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政治に関心を持ってもらうには教育から。海外の政治教育を比較してみた。

2016/4/2

原口和徳

原口和徳

70年ぶりの選挙権年齢の拡大となる18歳選挙権の実現に向けて、各地で様々な取り組みが行われています。これまで選挙権がなく、政治的な発言権を持ちにくかった未成年にとって、自らの意思を社会に伝えていくための大きなチャンスとなります。

社会の構成員としての市民が備えるべき市民性を育成する教育である「シティズンシップ教育」の内、市民と政治とのかかわりを扱うものを「主権者教育」と呼びますが、日本における主権者教育の内容は、新たに選挙権を得る若者がその機会を活かすために十分な取り組みとなっているのでしょうか。これから、連載の機会をいただきながら、今後の主権者教育の改善の方向性を探っていきたいと思います。

海外との比較から考える18歳選挙権

18歳選挙権の実現にあたっては、他国の動向も影響を与えています。国立国会図書館の調査では、2008年の時点で調査対象の89.9%、170の国・地域で18歳選挙権が実現されていることが分かっています。さらに、ヨーロッパでは選挙権年齢のさらなる引き下げに向けた検討、取り組みが行われています。

例えば、オーストリアは2007年に国政レベルの選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げています。ドイツやノルウェー、スウェーデンでも、特定の自治体における選挙権年齢の引き下げが実現されています。ほかにも、スウェーデンでは2014年に実施された独立に関する国民投票で16歳への選挙権年齢の引き下げが行われています。これらの国々では、投票権の付与に伴う学校教育や選挙キャンペーンを通して、生徒たちの政治的成熟度が向上することが示されたといった報告もなされています。

選挙権年齢、被選挙権年齢、投票率等

対象を絞ってさらに検討してみましょう。

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図表1はG8を中心に各国の選挙権年齢、被選挙権年齢、投票率等をまとめたものです。選挙権年齢については、ほとんどの国で18歳以下であることが分かります。一方、被選挙権年齢にはばらつきがあり、選挙権年齢ほど日本と他国の水準が離れていないことが分かります。

投票率は直近の国政選挙、二院制の国では下院(日本では衆議院)の投票率をまとめています。年齢別の比較ではないことに注意しておきたいと思いますが、一見すると、日本の投票率が飛び抜けて低いわけではないことがわかります。なお、G8のなかで特に投票率の高いイタリアは、義務投票(罰則無し)となっています。

それでは、ここから投票率の高い国にも注目しながら、各国の主権者教育について特徴的な取り組みを見ていきましょう。

他国の取り組みから探る主権者教育のポイント①「18歳のエンパワーメント」

18歳が社会で果たすことのできる権利やそのための能力を得るための取り組みに積極的なのが、投票率の高かったスウェーデンとオランダです。詳細は、図表2にまとめていますが、若者が全国的な組織を結成し、自ら社会的な権利を得るための活動やそのためのトレーニングを行っています。また、これらの活動には、様々な形で国からの財政的な支援が行われています。

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加えて、スウェーデンでは、「学校民主主義」として生徒の代表が予算や科目編成など、学校運営の主要事項を決定する会議に参加しています。この活動に参加するための授業や外部人材によるサポートが用意されているのも特徴的です。

日本では、かつての政治紛争に端を発し、生徒会組織などの連携には制限がありましたが、意欲的に取り組む事例も芽生えてきています。これらの活動が今後、どのような局面を迎えていくのかが注目されます。

他国の取り組みから探る主権者教育のポイント②「多様な主体による支援」

若者の政治参加を考える上では、投票率に加えて、投票の質も重要な要素になります。図表3に特徴的な事例を掲載していますが、詳しく確認してみましょう。

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アメリカでは、先生方が政策争点を扱いやすくするために、具体的な争点に対する基礎知識、賛成/反対それぞれの主張をまとめた記事を定期的に配信するサービスを大学の付属機関が行っています。

韓国では、シティズンシップ教育のための教材作成や教員向けトレーニング、webサイトを通じた情報発信などを選挙管理員会が行っています。選挙管理員会の研修機関が行う市民教育の研修には、約122万人(2009年)、約138万人(2010年)の参加があったとの報告もあります。

イギリスではNPOによるシティズンシップ教育支援団体による授業で使える資料の作成やリンク集の案内、議会下院が議会の仕組みや選挙の仕組みをわかりやすく伝える動画を作成、配信しています。

紙幅の都合でこれ以上紹介できないのが残念ですが、上記の国ではほかにも様々なサービスが存在していますし、ドイツの政治教育センターのように日本でよく報告されている事例に加え、ほかの国や地域でも興味深い取り組みが行われています。

このように、学校関係者だけでない多様な主体によって授業を行う上ですぐ使える具体的な支援が複数提供されていることが、他国における主権者教育の特徴として言えます。

次回の記事では、模擬選挙を題材にほかの国の取り組みをさらに詳しく確認してみましょう。

※次回更新は4月16日を予定しております

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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