4月25日に投開票日を迎える名古屋市長選挙では、連日候補者による熱い訴えが続いています。
選挙期間中に新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が施行される状況の中、新型コロナウイルス対策などを通じて、市政に興味を持たれた方もいるのではないでしょうか。
若者世代の投票参加を後押しすべく、名古屋市政において若者とかかわりのある5個の数字を紹介します。
名古屋市の人口は約232.5万人(令和3年3月)となっており、長期的な推計では最も人口が多い時期にあたるとされています。また、名古屋市の人口はこれから緩やかな減少傾向が続いていくことも推計されています。事実、市の人口は昨年6月に過去最高となる約233万人を記録してからは減少が続いています。(出所:名古屋「名古屋市の人口」)
少子高齢化も続いており、市民の内65歳以上の方の割合は2000年に15.6%であったものが、今年の1月時点で25.1%と市民のおよそ4人に1人が「高齢者」とされる65歳以上の方となっています。同様に、14歳以下の子どもが占める割合は2000年13.97%が2021年12.1%と徐々に低下しています。
なお、後期高齢者に区分される75歳以上の方が占める割合も5年間で2%ずつ増加する傾向が続いており、2025年には15.7%、市民のおよそ6人に1人が75歳以上の方となることが推計されています。(出所:日本の地域別将来推計人口)
これまで続いてきた人口増加という大きな流れが変わる中で、これからの名古屋に求められる将来像や取り組みはどの様なものがあるでしょうか。
働き手世代とされる15歳~64歳の市民は2021年の段階で143.6万人ほどですが、2040年には128.1万人と1割強の減少が見込まれています。今後働き手不足などの問題が顕在化することが想定されるなかで注目されるのが女性の活躍です。
女性が活躍できる社会を実現していく際に永らく課題となっているのが「子育て支援」です。
2020年4月における市内の保育所待機児童は0人と、7年連続で国が定める基準での「待機児童ゼロ」を達成しています。一方、保育所等の利用申込をした児童のうち、希望した特定の園に入れなかったなどの理由によって利用に至っていない児童数は882人(前年度から47人減)となっています。
また、保育所待機児童の多くが小学校進学後に利用することになる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童は永らく続いてきた「待機児童ゼロ」から変化があり、2020年7月1日時点で21人が報告されています。
「子どもの安心・安全」も大切な課題です。
「児童相談所での児童虐待相談対応件数」によると、2019年度に名古屋市の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数は3,394件と前年度よりも498件、15%の増加となっています。政令指定都市の中で人口10万人当たりの相談件数を比較してみると、多い方から数えて9番目の水準となります。4年前の2015年には2,362件が報告されていましたので、他の政令指定都市同様、年々報告件数が増加していることがわかります。
また、新型コロナウイルス感染症への対応によって、市内の医療体制への影響も懸念されています。
人口10万人当たりの医療施設に従事する医師数は、名古屋市では2018年294.3人と政令指定都市20市のうちで多い方から数えて11番目の水準でした。2008年には261.3人で政令指定都市17市(当時)のうち多い方から数えて8番目でしたので、市内のお医者さんの数は増加している一方で、全国での順位は大きく変わっていないことがわかります。
新型コロナウイルス感染症は疾病による直接的な影響に加えて、家庭での児童虐待件数を増やした可能性も指摘されるなど、子どもたちの安心・安全に大きな影響を及ぼしています。
そのような中で子どもたちが安心して地域の中で育まれていくためにどのような取組みが必要となるのか、各候補者の政策が注目されます。
候補者の公約の中には、「市民1人当たり2万円のコロナ対策生活応援商品券の配布」や「1人上限2万円で買物金額の30%を電子マネーでキャッシュバック」などの政策が掲げられています。
名古屋市の3月1日時点の人口で計算すると、これらの政策の実現には最大で465億円の費用が必要となります。名古屋市の今年度の予算(一般会計当初予算)は約1.3兆円ですので市の予算の3.5%に相当する金額が必要になります。
なお、名古屋市の予算のうち、人件費や扶助費(生活保護費や高齢者・子ども、障害のある方などへの支援のための費用)などの支払いが決まっている金額の割合を示す「経常収支比率」は2019年度に99.6%でした。今年度も同様の割合になるとすると、市が自由に使途を決めて使用することのできる予算は53億円ほどになります。
先述の「商品券や電子マネーでのキャッシュバック」を行うためには400億円近い予算が不足するため、同政策を実行するためには今年度の予算を追加するか、市の貯金にも例えられる基金からねん出する必要があります。ちなみに、市の基金のうち使い方を自由に決められる財政調整基金は2019年度末で125億円ほどとなっており、こちらをすべて充てたとしても不足が生じます。
このような状況の中でどのように政策を実現していくのかは、候補者によって異なる主張が行われています。
また、同じ市のお金の使い道でも、例えば名古屋市で今年度に保育所待機児童対策のために施設整備費として投じられるのは32.6億円となっています。
これから緩やかな人口減少の局面に差し掛かろうとする名古屋市において、限られた予算をどのような政策に使い、また政策の実現に必要な費用をどのように賄っていくことが望ましいでしょうか。
名古屋市長選挙の有権者数は約189万人です。
名古屋市を100人の村に置き換えてみると、村人の内81人が投票権を持っていることになります。前回、市長選挙の投票率は36.90%でしたので、今回も同じ投票率だと仮定すると市長選挙で投票する村人は30人になります。
日頃の報道や本記事などによって市長選挙に興味を持たれた方の中にも「投票所は遠いところにあるだろうし、投票所への外出で新型コロナウイルスに感染してしまうのではないか」と懸念される方もいらっしゃることと思います。
前回市長選挙を対象に行われた調査では、自宅から投票所までの移動に要した時間(徒歩)は2/3の人が10分以内であったと回答しています。また、選挙管理委員会のHPでは各地区の投票所の時間帯別の混雑状況予想や、期日前投票所の情報などが掲載されています。新型コロナウイルスが各地に広がる中でも、日々、各地で選挙は行われ、対策のノウハウも蓄積されてきています。これらの情報も参照されながら、ぜひ貴重な一票を投じるかどうかをご判断いただければと思います。
名古屋市では新型コロナウイルスに対応するための生活様式の変化に加えて、これまで増加傾向にあった人口が減少傾向に転じようとするなど、大きな節目を迎えています。
そのような転換期において、今後、他のどの世代の方よりも長く名古屋市とかかわりを持つことになる若者世代が、ポストコロナの時代も見据えて名古屋市の未来を「自分ごと」として考え、納得のいく1票を投じていくことが期待されます。
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