国内では財務省による文書書き換え問題が注目を集めていますが、海外に目を移せば、3月4日に行われたイタリア総選挙の結果が世界から注目されています。
それは、どの政党・どの連合(政党同士による協力関係)も、過半数である315議席を集められなかったからです。さらに、単独政党としては最も議席を獲得したのはポピュリズム政党として知られる「五つ星運動」という点から注目されています。「五つ星運動」は選挙の前は108議席でしたが、今回の総選挙では227議席、31%余りの票を集め第一党になりました。
一方で、政党連合としては4党から構成されベルルスコーニ元首相率いる「中道右派連合」が35%あまりを集め一位となりました。
大枠の結果としては大方の予想通りと言えるでしょう。しかし、その中身を見てみるとかなり混とんとしています。
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まず、政党連合として一位となった中道右派連合にほころびが見え始めたということです。中道右派連合はベルルスコーニ元首相率いる政党「フォルツァ・イタリア」とサルビーニ党首率いる政党「同盟」を軸として形成されています。昨年末に地方選挙で共闘が実績を残したため連合を形成していました。
しかし、政策面では同盟が反EU、反移民を強く打ち出しているため、その部分で政策に距離があります。特に、2月3日に発生した中部マチェラータで発生した地元の極右系住民による移民銃撃事件の後、移民問題が争点として台頭しました。その結果、現在では五つ星運動以上に反EU、反移民の主張が強まっていることが指摘されています。
そして、反移民世論もあり、同盟が連合内の第一党に躍り出ました。当初はベルルスコーニ元首相が連合の中心でしたが、今回サルトーニ党首は自身を首相候補として打ち出しています。3月5日には両党首が連合の枠組みを維持することで合意していますが、今回の選挙結果によって連合の位置づけが大きく反EU、反移民へと変貌することは確実でしょう。
五つ星運動は、当初の勢いには陰りを見せたものの単独では第一党に躍り出ました。当初は反EU、反緊縮を掲げる政党でしたが、現在のディマイオ党首の下で親EUや財政再建への配慮を示すなど、路線の修正を進めています。特に、今回の選挙ではあくまで反腐敗を強く訴えて第一党になることに成功しました。その点でいえば、ポピュリズムとして例に挙げられる、反移民を主張の中心に据えたフランスのルペン氏率いる「国民戦線」や、アメリカのトランプ大統領のそれとは大きく違います。むしろ、反既成政治を主張した橋下徹氏率いるかつての「大阪維新の会」に近いかもしれません。
また、かつては他党との連立を拒んでいましたが、今回の選挙を前に連立交渉を行うことを示唆しています。単独で1位となったことで、その中心となることが期待されるでしょう。
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このように今回の選挙では、中道右派連合に属する同盟と単独で第一党になった五つ星運動が台頭しました。そして、与党の「民主党」は大きく議席を減らしたほか、中道右派連合のフォルツァ・イタリアも支持を伸ばせませんでした。このように既成政治が否定される一方で、反既成政治的な政党が複数台頭したというのが今回の選挙の大まかな特徴です。
一方で、いずれの政党、政党連合も過半数の議席を獲得できませんでした。そのため、過半数の支持を得て政権を発足させるために、連立交渉が行われることになります。しかし、連立合意がどのように進むかは不透明です。主に経済政策、EU政策において各政党の主張は大きく異なります。今後とも連立交渉から目が離せない状況です。
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