自民党公認狂奏曲?神奈川の熱い冬?
今夏に迫る参議院選挙で、ひときわ熱い選挙区がある。神奈川選挙区である。
ことの始まりは2012年参議院選挙制度改革であった。一票の格差是正のため、神奈川選挙区の定数が6から8になった。つまり、2016年選挙の同選挙区の定数が3から4になったのである。当然各党はその1議席を狙って戦略を立て始めた。
しかも、2015年8月には自民党現職の小泉昭男議員が引退を表明した。現職が有利な選挙において、現職の引退表明とは他の立候補者にとってチャンス到来を意味する。
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。
では、自民党はどう動くのか。自民党は同選挙区2013年選挙では定数4の同選挙区で、自民党・公明党1人ずつ立候補し、共に当選した。同様に2016年選挙でも与党で2議席狙うと考えられており、公明党は2015年10月に新人三浦のぶひろ氏に公認を出した。
ところが、2016年1月20日、自民党本部は比例区当選の三原じゅん子氏を「公認」、現職無所属の中西健治氏を「推薦」するという決定をした。与党(自公)で定数4人中3人の当選を狙うことになる。与党への票が3氏の間で分散する可能性を考えれば、自民党の決定は強気なものと言える。
毎日新聞の報道によれば、この決定に自民党神奈川県連は反発した。というのも、中西氏は自公の支持を受けて出馬した2009年横浜市長選挙に落選したのち、2010年参議院選挙ではみんなの党に鞍替えして当選した経歴を持つ。県連幹部は「地元の自民党議員には、砂をかけて出て行った中西氏へのしこりがある。県連が組織的に応援することはない。混戦は必至だ」とまで言っているという。
http://mainichi.jp/articles/20160120/ddl/k14/010/049000c
このような県連と党本部の確執によって、党「公認」ではなく、そこからワンランク下の党「推薦」になっているのかもしれない。
一方、三原氏は精力的に地元回りをし、県連との付き合いを大事にしていた。その努力が身を結んだのか、小泉氏引退表明後の2015年9月、党県連から「公認」を得た。しかし、その後なかなか党本部から公認を得られなかった。よほど堪えたのであろう。公認直前の1月16日Twitterで「私だけ公認を頂けていません。ツラい、、、。」という投稿をしている。
毎日、精一杯頑張って神奈川県中を回りご挨拶させて頂いております。 でも、私だけ公認を頂けていません。 ツラい、、、。 6年前と同じだな、、、。 自民党から公認を貰えずに苦しんだ半年間を再び思い出します。 それでも、私は諦めません❕❕
— 三原じゅん子 (@miharajunco) 2016, 1月 5
県連が公認してから4ヶ月あまり本部から公認を得られなかったことについては、いろいろな憶測が飛んだ。週刊文春では、三原氏がかつて自民党総裁選で石破氏支持に回ったことへの報復であるという説や、当初から党公認を2人出すことを考えていたという党関係者の証言を紹介した。
http://blogos.com/article/154817/
いずれにせよ、懸命な地元回りが党公認を後押ししたのかもしれない。
しかし、与党系3候補の道のりは険しい。まず民主党は現職金子洋一氏を公認した。金子氏は経済政策の論客であり民主党神奈川県連代表を務める実力派である。
また、議席が4に増えたことは、小政党に有利に働く。近年着実に議席に近づいているのが共産党である。特に2013年選挙では民主党候補に僅差で負けたものの、支持の広がりが明らかになった。今回の選挙は浅賀由香氏を公認して、議席を狙う。
自民党の強気の戦略が功を奏すか、裏目に出るか。「推薦」候補をめぐって、党本部と県連の関係はどうなるのか。選挙の結果によっては自民党と公明党の連立にもヒビが入るのではないか。
神奈川選挙区からしばらく目を離せない。
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