政治家を輩出する学校は大学の政治系学部だけではありません。全寮制の4年制学校松下政経塾は以前も紹介しましたが、それだけではありません。今回は地方議員が政治を学ぶ場「富士政治大学校」を紹介します。
富士政治大学校は公益社団法人富士社会教育センターが設置した政治家養成を目的とする教育機関です。公式ホームページによると開校は1969年。旧民社党第2代委員長の西村栄一氏が初代学長でした。西村氏は1953年、吉田茂首相(当時)と質疑で激しくやり合い「バカヤロー解散」のきっかけとなった人物です。神奈川県座間市の松橋淳郎市議会議員によると、一説には、昭和40年代の共産主義の台頭に反対するアメリカ中央情報局(CIA)の支援で設置されたとも言われているとのことです。
入学時に議会活動、政策活動、政治活動、選挙活動の各コースを選択して各課程に臨みます。
新人地方議員を対象とした政治専科では年3回、2泊3日の集中講座の中で、議会、政策や政治活動のあり方を聴講。政治専科の卒業生や2期目以上の地方議員は政策研究科に入り、年1回の集中講座に取り組みます。両過程とも、会場は本部がある静岡県御殿場市で受講者はブログなどで活動紹介しています。
卒業生組織の「高志会」会員は定期的に集まり地域活性化セミナーを開催するなどしています。卒業生には無料で地方議会制度のあり方などを説く「自治レポート」を配布しています。
大学校の事業とは別ですが、富士社会教育センターは地方議員向けに地方自治のあり方を説いた「地方議員必携政策ハンドブック」を出版、販売しています。これは全国町村議会議長会が発行し、地方議会の議事運営に欠かせないバイブル「議員必携」とは異なるものです。
初代学長の西村氏は旧民社党の第2代委員長。民社党は労働組合を支持母体に持っていました。その流れをくみ、今も「労働運動・組合活動の活性化に役立つ総合的な教育活動」を志向しています。この教育を現在の政党に照らし合わせると、労働組合を支持母体に持つ議員が多い民主党寄り?!にもみえます。松下政経塾が自民、民主両党に国会議員を輩出し、主義主張もさまざまなのとは対照的です。
学校での集中講義の際、食事前には西村氏の教えを整理した「三訓五戒」を唱和するのがならわしで、この教えを学生は大事にしているようです。
三訓
・己れを捨てよ
・反省を忘れな
・最後までねばれ
五戒
・時間を守れ
・言訳をするな
・愚痴をこぼすな
・陰口をつつしめ
・けじめをつけよ
(以上原文ママ)
正式なOB名簿は公になっていませんが、富士政治大学校出身の国会議員は現在いないようです。地方議員にOBは多く、愛知県岡崎市議会の井町圭孝議員が2015年11月に政治専科を受講していることを紹介しています。
神奈川県伊勢原市の相馬よしゆき市議会議員もブログで活動報告しています。民主党公式ページには東京都立石市の大石富巳夫市議会議員が在学していたことを明記するなど、入学していることを公表している地方議員は数多く存在しています。
OBに国会議員がいない理由は、そもそも入学者に地方議員が多かったり、労働組合や連合を地盤とする国会議員が今の時代に主流ではないことなどが考えられます。
地方議員から国会議員にステップアップした人は全国会議員の3割にのぼります。富士政治大学校のような政治家養成機関を利用し、地盤とともに政治の視野を広げることも国会議員になるきっかけになるのかもしれません。
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