つつい広治(つつい・ひろはる)さんは、愛知県の安城市役所に25年勤め49歳で早期退職をしたあとは、防災やまちづくりなどの市民団体で社会活動をしています。東日本大震災や熊本地震などの被災地での災害ボランティアには30回以上の参加経験があります。これまでの経験を生かし、生まれ育った安城市を災害に強いまちにしたいと立ち上がりました。
今回は、つつい氏が政治の道を目指すきっかけや、これまでの取り組み、実現したい政策などについてご本人に伺いました。
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
政治家を志したきっかけについて教えてください。
つつい広治氏(以下、つつい氏):
私が政治家を志したきっかけは、安城市を災害に強いまちにしたいからです。
近い将来、「安城市は揺れます」。南海トラフ沿いの大規模地震は、今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から80年近くが経過していることから切迫性の高い状態だからです。
私が活動している市民団体のひとつの「安城防災ネット」では、町内会の防災訓練などに招かれ、講習会を実施しています。若い世代の参加者が少ないことに危機感を抱いています。自主防災会の向けの研修会では、出席者の過半数が65歳以上、男性が90%以上です。若い世代の防災リーダーの育成と、家にいる時間が長い女性や子育て世代の防災に対する意識改革が急務だと感じています。
私は、安城市役所に25年勤め、社会活動家として被災地支援や防災の啓発活動を7年行っています。安城市にも防災マニュアルや地震に備える支援制度はありますが、まだまだ市民に浸透しているとは言えない状況です。
近い将来、安城市に巨大地震がくるでしょう。安城市の防災対策を急速に進めるためには、市役所勤めをしていた私が政治の道に進み、市民と行政のパイプ役として動くことでお役に立てるのではないかと思い政治の道をめざしました。
編集部:
「防災」に力をいれるようになったのは、被災地支援の災害ボランティア活動がきっかけですか?
つつい氏:
2011年の東日本大震災の被災地支援には19回、熊本地震や西日本豪雨水害などの被災地支援を含めると合計30回、災害ボランティアに参加しました。
宮城県石巻市へ行った時に、仮設住宅を回って話を聞くボランティア活動を行いました。寝たきりのお義母さんと自宅にいた際に東日本大震災の被害にあった女性の話を伺う機会がありました。大きな地震のあと津波が迫るなか、車がないと避難ができない、電話が通じないと困り果てていました。すると、「玄関に黒い水が来た」そうです。お義母さんの上に覆いかぶさり、ベッドの端をつかむと、そのまま流されたと言います。お義母さんは亡くなり、突然の別れとなってしまったと涙ながらに話されていました。
このお話を聞いて、災害時に突然のお別れにならないためにも、高齢者や体が不自由な方など避難に時間がかかる方の防災対策や、さまざまな状況での被災を想定した対策を立てる必要を感じました。
また、宮城県南三陸町で、復興支援のガレキ処理ボランティア活動にも参加しました。被災地リーダーの方から「遠くから来てくれてありがとう。でも、あなたたちの地元は大丈夫?」と問われました。私はハッとしました。
安城市は水害も少ないため「ここは安全だ」と思っている人が多いと思います。東日本大震災から10年以上が経過し、地震に対する関心度が下がっていることも感じます。
私は、被災地の状況を実際に見て、備えておくことで災害時の被害を減らせると感じました。これからは、自分の被災地支援の経験を地元での防災活動に活かそうと思い、日々の活動に取り組んでいます。
編集部:
被害を最小限にするには、日頃から災害に対する備えが必要なのですね。防災対策で実現したい政策について教えてください。
つつい氏:
大きな家具が倒れてきたら大怪我や死亡する可能性もあるため、家具の固定は急務です。しかし、実際に固定をしている家は少ないのが現状です。現在のところ、市は、65歳以上の高齢者のみの世帯や身障者のみの家庭などに限って、無料で家具固定をする制度を設けています。これら以外の家庭でも、大きな負担なく実施できるように制度を変更して、家具固定の促進を図りたいと考えています。
建物の耐震調査も重要です。阪神淡路大震災では1階が駐車場で2階以上が住居という壁が少ない建物の多くが倒壊しました。市では無料で建物の耐震調査を受けられますが、調査を受けた物件数も少ないです。家具の固定の補助金を受けるには、建物の耐震調査を受けることをセットにするなどの工夫で、地震に備える家を増やす方法を検討していきます。
その他、女性が防災分野で活躍できるように取り組んでいきたいです。近隣の市では、女性グループが主体となり防災講座を実施している例もあります。家にいる時間が長い女性の方が日常生活にあった対策が考えられます。防災には女性の視点も取り入れていけるようにしていきたいです。
災害はいつ起こるかわからないので、一定規模のイベントは防災対策を必須とする条件も必要ではないでしょうか。防災士の常駐や火を使う場所の安全対策の確認、帰宅困難者の待機場所の確保などのルール作りで、二次災害を防ぐ方法も確立していきたいです。
災害の話は、縁起が悪いというイメージがあり、話題として避ける傾向があります。「防災ゲーム」という子どもから大人まで楽しめるカードゲームがあります。市内の防災以外のイベントでも取り組み、楽しみながら防災の知識が増えるよう普及していきたいです。
編集部:
他にも実現したい政策を教えてください。
つつい氏:
地域のコミュニティづくりを強化したいです。
被災後の生活では、地域コミュニティが機能しているかどうかが、大きな鍵になると感じました。すべての住民が避難所の中で生活するのは難しいでしょう。その際、在宅避難者への食料の供給やライフラインに関する情報提供など、地域での助け合いが重要になります。普段から活動を継続できるように地域のコミュニティ活動に補助金を出すことも検討していきたいです。
防災の分野以外でもお困りの方のお話は積極的に伺い、政策に反映していきます。
編集部:
つついさんのプライベートについても教えてください。趣味は何ですか。
つつい氏:
私は中学、高校、大学1年時まで陸上競技の短距離走に取り組んでいました。中学時代は、400mリレーのアンカーとして全国3位に入賞することができました。高校時代は個人400m走で国体の愛知県代表に選ばれました。ケガで競技を引退したあとは、楽しむレベルで走っています。
最近は、地元にランニングのクラブチームができたので、ボランティアでインストラクターもはじめました。楽しむことをモットーとして、みんなで長く健康に生活できる体作りを目指しています。
編集部:
つついさんの長所について教えてください。
つつい氏:
私の長所は、諦めないところと持続力があるところです。
全国大会に出場するほどスポーツに打ち込んだ経験もありますし、最近では「1000日チャレンジ」を達成しました。
編集部:
1000日はすごいですね!どのようなきっかけで、何にチャレンジなさったのですか?
つつい氏:
私は地元でクリーン活動(ゴミ拾い)を続けています。
2020年に町内会の役員に就いた際、コロナですべてのイベントが中止になりました。何か町内のお役に立てることをしたいと思い、近所でゴミ拾いをスタートしました。その頃、インターネットで「何かを1000日間続ければ、人に認められる」という記事を見かけ、挑戦を決意。県外旅行の時もホテル近くのゴミを拾いました。
2020年5月5日から2023年1月29日まで1日も休むことなく1000日間継続し、1000日達成した今も続けています。一度決めたことは、達成するまで諦めずに継続できるのは私の強みです。
編集部:
地域のゴミ拾いを続けて、何か気付くことはありましたか。
つつい氏:
雑草が多い場所に、よくゴミが捨てられているので、雑草を抜き、花を植えました。花を植えると近所の花が好きな人が集まるようになり、そこでゆるいつながりのコミュニティができました。そのような顔が見えるつながりが、もしもの災害の時に役に立つと思っています。
人と人とのつながりがある活気ある場所は、泥棒などの不審者も入りにくいので、安全なまちづくりにもつながると考えています。
編集部:
最後に安城市をどのようなまちにしていきたいですか。
つつい氏:
防災対策に真剣に取り組むことで、安城市をどのような時でも安心して暮らせるまちにしたいです。
地域コミュニティづくりで、市民がいきがいを持って生活し、災害時に生活の安全が守れるまちにしていけるよう、活動していきます。
【つつい広治氏のプロフィールページはこちら】
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