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【雪をも溶かす熱戦】波乱の中で有権者に「熱」を伝えるのは誰か? 石川県知事選挙現地レポート(畠山理仁)

2022/3/12

畠山理仁

畠山理仁

超党派で全県的な活動を重ねる山田修路候補

 山田修路氏は加賀市の出身だ。そのため告示日の活動は加賀市を中心に行なわれた。初日の街頭演説は10カ所だったが、2日目からは15〜18カ所に増え、かなり細かいスケジュールが事前にSNSで公表されている。参議院議員だった山田氏の選挙区は石川県全域だったこともあり、全県での選挙経験は今回の候補者の中で一番豊富だ。

 各地区で行なわれる会場に先回りすると、30分以上前から聴衆が集まっていた。聴衆の数は50人のときもあれば100人近いときもある。いずれも地元の議員や名士がしっかりと声がけをしている。告知されるスケジュールが「14:00」や「15:15」だけでなく、「13:17」「14:37」「17:38」などと分刻みなのも、組織力のすごさを物語っている。

 演説が行なわれる予定の小さな公園で「どうして今日は山田さんの遊説を聞きに来たんですか」と集まってきた男性に聞いてみた。
「区長さんに声かけてもらったからよー」
 すると、その答えをそばで聞いていた区長の男性が笑いながら言った。
「ちがうちがう。そこは『新聞に予定が載ってたから』って答えないと。山田さんを自主的に応援に集まったと言ってほしい」

 会場の多くはもともと人通りが多い場所ではない。大きな道路沿いでもない。地元の人たちが集まりやすい場所が演説会場として選ばれている。つまり、地元の人や地方議員が現地の活動を回している。一方で、SNSの活用も多すぎず、少なすぎない。そして定期的に見やすく編集されたメッセージ動画が送られてくる。馳氏の陣営と同じく、陣営にSNS慣れしたスタッフがいることがうかがえた。

 山田氏が各地の演説で取り上げていたのが「人口減少問題」だ。初日の加賀市ではこんな演説をしていた。
「加賀市もコロナの影響があったり、観光客の方が少なくなったり、いろんな形で製造業やその他の産業が影響を受けている。また、農業の方も、お米の値段が下がっているということで、なかなか厳しい状況にあると思っております」

 そんな地域を活性化させるのが「2年後に敦賀まで開通する北陸新幹線」だという。
「石川県の温泉地からすれば、片山津や山城や山中に泊まってもらって、そして、(福井県の)永平寺や東尋坊や恐竜博物館などをぐるっと回っていただく。あるいは行ったり来たりしながらこの地域を楽しんでいただく。そういう意味では、新幹線の開業効果を最も受けることができるのは私は加賀市じゃないかと思っています」

 山田氏は「石川県と福井県が観光などの協定を結んでしっかりとお互いに行き来をするような観光ルートを整備していく」とも強調した。そして、「テレワークによる移住や定住の可能性」にも触れた。

「東京に住まなくても、2週間に1回、東京に新幹線で行って日帰りで帰ってくる。そしてあとは家でパソコンやSNSを使いながら仕事をする。豊かな自然の中で生活をしながら、仕事をすることも可能になってきています。工場誘致のような大きなものをドーンとホームランを打つように狙うのではなくて、小さい安打を重ねていけば、また地域は豊かになっていくと思います」

 石川県の選挙を見て感じたことがある。候補者の演説も熱いが、応援する人たちも熱い。
 山田氏が来る前に演説をしていた男性はこう言った。

「加賀市は大変ややこしくなってしまいました。やっぱり自分らの思いは、加賀市民は加賀市の者を推すんじゃと。これが当たり前やと。そう思います。この間オリンピックがありました。オリンピックで日本を応援するの、日本人は当たり前です。ということは、加賀市出身の山田さん、推すのが当たり前だと皆さん思いませんか!」
 この言葉を理解するには前提が必要だろう。加賀市の宮元陸市長は告示日に行なわれた馳氏の出陣式に出席し、「県内市長町長を代表」して挨拶をしていたのだった。

 別の日に山田氏の選挙事務所を訪ねると、石坂修一石川県議が話を聞かせてくれた。無所属の石坂県議は、今回、山田選対全体の本部長代行と金沢市の選対本部長を務めている。

「自民党は自主投票ですが、地方議員の数でいうと、かなりの数の議員が山田さんにつきました。非自民の中では圧倒的に山田さんが多い。自民党の議員さんは、馳さんと山田さんを両方ずっと見てきたわけ。その2人を比較したときに『山田さんがいい』という方が県議の比率でいうと、2対1ぐらいで山田さん。非自民の今まで山田さんに一票も入れていない人たちがこぞって山田さんにきた理由も、山田さんの人柄や信頼性だと思うんです。

 立憲民主党の近藤和也衆議院議員だって、今まで自民党と選挙でバチバチやっていた人。その人が今回推薦しているのも、山田さんなら県民党で偏らない。公平な政治をやってもらえるという信頼感があるからですよ」

 馳候補陣営は中央から有名な応援弁士をたくさん呼んでいます。焦りませんか。
「あれだけ闇雲に入れるのがいいのか悪いのかという問題もありますよね。あまり入れすぎると『有権者は県民であって永田町じゃないよ』という反発もある。もう一つ、国会議員クラスが来たら、当然、県会議員クラスが対応せにゃならん。ということは、その県会議員は票集めをしていられなくなる。逆に言うと、馳陣営は著名人を呼ぶ方法でしか人を集められないという見方だってできるんです。特に今回は同じ安倍派の中で2人(山田氏と馳氏)が争って、少なくとも東京の方の論理では、『もう馳で決まりだな』と思っていたと思う。ところが蓋を開けてみたら、自民党系の町会議員とか市会議員たちが、馳さんが出るとわかっていながら山田さんにアプローチをしたわけ。それは逆の言い方をしたら、『馳さんは嫌だ』ということになるよね」

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畠山理仁

畠山理仁

フリーランスライター。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者。他に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)など。興味テーマは選挙と政治家。

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