
現代日本が直面する少子化は、社会全体に深く根ざした複雑な問題です。かつての「皆婚時代」から2度のベビーブームを経て、1990年代に予測された第三次ベビーブームは訪れず、これが現在の少子化の大きな転換点だと指摘されています。本記事では、この「来なかった第三次ベビーブーム」が少子化にどう影響しているのか、その根本的な原因、そして政府や社会が講じるべき真の対策について、「独身研究科」の荒川和久氏に伺いました!
※この記事は2025年4月27日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」を基に作成しています。

日本の出生数は、統計開始の1883年から1940年代の第一次ベビーブームまで増加し続けています。これは「皆婚時代」と呼ばれる結婚するのが当たり前という社会意識と、結婚と出生をセットで考える文化によるものでした。
第二次世界大戦終戦直後には第一次ベビーブームが発生。夫や婚約者の戦死、また戦時中の厳しい生活によって子どもが亡くなるといった戦争が終わったことによる環境の変化や、終戦によって生まれた精神面の余裕がこのベビーブームにつながったと荒川氏は解説します。
1970年代には第一次ベビーブームで生まれた子どもたちが大人になり、出産することで第二次ベビーブームが起こります。1990年代には第二次ベビーブームで生まれた子どもたちによる第三次ベビーブームが起こるはずでしたが、実際には起こりませんでした。
この「来なかった第三次ベビーブーム」こそが、今に続く少子化のきっかけだと荒川氏は語ります。親の数が増えないために出生数が増えることもなく、今後も50年は出生数のグラフが山を描く、つまりベビーブームが起こることはないと断言しました。

第三次ベビーブームが来なかったということは、親の数が増えることがないということであり、その時点で少子化は避けられません。加えて、近年は未婚人口が増えているために出生数の減少に拍車がかかっています。
実際に1985年と2020年で比較すると、15歳から39歳の人口は3割減少しています。子供の出生数の減少幅はそれより多く、4割減少しています。初婚数は46%減少しており、さらに1人以上産んだ母親の数は59%減少しています。
これは、1人以上産む母親は1985年よりも多産傾向にある一方で、子どもを産む人が減っていることを意味します。
荒川氏は母親となる人が減少していること、さらに母数である人口そのものが減少していることと二つの意味をあわせて「少母化」と呼称。この少母化によって少子化は避けられないものになっているとのことです。
現代の少子化は人口・婚姻数・出産の有無など様々な要因によって引き起こされており、一つ一つの影響は小さくとも、かけ合わさることで大きな社会問題となっていることがわかります。

少子化対策の手本として名前があがるスウェーデンやフランス。いずれも出生率は減少していますが、ベビーブームのサイクルが起きているために人口を維持できています。
しかし、成功事例よりも失敗事例からこそ学ぶことがあると荒川氏。出生率世界最下位の韓国の状況に言及しました。
1993年から2023年までの年齢別出生率を見てみると、韓国は20代の出生率の減少が著しく、2023年にはほぼゼロになっています。この20代の出生率減少によって韓国は出生率1.0を下回る状況に陥っているのです。
日本は韓国ほどではないものの、20代の出生率は減少しています。フランスも同様ですが、減少率が緩やかなために全体の出生率は日本より高くなっています。
このことから出生率を左右するのは20代の出生率であると荒川氏は解説。日本も今後、20代の出生率が大きく下がることがあれば、韓国と同様の状況になる可能性があると続けました。
韓国で20代の出生率が下がっている原因は20代の婚姻減が深く関係しています。日本を含む東アジアでは、出産は婚姻が前提という考え方が浸透しているからです。
ここで、「20代の婚姻が減少しているのはなぜか?」という少子化の本質的な問いにたどり着くことができました。
ちなみに、少子化の要因として晩婚化・晩産化が指摘されますが、韓国・日本・フランスいずれも35歳以上の出生率に大きな変化は見られません。20代の出生率が下がったことで35歳以上の出産が増えたように見えているだけだということがわかります。
20代で子どもを持てなくなっていることが今の少子化の原因であり「20代で産まなくともいずれ産むから問題ない」という考え方は、本質を取り間違えた見方である点には注意が必要です。

少子化の要因として20代の婚姻減が大きな比重を占めています。
20代の婚姻減の原因として「若者の恋愛離れ」を指摘する声がたびたび聞かれますが、それに対し荒川氏は異を唱えます。
厚労省の出生動向基本調査によると、1992年から2021年まで男女とも4割から5割が結婚に前向きと回答しており、その割合はほぼ変わっていません。
若者の恋愛離れ・結婚離れは起きていないのになぜ婚姻は減少しているのか。それこそが真に注目すべき問題点です。
荒川氏はこの問題に対し2つの要因を指摘します。
1つは経済環境の変化です。第三次ベビーブームが起きるべきだった1990年代は就職氷河期でした。第二次ベビーブームで生まれた子どもたちの就職は、人数が多いうえに不景気も重なってかなりの狭き門でした。
仕事がなければ食事にも事欠く生活で遊びに行けない、遊びに行かなければ恋愛もできないという状況のなかで結婚適齢期を過ごしていたのです。
もう1つが社会環境の変化です。1960年代になると、恋愛結婚の割合がお見合い結婚を上回るようになります。ただ、恋愛結婚の中でも1980年代ごろまでは職場の上司が積極的に部下同士を引き合わせ、いわゆる「お見合いおばさん」的な働きをしたことで婚姻率の維持に一役買っていました。
もちろん、現代ではそのようなことをすればセクハラ扱いされることは必至。そのような上司はいなくなりました。結果として職場結婚の比率が下がり、20代の婚姻減につながっています。

日本の選挙では、少子化対策として子育て支援が多く聞かれます。しかし、少子化の原因が経済環境や社会環境の変化による婚姻減であるならば、その対策はピント外れと言わざるをえません。
また、日本の出生率の低さは子育て支援の予算の低さが原因だと指摘する声もありますが、日本の家族関係政府支出(OECDが定義)は11兆円超。国家予算の1割に匹敵しており、この指摘は正しくありません。
このことから子育て支援は重要な政策ではあるものの、子育て支援の充実が出生数を増やすことにはならないと荒川氏。少子化対策には1人目を産む人を増やす政策が必要だと訴えました。
本来切り離して検討されるべき子育て支援と少子化対策。いつしか選挙対策として、子育て支援が少子化対策に組み込まれるようになってしまったとのことです。
ここで荒川氏は旧民主党政権が打ち出した児童手当(当時は子ども手当)に言及。「控除から給付へ」というスローガンのもと実施され、いまも続く児童手当はいくつかの問題点を含んでいると指摘します。
1つは景気後退の要因となっている点です。控除が給付にかわっても手取りは増えていないうえに、控除の廃止は「お金を取られた、損をした」という意識を生んでしまいます。それは貯金や消費の抑制といった損失回避につながり、ひいては景気後退を引き起こします。
もう1つは子育てコストの意識的なインフレです。「児童手当は今いる子どもの投資に使うお金」という意識が働くため、児童手当を受け取るほど子ども一人当たりの教育投資を意識的にどんどん上げることにもつながります。そうなれば当然2人目、3人目を産むことにも消極的になります。
最終的にはその状況を目の当たりにした若い世代の結婚に対するハードルも上がってしまうのです。
若い世代の経済環境が少子化の原因であるならば、昨今注目を集めている現役世代の手取りを増やすという方向性は有効な対策になりえるのでしょうか。
荒川氏は手取りを増やすだけでなく、損失回避行動と子育てコストのインフレの解消も同時に取り組むことが重要だと解説します。
現役世代の手取りを増やすことは少子化対策として必要ではあるものの、この心理的な損失回避や意識のインフレ解消に同時に取り組まなければ結局貯金に回ってしまうとのことです。

これらを解消させるには、結婚・出産はお金をかけない選択肢があることを示すとともに十分な給与を提示する必要があると荒川氏。若い世代が安心できる状況を作ることが「大人の責任」と締めくくりました。
【有権者の心に響く第一印象を。選挙ドットコムで、あなたの情報を掲載しませんか?】
選挙ドットコムの政治家情報ページには、顔写真やSNSアカウントへのリンクなどを完全無料で掲載いただけます。
有権者の皆さまにとって、こうした情報は候補者一人ひとりを知るための大切な第一歩になります。
ぜひ、あなたのページを充実させて、有権者の皆さまとの距離をぐっと縮めてみませんか?
情報掲載をご希望の際は、こちらのフォームよりお送りください。皆さまからの情報をお待ちしております!
※申請は「政治家・候補者本人」または「政治家・候補者本人から承諾を得ている方」に限ります。承諾がない場合は掲載できませんこと、予めご了承ください。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします