今年の3月にイタリアで総選挙が行われました。それから3ヶ月弱。早くも再び総選挙が行われようとしています。
イタリア政治が混迷を極めている直接的な原因は、3月の選挙結果にあります。
総選挙の結果、「政党」という視点で見ると、ポピュリズム政党として知られる「五つ星運動」が31%余りの票を集め第一
党になりました。
一方で、いくつかの政党による連合(政党連合)としては、サルヴィーニ氏率いる「同盟」が中心となっている「中道右派連合」が35%あまりを集め1位となりました。また、選挙前に与党であった民主党が中心となる「中道左派連合」は20%あまりの得票となり、惨敗しました。このように、いずれの党派も過半数の議席を獲得できなかったことがそもそもの始まりです。

イタリアの政治制度は日本と似ている点があります。例えば、総選挙を行い議員の過半数の支持を得て、政権を発足させる必要があるところです。しかし、小選挙区制を中心とする日本と異なり、比例制を中心とするイタリアでは、過半数の議席を獲得する党派が現れないことも起こり得ます。
今回の選挙でも、いずれの党派も過半数の議席を獲得できなかったため、新政権を発足させるには連立交渉を行う必要がありました。しかし、今回勢力が拮抗した五つ星運動や中道右派連合、中道左派連合はお互いを敵視しており、連立交渉は失敗するであろうという見込みが当初からありました。
反既成政治や反汚職を掲げて第一党になった五つ星運動は、最近はポピュリズム路線を修正する構えを見せているものの、長らく既成政治の象徴であった中道右派連合や中道左派連合を批判し続けていました。
対する中道右派連合や中道左派連合も五つ星運動を「ポピュリズム」として批判し、長らく五つ星運動と連立することを拒否してきました。
そして、中道左派連合と中道右派連合とは、移民受け入れの是非など政策の差が大きいため、連立は合理的ではありませんでした。そのため、連立交渉は3回にわたり行われたものの、いずれの党派も当初の立場を崩すことはなく、連立政権発足には至りませんでした。
イタリアには、実際の政治の中心となる首相の他に、独立して選ばれる大統領が存在します。今回連立交渉の仲介者としての役割を担ったのが、マッタレッラ大統領です。しかし、先述の通り、2カ月にわたる三度の連立交渉は全て失敗に終わりました。そのため、マッタレッラ氏は、「我々はこれ以上待てない」として、大統領が選ぶ政策専門家によって構成される中立政権を発足させることへの支持を五つ星運動、中道右派連合、中道左派連合に求めました。そして、中立政権への支持が集まらない場合は速やかに再選挙を行うことを明らかにしました。
しかし、この中立政権もスムーズに進みませんでした。
中立政権も通常の政権と同様に議員の過半数の支持を必要とするためです。五つ星運動や同盟は中立政権を支持しない姿勢を明らかにしています。そのため、中立政権発足すら厳しくなっているのです。また、五つ星運動のリーダーのマイオ氏は同盟との一時的な連立を模索していますが、上手くいくかは未知数です。そのため、年内再選挙の可能性が一段と高まっているのです。
今回の膠着状態は、そもそもEUの求めに応じた社会保障費など厳しい財政支出削減への反発から始まる五つ星運動の台頭と、五つ星運動への警戒感から単独過半数を阻止するための選挙制度改正が行われたことによって、議会内勢力が分散したことによります。同じく比例制を採用し昨年総選挙が行われたオーストリア、ドイツ、オランダでは、それぞれ選挙から連立政権発足まで2~7カ月要しています。選挙結果によって速やかに政権の大枠が決まる日本からすれば想像できない事態になっているわけです。
現在の日本の選挙制度も批判が無いわけではありません。しかし、制度によっては政権発足が遅れ政策課題に対応できないという問題が発生しています。選挙制度はこのようにメリット・デメリットを踏まえた上で慎重に選択する必要があると言えるでしょう。
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