TOKYO MX「モーニングCROSS」で、西田亮介氏(東京工業大学准教授/社会学者)が18歳選挙権や、それに伴った政府の動き、国民全体に普及していない政治への理解について語りました。
政府は18歳選挙権スタートに向けて、投票しやすい仕組み作りを行っており、それにともない法改正や体制の改善を実施しています。今回の改正は大きく分けると下記の3つの分けられます
① 投票場所の増加
② 投票時間の延長
③ 投票権利が得られない事態の防止
今までは、選挙当日の投票所は校区など各地域に1ヶ所しか設置できませんでした。しかし、改正案では各自治体の判断でショッピングセンターや駅前の商業施設に投票所を創設できるようになっています。また、期日前投票所の投票時間も、現在の午前8時半から午後8時をこちらも自治体の判断で、午前6時半から午後10時まで広げることができるようにするとのことです。
こう考えてみると、今まで何故投票所は地域に1箇所しかなかったのか、午前8時から午後8時といった何とも投票のしづらい時間しか投票できなかったのか、など疑問も湧いてきます。今回の改正で期日前投票は休みの人だけではなく、昼夜仕事をしている人の投票を促すものでもあり、朝早くに出勤するかたもいれば、夜遅くまで働く人もいますので、最大限に対応できるようになったのことは素晴らしいことです。
さらに、春の進学や就職に伴う転居によって投票する権利が得られないケースを防ぐため、古い住所に3ヶ月以上住んでいれば古い住所での選挙区で投票可能にするといった施策も実施されます。この結果でも旧住所になってしまいますが、投票自体は出来るので、不在者投票の仕組みなどを効果的に使いましょう。
出典:Logmi記事
西田氏は今回の公職選挙法の改正を総じて評価できるものだと、言ったうえで本質的な解決には結びついていないと指摘しています。
西田氏は投票年齢の引き下げが行われても10代のライフスタイルは20代とあまり変わらない事から、20代と近い投票率になる予想しています。そのため、今回の改正にとどまらないさらに長期的な視点での投票率を増やす試みについて考える必要があるとし、それを考えるうえで注目したのが、「投票に行くモチベーション」についてと語っています。アイドルによる普及活動など表層的なものではない、本質的な投票に行くモチベーションについて考えていく必要があります。
出典:Logmi記事
明るい選挙推進協会が2015年夏に若い世代対象に行った調査結果によると、投票年齢引き下げについてはほとんどの人が知っているもののその意義については理解が進んでいないという事です。事実は知っているが、その背景や意味を学ぶ機会も考える機会もないという事です。その結果、なぜ投票に行かなければならないのか、当の世代によく理解されていないということです。
出典:Logmi記事
明るい選挙推進協会のデータで、政治をどのように学んだのかがわかります。一番多いのが「国民主権や多数決などの民主主義の基本」や「選挙区制や選挙権年齢などの選挙のしくみ」など知識の習得です。ここは学校教育でカバーされていることがわかります。
この知識も自分で考えることではなく、空白を埋めるために単語を覚えるように記憶できるものが多いのが特徴です。
しかし一方で、最近話題になっているのが、下から2番目の「実際の選挙や架空の候補者による選挙での模擬投票」など、体感型の学習です。総務省や選挙管理委員会を始め、選挙政治に関する団体などが積極的に取り入れて、企画・運営していますが、アンケート結果は8パーセントにとどまってしまっています。
このデータをふまえ西田氏が指摘していることは、日本の社会には政治の手触り感がないこと。三権分立、民主主義については学ぶが、どこか他人行儀なところがあり、「アメリカで発展しました、イギリスで発展しました」のような話に終止しがちということが往々にしてあると指摘しています。
民主主義、政治の価値とは何なのか。それに対してどう思うのか。ということにある種の本質があり、教育の現場でも「憲法改正、是か非か?」といった踏み込んだ議論をやっていく必要があるのではないか、と西田氏は問題提起をし、最後に「具体的な問題から逃げない、そのために政治は教育できるだけ介入しないようにする、そのための制度の作り込みが大切だと思います。」と締めくくっています。
政治に対して、黒か白かといった正解を求める傾向にある、という見方もありますし、一方でそれは教育自体の問題でもあるとも言われています。ある一つのことで解決する問題ではなく、若者だけでなく、その周りにいる人達全体で考え、取り組んでいくべき問題なのかもしれません。
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