おおさか維新の会が今夏の参院選に渡辺喜美氏を公認候補として擁立すると発表しました。渡辺氏といえばみんなの党を立ち上げ、一定の勢力に育て上げた元祖「第三極」の生みの親。渡辺氏の維新入りは第三極復活の契機となるでしょうか。

地盤を継いで初当選。一匹オオカミから行政改革担当相へ

渡辺氏は「ミッチー」の愛称で知られた渡辺美智雄元副総理の長男。早稲田大学と中央大学を卒業後、美智雄氏の秘書を務めていましたが、美智雄氏が急死したことから地盤を継いで1996年の衆院選に立候補。自民党の公認候補として栃木3区で初当選しました。かつて父親が率いた派閥を早々に離脱し、一匹オオカミとしてふるまっていた渡辺氏が急速に知名度を上げたのは安倍内閣で行政改革担当相に就任してから。テレビ等で過激な官僚批判を繰り返し、一気にお茶の間で注目される政治家となりました。

渡辺氏は2008年に行政改革担当相を退任すると、公務員制度改革に及び腰な政府・与党への批判を強めます。そして麻生政権だった2009年1月に自民党を離党。無所属だった江田憲司氏や民主党にいた浅尾慶一郎氏らとともに、同年8月にみんなの党を設立しました。

みんなの党を結党。ねじれ国会でキャスティングボードを握る。

設立当時は麻生首相による衆議院の解散直後。結党から1か月足らずで衆院選を戦い、みんなの党は政党要件をギリギリ満たす5議席を確保しました。しかし、その2年後の参院選では10議席を獲得。一気に存在感を高めました。当時は自民党と民主党の間で政権が揺れ動き、衆参両院で第一党が異なる「ねじれ国会」が常態化。そのため、参院で10議席超を抱えるみんなの党が「キャスティングボード」を握り、法案の成否の行方を決める重要な役割を果たしたのです。それに加えて渡辺氏と江田氏という2枚看板の発信力、みんなの党という党名のソフトなイメージも作用して支持率を急速に伸ばしました。

維新の登場でみんなの党は失速。内部分裂も起こり、解党。

飛ぶ鳥を落とす勢いだったみんなの党が失速したのは、まさに今回入党した「維新」の登場が原因です。渡辺氏よりさらに発信力の高い橋下徹氏率いる大阪維新の会が大阪都構想実現に向けて、国政政党を立ち上げると表明。2012年に日本維新の会を設立すると、マスコミの目は一気に維新に移りました。

維新の会とみんなの党は行財政改革や道州制の導入など政策に共通点が多く、当初はいずれ合流するとの見方もありました。しかし、維新が石原慎太郎氏率いる「太陽の党」と合流したことから、渡辺氏は次第に維新と距離を取るようになり、さらに橋下氏が「従軍慰安婦」発言で批判を受けると、渡辺氏は維新とのパイプを断ち切ってしまいました。

勢いに陰りの見えたみんなの党では内部対立が激化。渡辺派と江田派に分かれて激しく対立し、最終的に江田氏らが離党します。

金銭疑惑、無所属で出馬するも落選

対立の余波を受けて2014年には渡辺氏に金銭疑惑が浮上。渡辺氏は代表の座を浅尾氏に譲りますが、党内の動揺は収まらず、浅尾氏は解党を決断。2014年11月にわずか5年の歴史を閉じました。解党直後の衆院選に渡辺氏は無所属として立候補しましたが、自民党候補に敗北。無所属だったため比例復活もなく、初めて落選しました。当初は政界引退も検討しましたが、野党再編の動きを見る中で参院選への立候補を決意。今回の維新入りとなりました。

安倍首相とのパイプとして維新で活躍か

かつて合流話が破談となった経緯から維新側には反対意見もありましたが、松井一郎代表が「渡辺氏の経験は得難い」と押し切りました。渡辺氏はかつて安倍首相の閣僚を務めていることから、渡辺氏を取り込むことで首相とのパイプをさらに強くしようという狙いがあるようです。橋下氏に代わる「顔役」への期待もあるでしょう。
渡辺氏が維新でどんな役割を担うのか、注目したいと思います。