衆院小選挙区の区割りを変更する案が4月19日、公表されました。
次期衆院選から、19都道府県97選挙区の「境界線」が変わり、定数も295から289に減ります。有権者の人口を均等にするため、「杓子(しゃくし)定規的」に第三者の審議会が区割り作業を行った結果、東京では選挙区のほどんとが近隣の区と入れ替わる現象も起こり、強い「地盤」を持つ議員からは悲鳴も聞こえてきます。
一方で、区割り変更案が公表されたことにより、解散総選挙が先延ばしになったと胸をなでおろしている議員も少なくありません。
衆院選挙区画定審議会(区割り審)は今月17日、総務省で会合を開き、選挙区定数を青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で各1減し、一票の格差を2倍未満に抑える区割り改定案を決定。4月19日には安倍晋三首相に改定案を勧告しました。
区割りが変われば、自治体の選挙実務が新たに発生し、有権者への周知も必要となります。このことから、「勧告から最低1カ月、もしくは数カ月間は、解散総選挙は困難である」という見方が永田町では一般的です。
ただ、法的な縛りはないようで、政府は「勧告は解散権を縛らない」との公式見解を示しています。よって、安倍晋三首相がその気になれば、今日、明日にでも、衆院解散に踏み切ることは論理的にも、手続き面的にも可能です。
しかしながら、今回は97もの選挙区で区割りの変更があったばかりなのに、すぐに解散するのは議員だけでなく、有権者にとってもマイナスが大きいように思えます。
区割りが変更されれば、議員や候補者は一から地元回りを始めることになり、政党・政治家側の負担が大きいという側面もあります。エリアごとに組織化されている公明党・共産党は、区割り変更の影響を受けにくいと言われていますが、それでも新しい議員や候補者が地域に「なじむ」時間は不可欠でしょう。区割り変更後、1カ月や2カ月で選挙戦に突入するのは、やはり議員心理としては避けたいところです。
以上のような「空気感」を踏まえると、やはり早期の解散は無いと考えられるでしょう。7月2日の東京都議選との「ダブル選挙」が一時騒がれましたが、小池百合子都知事の勢いなどを踏まえれば、政府・与党にとってはややリスクが高いとも言えます。焦って勝負する理由もあまりなく、今夏までの衆院解散は考えにくいとみていいでしょう。
では、衆院の解散はいつごろになるのでしょうか? 目下、永田町でささやかれているのが、「最短で今秋(年内)、順当にいけば年明け」という予測です。
秋ごろであれば、新区割りに付随する自治体の業務なども落ち着いており、選挙実務は比較的スムーズに進むと考えられています。政局的な観点でいえば、野党が低迷する中、高い内閣支持率を維持していれば、今秋(年内)の解散は有力なタイミングとなります。大きな政治イベントがないことも安倍首相にとっては追い風となります。
ちなみに前回の衆院選は2014年12月。丸3年近くということを踏まえても、解散するにはもってこいの時期でしょう。加えて、2018年12月の衆議院議員の任期満了を念頭に置くと、「追い込まれ解散は避けたい」との心理が政府・与党に働きます。今年中の解散・総選挙の可能性は高いとみて準備をしている政治家が多いのは、このためです。
なお、2018年中の解散となれば、
(1)1月召集の通常国会冒頭
(2)予算案成立直後の4月
(3)9月の自民党総裁選前
(4)9月の自民党総裁選後
の4パターンが想定されます。いずれのタイミングもあり得る気がしますが、永田町では9月の自民党総裁選で安倍首相が再選され、総裁としての任期を確保した上で解散に踏み切るという「来年秋説」も広がっています。
こうやって見てみると、区割りの変更は、解散・総選挙に決定的な影響は与えていないように思えます。それでも、今夏までの解散・総選挙が物理的に難しくなるのは間違いなく、そういう意味で、安倍首相の「解散権」を一時的とはいえ、事実上縛っている側面がある、とも言えます。
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