民主党も共和党も事実上予備選挙が終わり、秋の本選挙はクリントン氏とトランプ氏によって争われることが決まりました。メディアでもそのことを見据えた報道が続いています。特に、最近では両者の支持率が拮抗していることから、「本当にトランプ氏が大統領になってしまうのか?」と憂慮する報道が続いているようです。
一方、トランプ氏が大統領候補になることで、一気にニュースに出てこなくなった人たちがいます。ブッシュ氏、ルビオ氏、クルーズ氏を大統領候補として支持した「共和党主流派」と呼ばれる人たちです。彼らは最近何しているのでしょうか?
共和党重鎮がクリントン氏支持を公言したとするニュースがよく伝えられます。しかし、実は着々と共和党内でトランプ氏支持への動きが顕在化しています。その節目となったのが、6月1日でした。その日、共和党議員で議会最高位である、ポール・ライアン下院議長のトランプ氏を支持することを表明したのです。
当初、共和党主流派とトランプ氏の溝は大きいものでした。トランプ氏がそれまで政治に関わってこなかったという経歴の問題もありますが、何より共和党議員が好む「財政赤字削減」という大きな目標と、トランプ氏が掲げる財政支出を伴う「バラマキ」との間には大きな距離がありました。特に、ライアン氏にとってこの「財政赤字削減」という目標はとりわけ重要なものでした。
しかし、その後、両者の間に妥協が見られます。5月12日、ライアン氏とトランプ氏は話し合いの場を持ち、反クリントンの姿勢を示す共同声明を出しました。 さらにトランプ氏は大統領に任命権のある最高裁判事候補者として共和党が好む保守系の人を挙げるなど保守派への配慮を示しました。 そして、ついに、6月1日ライアン氏はトランプ氏の支持を表明しました。
ライアン氏の動きはここで終わりません。6月7日、国防から経済までまたがる共和党下院議員共通マニフェスト『A Better Way – Our Vision For A Confident America -』を発表しました。参議院選挙も迫り連日各党の政策を耳にする日本からすれば当たり前のことのように見えますが、実はアメリカでは政党単位の公約集というのはほとんど例がありません。アメリカでは政党の議員に対する拘束が非常に緩く、同じ法案への賛否でも党内で意見が割れることはよくあります。今回の共通マニフェストも、実に1994年以来とされています。トランプ氏の脅威に対する危機感が、イデオロギー上バラバラだった共和党下院議員を一つにまとめたと言って良いでしょう。
このマニフェストは、大きくオバマ政権の8年への批判と、福祉予算の削減など共和党の従来の主張を織り交ぜたものとからなっています。ここで問題になるのは、トランプ氏は「バラマキ」を支持しているが、このマニフェストはそれを批判しているという点です。仮に、トランプ氏とライアン氏の連合が成功して、大統領選でトランプが勝ち、同時に行われる下院議員選挙で共和党が多数派を占めたとしても、両者の間には政策的な対立が生じるでしょう。特にアメリカでは三権分立が徹底されているため、大統領と議会とは相互に口出しできません。そのため、トランプ氏とライアン氏が今後どう譲歩するのかが問題になってきます。
また、トランプ氏が台頭した背景に、従来の共和党議員への批判があったという点を忘れてはなりません。今回、アメリカでは珍しく共通マニフェストが発表されましたが、その内容はとりわけ新しいものではありません。共和党議員が失った信頼を取り戻せるのか。今回のマニフェスト発表は信頼を取り戻すのに十分なものであるのか。そこも問題になってきます。
いずれにせよ、共和党主流派の進む道は今後ますます困難なものとなるでしょう。大統領選挙もさることながら、トランプ氏と共和党主流派との綱引きも要注目です。
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