氏は、例えば高市氏が総裁になった場合、一時的に国民民主党や参政党の支持率が下がり、自民党の支持率が若干プラスになる可能性を示唆しています。
これは、これらの野党の支持層の中には、高市氏に期待する割合が高い人々が含まれており、必ずしも現在の支持政党へのロイヤルティが高いわけではないためです。一時的に自民党に戻る、あるいは高市総理を支持する行動に出る蓋然性は高いと言えるでしょう。
しかし、それが長く続くかどうかは全く別の話です。経済に将来の希望を持たせられない、具体的な戦略を提示できない、物価高がと続くといった状況になれば、そうした支持層は短期間のうちに再び野党へと戻っていく可能性も十分にあり得ます。
自民一強時代を築いた第二次安倍政権は、保守層にアピールしつつ、同時に他の層への配慮も行う戦略的な支持構造の強化を図り、高い支持率と「一強多弱」の政治構造を作り上げました。その結果、若い世代から高齢層までバランス良く支持される体制を築きましたが、米重氏は「それを維持するのは安倍さん以外の人にはすごく難しかった」と分析します。
岸田内閣の途中から物価高の進行や「政治とカネ」の問題が発生し、高齢層を含む政治意識の高い層の離反や、若い世代の不信感増大を招き、支持構造が一気に変わってしまいました。
今後の自民党のかじ取りには、自民党の支持構造をもう一度元に戻すのか、それとも新しい支持層を取り込んだり、野党のリベラル層も取り込むような新たな軸を作り直すのか、その戦略が問われることになります。

今後の政治の動きはまだ流動的であり、自民党内での総裁選の前倒し議論の決着も含めて今後の動向に注目が必要です。
【調査概要】調査は2025年8月16日(土)と17日(日)に実施。日本国内の18歳以上の方を調査対象とし、有効回答数は電話調査で1000件、インターネット調査で1234件を取得(いずれもJX通信社との共同実施)。各数値は小数第2位以下を四捨五入しています
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