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希望の塾の期待と不安~新たな展開はあるのか

2016/11/21

児玉 克哉

児玉 克哉

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※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の転載となります。記事内容は執筆者個人の知見によるものです。

kibounojuku

(希望の塾 HPより)

小池百合子東京都知事が立ち上げた「希望の塾」は、塾生応募者数が4000人を超え、実際の受講者が2000人という政治塾としては巨大規模で始まった。注目度も期待度も大きい。10月30日に第一回講義、11月12日に第二回講義が開催された。なんといっても受講者が多い。相互の意見交換とはなかなかならないようで、手探りの状況が続きそうだ。

こうした政党や政治家が主宰する政治塾はこれまでにもかなりある。特に2012年前後にいくつも開講され、ちょっとした政治熟ブームが起きた。2012年に、大阪維新の会の橋下徹氏は「維新政治塾」を立ち上げた。この「維新政治塾」も応募者数は3326人と3000人を超え、実際には888人が受講した。その後、一時中断するもののまた再開されている。初回のような応募者はないものの、200名弱の応募者があるようだ。2012年には、嘉田由紀子氏が「未来政治塾」、大村秀章氏が「東海大志塾」、河村たかし氏が「河村たかし政治塾」を始め、話題となった。ただ、維新政治塾以外は現在は継続されていない。最初は熱気があるものの継続するのは難しいことがわかる。

自民党は、1957年に始めた「中央政治大学院」を継続している。現在も続けており、政治家の候補者の発掘や育成に効果を持っている。民主党・民進党も各地で政治スクールを開講している。各地の状況に合わせての運営という感じだ。

松下政経塾は多くの政治家を誕生させているが、これはちょっと別格といえる。政治家・政党が主宰の政治塾は受講生が受講費を払いながらの運営になるが、松下政経塾は資金的な支援を塾側がしながら、長期にわたっての研修を行う。

今回の「希望の塾」の現時点での問題点は、受講生が多いこともあり、連続講演会の感じとなっていることだ。こうした政治塾では、講師を囲んでの討論や塾生同士の討論やワークショップが重要なポイントとなる。インターネットなどのメディアが発達した現在では、単なる講演会にはそれほどの価値はない。例えば、猪瀬氏の意見などのかなりの部分はテレビやインターネットで聞くことができる。無料で聞くことができる講演会もたくさんある。有料であっても政治系列の講演会に1万円の受講料があるものはほとんどない。政治パーティとのセットでもないと、そうした有料講演会はなかなか成立しない。今のマス連続講演会の形だけでは、期待も大きいだけに、失望に繋がる可能性がある。実際にそうした論調の記事も出てきている。

塾生が期待しているのは、実際の政治家や評論家、実業家などとの交流、そしてその交流を通じての生の声から学ぶことだろう。また志の高い塾生同士の交流や未来の政策づくりの機会が得られるのが大きな魅力のはずだ。政治家になるのを希望する人もかなりいるだろう。個々のケースで状況は異なる。それらを個別に相談できる人間関係も塾生が希望しているものだろう。つまり今の、マス講演方式では期待とかなりかけ離れてしまうケースが多くなる。連続講演会を聞くのが目的の人は少ないはずだ。小池知事やその関係者らと一緒に未来の希望の社会を作る集団に入りたいという思いだろう。

おそらく1人に人が個人的に対応できるとしたら50名程度だろう。多忙な小池知事一人で個人的な対応ができるわけがない。小池知事の下にスーパーバイザー制を作ってはどうか。2000名なら40人のスーパーバイザーが必要だが、そのスーパーバイザーがより個人的、人間的な指導をしていくのだ。講義の後に交流会をしたい人もいるだろうが、2000人ではほぼ無理だ。50名程度のグループでの活動なら可能だろう。学ぶべきなのは政治家になるための知識だけではない。政治家を目指す志を一緒に育てることが重要なはずだ。講義と小人数での活動を組み合わせることで、大きな効果が期待できる。

「希望の塾」はまだ始まったばかりで手探りの状態だろう。連続講演会を超えて、情熱を育む塾になってほしい。改善を積み重ねながら、希望に繋がる塾となることを期待したい。

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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