育休議員の「不倫辞職」など、毎週のように週刊誌をにぎわしている政治家(候補)の女性スキャンダル。週刊新潮が3月31日号で報じたのは長崎幸太郎衆議院議員の「カネとオンナ」の疑惑です。実はこの長崎議員、無所属ながら自民党の二階派所属という不思議な肩書。背景には泥沼の「公認争い」があります。
週刊新潮によると今年3月、長崎氏の疑惑を告発する手紙が安倍晋三首相や二階俊博自民党総務会長、地元の地方議員らに届けられました。送り主は長崎氏の元有力後援者。中には秘書との不倫や風俗店通い、違法な資金提供などの疑惑が事細かにつづられていたほか、「二階氏はカネに汚い」といった長崎氏による二階氏への悪口も書かれていました。
長崎氏といえば東大法学部を卒業後、大蔵省(現財務省)に進んだ超エリート。2005年の郵政選挙で、造反した堀内光雄元総務会長の刺客として自民党から山梨2区に立候補。小選挙区では敗れたものの、比例南関東ブロックで復活当選して政治家デビューを果たしています。
自民党では郵政解散の陣頭指揮を執った二階氏の派閥に所属。しかし、堀内氏が2006年に復党すると、2009年の衆院選では有力者である堀内氏に自民党公認を奪い返されます。長崎氏は仕方なく無所属で立候補しましたが、2009年は自民党に逆風が吹いた「政権交代選挙」。保守分裂で両氏とも落選し、民主党の新人候補が漁夫の利をさらいました。
堀内氏は落選を機に引退しましたが、これで終わらないのが政界の怖さ。堀内氏は息子の嫁である堀内詔子氏を後継とし、自民党公認の座を死守します。2012年、2014年の総選挙ではいずれも長崎氏が勝利しましたが、詔子氏も比例復活で2回連続当選しました。
堀内家は、地元を代表する「富士急グループ」のオーナー家。鉄道やバス、遊園地「富士急ハイランド」などを運営し、光雄氏の祖父の代から衆院議員を務める地元の名士として知られています。
しかし、有力企業であるがゆえに「敵が多い」(長崎氏関係者)のも現実。長崎氏が初めて立候補して以降、自民党員の多くが長崎氏側に回り、保守分裂のきっかけとなりました。長崎氏と堀内家との間では、今も激しい公認争いが続いています。
永田町では小選挙区で2回連続敗退した場合、次期選挙で公認候補となる「支部長」の差し替えを検討する決まり。通常は比例で復活当選していれば現職を優先しますが、今回のような激しい争いがある場合は別で、3月はまさに新支部長を決定する時期でした。
そんな折に長崎氏の元有力後援者が、長崎氏の疑惑を暴露する告発文を送りつけたのです。告発者の陰に、堀内家の匂いを嗅ぎつけた人は少なくありません。そしてさらに、派閥間の争いが混乱に拍車をかけているのです。
長崎氏は初当選の際、二階氏の派閥に所属。落選を経て衆院議員に復帰した後は堀内詔子氏の存在から自民党には入れなかったものの、二階氏が派閥の「特別会員」として囲い込んでいます。
二階氏は元々、旧保守新党の出身議員らで二階グループ(その後二階派・新しい波)を結成していましたが、2009年の衆院選で大半が落選。伊吹文明氏率いる伊吹派(志水会)と合流し、伊吹氏の衆院議長就任を機に、志水会の会長に就いたために現在の二階派となりました。一時は3人の小所帯だった二階派は、今や約35人まで拡大しています。
自民党の「一強多弱」体制では、派閥の大きさが力の源泉。二階派はさらに影響力を拡大しようとしてか、長崎氏以外にも3人の無所属議員を囲い込んでいます。2013年に民主党を離党した山口壮元外務副大臣もその一人。山口氏は二階氏の猛プッシュにより、自民党入り目前と言われています。
一方の堀内氏は、岸田文雄外相率いる名門・宏池会。義父の光雄氏はかつて宏池会の会長も務めました。しかし、第三派閥である岸田派と、二階派の所属議員の差はわずか数人。その差は縮まりつつあります。
二階派は宮崎氏の辞職で一人メンバーを減らしましたが、二階氏の「剛腕」によって、これからどこまで人数を伸ばすのか。ポスト安倍を占ううえでも注目です。
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