昨年、ハリウッドのセクハラ・スキャンダルに始まった#Metoo は今年になってからも留まるところを知りません。政界、芸能界、メディアを問わず、各地で過去のセクハラ疑惑が暴露され続けています。世界各国で議員辞職などが相次ぎ、その延長として女性の立候補者数が増えるなどにも発展しています。
イギリスでは昨年11月に、繰り返しセクハラを行っていたとして、国防大臣だったファロン氏が大臣を辞任しました。ファロン氏のセクハラ疑惑を受けて、女性運動に熱心であることで知られるメイ首相は、各党の代表者に「この問題に必要な超党派の真剣かつ速やかな対応」を求めています。
韓国では今年の1月下旬に、女性検事がテレビインタビューで幹部からのセクハラ被害を暴露したのをきっかけに、運動が広がりを見せました。その後、将来の大統領候補とまで言われた安熙正氏が、本人は否定しているものの秘書への性的暴行疑惑により、忠清南道知事を辞任するに至っています。女性家族大臣である鄭鉉柏氏は「2018年は韓国の女性運動史にとって歴史的な年として刻まれるだろう」と述べています。
#Metooのきっかけとなったアメリカでも、映画プロデューサーであるワインスタイン氏のハリウッド女優らへのセクハラが発覚して以降、女性による告発が政界・芸能界・メディアを問わず一気に噴出しました。
Pretty much every woman that I know, myself included, has a #MeToo story. It’s not cute. It’s not funny. It’s harassment. https://t.co/u7ZATC87rC
— Senator Mazie Hirono (@maziehirono) 2017年10月20日
政界においてはブッシュ(父)大統領や1960年代の公民権運動の象徴的指導者の1人として知られるコンヤーズ民主党下院議員に関するスキャンダルまで飛び出し、コンヤーズ議員は辞職に追い込まれました。他にも多くの議員が辞任に追い込まれています。
アメリカの#Metoo は単なる政治スキャンダルにとどまらず、女性の地位向上に向けた運動にまで発展しています。今年の11月に連邦議会上下両院の選挙(いわゆる中間選挙)が行われますが、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、下院選・上院選に出馬を表明した女性の数は過去最多となっています。
この傾向は、民主党、共和党の双方で起きています。そして両党の女性候補者の多くは、過去に受けたセクハラの経験を語り、社会変革を訴えています。アメリカの中間選挙では、候補者はまず予備選で党の候補者として選ばれる必要があるなどの理由から、すぐに女性議員が増える訳ではありませんが、今後アメリカ政治に大きく影響を与えることは間違いないでしょう。
日本での#Metoo は議員辞職スキャンダルにはつながっていませんが、財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言問題を巡り大きな動きになっています。
https://t.co/vmFwxGFJjt
財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言問題を巡り、野党議員が20日、国会内の会合で黒い服を着て「#MeToo」と書かれた紙を掲げて、抗議の意思を示しました。(諫) pic.twitter.com/zpdQGipLwr— 朝日新聞 映像報道部 (@asahi_photo) 2018年4月20日
安倍政権退陣を求める野党合同の集会で女性議員らはそろいの黒い服で参加し、財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑などに抗議して「#MeToo」のプラカードを掲げました。
写真特集で→https://t.co/ql10Kd6BBF pic.twitter.com/BFWwecXZlY— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) 2018年4月20日
また、このほか、女性議員の少なさの問題としても#Metooが捉えられています。
昨年の衆院選前の衆議院議員のうち女性議員は全体の9.3%にとどまりましたが、これは193か国中165位の水準です。選挙後も、10.1%にとどまり、抜本的な改革が訴えられてきました。
こうした後押しもあり、今年の4月には候補者や政党などの活動の自由を確保した上で、選挙における男女の候補者の数ができるかぎり「均等」になることを目指すことを求める法案が、与野党の調整の結果、衆議院本会議に提出されることが決まりました。この法案は今国会で成立する見通しで、日本でも女性の地位向上に向けた政治的な動きが進むこととなりました。
このほか、立憲民主党など一部の政党では、候補者の一定割合を女性にするクオータ制の導入を進めています。世界で大きく話題となっている#Metoo の結果、こうした女性議員を増やす試みが今後ますます強くなっていくことが期待されます。
(アイキャッチ画像は毎日新聞写真部Twitterより)
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