大統領選挙では共和党トランプ氏が勝ったノースカロライナ州ですが、同時に行われた州知事選挙では現職の共和党知事を破り民主党の新人が勝利しました。
さらには、同時に行われたノースカロライナ州上院選、下院選ではいずれも共和党が勝利しました。州知事と議会で異なる政党が勝利したことにより「ねじれ」が起きているのですが、このことが背景となってある共和党議会による「復讐」ともいえる立法が行われています。
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カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州… とアメリカには州が全部で50あります。日本の県の数47と近いことからも県と州を同一のものと扱ってしまいがちです。
しかし、アメリカの州の権限の強さは日本の県の比ではありません。州は英語でいうと「国家」を意味する”state”であり、国家に匹敵する権限を幾つも持っています。
その1つが立法権です。アメリカではそれぞれの州が立法権を持ち、それぞれの州で通用する法律を定めることができます。日本では国会が法律を定め、県は法律の範囲内でのみ条令を定めることができます。
例えば、アメリカのニューヨーク州にはニューヨーク州刑法がありますが、日本の東京都には東京都刑法は存在しません。全国で刑法が1つあるだけです。
そのため、州議会がどのような法律を制定するかは、日本でいえば国会がどのような法律を制定するかと同様の重要性があります。まさに、「地方分権」の先進国と言えるでしょう。
それでは、一体どのような問題が起きているのでしょうか。11月の州知事選では民主党が勝ちましたが、12月いっぱいは現職の共和党知事が知事として職務を行います。この間に、共和党議会は知事の権限する法律を駆け込みで可決させました。現職の共和党知事の任期は1カ月を切っているわけですから、次の民主党知事を標的としていることは明らかでしょう。
ニューヨーク・タイムズがまとめたところによると、具体的には
・州選挙管理委員会委員の人選を過半数任命できたものを、過半数任命できないようにする
・州大学委員の任命の権限を奪う
・その他州知事の任命権の対象人数を3分の1に減らす
・州知事が内閣を指名した際に下院の承認を得る必要があったが、さらに上院からも得なければならないようにする
といった内容です。立法の権限は州議会が持ちますが、実際の運用にあたっては州知事が任命した内閣や職員が重要な役割を果たします。そのため、州知事に与えられた人事権が大きな意味を持つのですが、今回の共和党議会の立法は、こうした州知事の役割を大きく制限するものです。
こうしたノースカロライナ州共和党議会の立法攻勢は今に始まったことではありません。既に共和党に有利な選挙区構成にする法律や、共和党に有利なように投票権を制限する法律を可決させています。
しかし、いずれも連邦裁判所によって否定されています。州は法律を制定することはできますが、場合によっては連邦裁判所がその法律を覆すことができます。今回の州知事の権限を制限する立法も、連邦裁判所に訴えられることになるでしょう。
今回のような露骨に党派的な政治は今後も行われていくと思われます。その歯止めとして連邦裁判所の役割が期待されていますが、トランプ次期大統領の連邦最高裁判事の人選次第では、党派的な政治を追認する判決を出すようになるかもしれません。アメリカの民主主義の基盤を揺るがすのはトランプ次期大統領に限ったことではなく、足元の州政治からも揺るがされています。
トランプ氏の大統領就任は1月20日、間もなくです。今年もアメリカ政治から目が離せません。
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