11月8日に迫ったアメリカ大統領選挙ですが、日本では政治家になる人物に「品行方正さ」や「清廉潔白さ」を求める文化があります。一方、アメリカでは「ユーモア」の感覚はとても重要だとされています。政治家は、テレビ番組に出演した際にも、自身のユーモアセンスを示さなければいけません。
そのため、アメリカではYouTubeなどの動画サイトを使い、候補者自身のユーモアを伝えようとする「オモシロ動画」が満載。中には「PPAP」並にバズっているものもあります。代表的なものを見てみましょう。
まずは、民主党大統領候補ヒラリー・クリントン氏から。
最初に紹介するのは、NBCが誇るコメディ番組Saturday Night Liveに出演した際の動画です。
ケイト・マッキノン扮する偽ヒラリー氏が、本物のヒラリー氏に対して、長年の愚痴を語るというスタイル。
バーテンダー役のヒラリー氏は、偽ヒラリー氏が語る愚痴(ヒラリー氏本人に対する政治的な批判ともとれる)に笑顔を浮かべながらアドバイスを加えます。好感度が低いと言われるヒラリー氏が、自虐ネタを交えながら演技を続ける姿が有権者にハマり、バズりました。
次に紹介するのは、ABCの深夜コメディ番組Jimmy Kimmel Live!です。
この番組では、時折、子供を相手にまじめな質問をするというコーナーを設けています。
今回は、司会のジミー・キンメル氏が、4人の子供たちと一緒に「女性の大統領」について話し合う日。
「女の人が大統領になったら、ホワイトハウスがピンクに塗られちゃうかも」など、激論が交わされる中、子供たちの目の前に、ヒラリー氏が現れます。
司会の「何かしてほしいことがあったらヒラリーさんにお願いしてみよう」という質問に対して、子供たちからは「学校なくしてほしい」「レストランでタダでご飯が食べたい!」「おもちゃをタダで買えるようにして欲しい」などの意見が噴出。
大統領候補には、子供の意見を聞く能力も必要とされるようです。
続いて、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏を見てみましょう。
トランプ氏が出演したのは人気ナンバーワンのテレビ番組、The Tonight Show Starring Jimmy Fallonです。
司会のジミー・ファロン氏が、トランプ氏に扮して登場。
本番前、楽屋に座るトランプ氏が鏡に向かってインタビューの予行練習をする、という設定です。
自分大好き、誰よりも偉大な俺最高!なトランプ氏をおちょくる司会に対し、トランプ氏は台本通りセリフを話しています。
自分のことがネタにされても、動ぜずコメディ番組に出演する度胸。こんな要素も、大統領候補に求められているのかもしれません。
最後に見るのは、政治風刺コメディアンのスティーブン・コルベア氏が司会を務めるThe Late Show with Stephen Colbertです。
リベラルな視点から政治を斬るコルベア氏は、トランプ氏へのインタビュー中も厳しい姿勢を貫きます。
「トランプさん。誰かに対して謝りたいことはありませんか?」という挑発的な質問を仕掛けたり、メキシコ国境に建設するという万里の長城について突っ込んだ質問をするコルベア氏。
トランプ氏は、自身の政策を語り続けることでなんとか乗り切ろうとします。
コメディ番組への出演とはいえ、政策の議論なくして大統領候補はつとまりません。
大統領候補には、司会者が投げかける厳しい質問に、その場でこたえられるような知性も必要とされています。
ここまで4つの動画を見てきましたが、アメリカにはユーモアを交えた鋭い批判、批評をする文化があることが分かるかと思います。
当意即妙な受け答えのできる人物を過剰にもてはやしてしまう可能性があるという懸念点はあるものの、「政治家は討論番組に出演してさえいれば良い」かのような日本の政治文化とは一味違ったアメリカの様子を知ることは、日本の政治文化を考えるうえでも意味があるのではないでしょうか。
大統領選挙は残すところあと数日。最終盤に入った4年に1度の政治イベントを、YouTubeで観戦すると、面白いことが見えてくるかもしれません。
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