衆議院議員選挙区画定審議会(いわゆる区割り審)によって新しい選挙区割りの勧告が行われ、9日には参院本会議で、与野党の賛成多数で可決、成立、97の選挙区の区割りが変更となりました。
さらに6つの都道府県(青森・岩手・三重・奈良・熊本・鹿児島)では選挙区がそれぞれ1減する事態となりました。あれ、でも現職の国会議員はいるわけだよね? こうした事情で選挙区を失った国会議員の調整に使われるのが「コスタリカ方式」と呼ばれるものです。
コスタリカ方式とは、同じ政党に所属する複数の候補者が存在する選挙区において、1人を小選挙区から立候補、もう1人を比例単独で立候補させ、選挙ごとに交代させるという選挙戦術です。
これまで自民党を中心に使われていた先述なのですが、「有権者の理解を得られない」として敬遠されていました。ちなみに名付け親はというと、コスタリカ友好議連会長(当時)の森喜朗元首相。ちょっとした豆知識です。
なかなか「理解を得られない」コスタリカ方式ですが、次の衆院選から採用される見込みです。これは、区割り審が一票の格差是正に乗り出し、人口過疎の進む都道府県を中心に選挙区を減らしてしまったためです。そうすると現職議員は自分の選挙区を失い、合併先の国会議員と候補者調整を行うことが必要になりました。
こうして今回と同様に「一票の格差」を是正するために「0増5減」が行われた2014年総選挙では山梨1区においてコスタリカ方式が復活しました。また福井2区・高知1区・徳島1区では小選挙区と(上位)比例単独を中長期的に固定化させる「変則コスタリカ方式」が採用されました。
コスタリカ方式は候補者調整が難航した際の、苦肉の策といえます。メリットとしては1度小選挙区で勝利を収めれば、次の衆院選において当選がほぼ確実ということが挙げられます。コスタリカ方式において比例単独立候補の場合は、政党名簿上位(たいてい1位)に載せることがほとんどのため、大政党ではまず落選しないのです。また選挙区選挙においては双方の後援会を動員することもできます。
しかしデメリットもたくさんあります。公認権は党執行部が握っているため、反党行為や離党は何が何でも避けなければなりません。もし党に背けば、次の衆院選では同じ地盤を持った候補と、無所属候補としてのガチンコ勝負になってしまうでしょう。
また比例単独候補の増加は、惜敗率による比例復活当選の可能性を下げるので、小選挙区選出議員からは反発があります。また自民党は73歳定年制(衆院選比例名簿)をとっており、高齢議員がコスタリカ方式から追い出されてしまうリスクも。自民党 鈴木馨祐青年局長は2月、改めて73歳定年制の堅持を求めるなど、コスタリカ方式を巡る議論は世代間闘争を生み出してしまうかもしれません。
選挙区の6減は避けられない次の衆院選。公認争いも激化してくると思われます。公認権を有する自民党二階俊博幹事長も「最大公約数で皆が理解し合えるような結論を見いだすように努力する。相当な力仕事になるだろう」(朝日新聞5月20日朝刊)と述べるなど、現職議員同士が妥協点を見出すことの難しさを認めました。都道府県連でも党本部でも調整がつかない際に用いられるであろうコスタリカ方式。今後の行く末にも注目です。
注:タイトル及び記事内に一部誤解を招く表現・誤った記載があったため、修正しました(11日15時)
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