選挙には、「どこまでを1つの選挙区とするか」といった「選挙区割り」が付き物です。
選挙区割りによって、自分の選挙区がどこになるのか、自分の選挙区の政治家が誰になるのかが決まります。例えば都内の衆院選の選挙区では、「1つの区が1つの選挙区」ではなく、「いくつかの複数の区」を1つの選挙区を見なすこともあります。
このため、選挙区割りは常に論争の的です。日本でも、「1つの選挙区当たりの人口の差が大きすぎる」という「一票の格差」が問題になり、最近では選挙区改正が議論されるようになりました。特に、6県の小選挙区の定数を1つずつ削減する「0増6減」など97選挙区の区割りを見直すことが決定され、話題になっています。
選挙区割りの問題はアメリカにもあります。アメリカも日本と同様に人口の増減に伴って、選挙区改正が行われます。しかし、アメリカでは、選挙区改正が露骨に共和党に有利なものとして批判され、裁判にまで発展し、5月22日に連邦最高裁が「違憲」という判断を下しました。
日本の場合は「衆院選挙区画定審議会(区割り審)」という独立機関が区割りを決定し、国会でその当否が審議されますが、区割り審の提案そのものに自民党や民進党などが異を唱えることはありません。しかし、アメリカの場合は日本の県に当たる「州」の議会が連邦議会の区割りを決めます。しかも、その決定は民主党なら民主党に有利に、共和党なら共和党に有利に行われることが多々あります。
今回は、この選挙区改正をめぐる大騒動について解説したいと思います。
アメリカでは州議会が連邦下院の選挙区を決めます。ノース・カロライナ州の場合、州議会で多数を占める共和党が自分たちに有利な選挙区改正を露骨に行ってきたとして、これまで何度も批判されてきました。そして、今回裁判に発展し、5月22日に連邦最高裁が「違憲」という判断を下しました。
ノース・カロライナ州共和党は、自らに有利な選挙区の改正を行おうとしました。例えば、黒人ばかりの選挙区を作りました。アメリカでは、白人は共和党、黒人が民主党というように、人種によっておおよそ投票先が決まります。黒人ばかりの選挙区を作るということは、その選挙区では民主党が圧勝するということになります。
「民主党が圧勝するなら、共和党には不利じゃないか」と思うかもしれません。ですが、これは選挙制度を巧みに利用しているのです。つまり、「本来なら、他の選挙区で民主党に投票するであろう人を1つの選挙区に集中させることで、民主党の票を無駄にさせる」ことを狙っています。
この図では、上ではA党・B党ともに2名が当選していますが、下の図では意図的にB党支持者を1ヶ所に集めているため、B党の当選者は1名でA党の当選者が3名になっています。
このように、共和党が行った選挙区改正は、民主党に得票する黒人を特定の選挙区に集中させることで、結果として議会全体で民主党が得られる議席数を減らそうとしたのです。
共和党は、「人種差別の歴史を踏まえ黒人に政治的な配慮を求める『投票権法』を考慮した」などと主張しましたが、余りに露骨であったため、裁判所には聞き入れられませんでした。
人種に基づいたここまで露骨な選挙区改正は珍しいですが、自党に有利な選挙区改正は他の州でも行われています。しかし、どこから違憲なのかという判断が難しく、司法が介入に消極的なことから、一度自党に有利な選挙区改正を行ってしまえば、選挙に負けない限りは有利な選挙区を維持できるというのが実情です。
このように選挙区改正をとっても日本とアメリカでは大きく異なります。日本でも97もの選挙区が変更された今回の改正は、全国で話題を集めています。
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