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日本が戦後初めて「借金」を決めた日から50年…歴史で振り返る赤字国債 (永田町の洗礼を受ける22歳⑨)

2015/11/19

ゴリ(仮名)

ゴリ(仮名)

1965年11月19日、佐藤栄作内閣は戦後初の赤字国債発行を閣議決定しました。

それまで均衡財政を貫いてきた日本が大きな転換期を迎えてから今日でちょうど50年を迎えます。そこで今回は、当時の国会議員の発言から赤字国債の始まりと現状を振り返りたいと思います。

1965年11月22日の「官報」

1965年11月22日の「官報」

「経済成長はまことに望ましいことだが…」

閣議決定前の10月16日、衆議院本会議で日本社会党(当時野党第一党)の原茂議員は、「日本経済は、まことに皮肉なことに、佐藤内閣の発足と期を一にいたしまして停滞を見せ始め」と昭和40年不況に触れたうえで、「公債発行を、いまや既定の事実として強行しようといたしておるのであります」と政府を批判。(同党の安井吉典が「国はいま公債政策というのでありますが、地方債の現在高はすでに1兆円を上回っているのであります」と指摘しているように、国債以外の公債は発行されていました。)

首相官邸ホームページより

首相官邸ホームページより佐藤栄作首相

これに対して佐藤栄作首相は「経済成長はまことに望ましいことだが、そのもたらした欠点のほうが今日は非常に大きく出ておる。これをなくしよう、こういうことで最善の努力を払っておるのであります」と答弁。池田前内閣の高度経済成長政策の負の側面が前面に出てきたことを認めたうえで、それに対処するための赤字国債発行に理解を求めています。

いずれにしても、高度経済成長政策の行き過ぎによる昭和40年不況(東京オリンピック後に需要が減少し、企業は過剰在庫をかかえてしまう)が原因となり赤字国債の道を歩むことになったのだと理解できます。

「時代が要求しておる転換である」

福田赳夫(Wikipedia)

ウィキペディアより福田赳夫大臣

「昭和四十年度一般会計予算補正」の閣議決定後、12月20日の衆議院本会議では、福田赳夫大蔵大臣が補正予算の説明をしています。

均衡財政を堅持してきたことの意義を認めたうえで、「時代が要求しておる転換である」、「国の経済の安定ということを考える場合に、企業と家庭の経済の安定、これを考える以外にはないのであります。(中略)企業と家庭の借金を背負って立つぐらいの気概をもって財政を運営すべきときにきておる」と述べ、「積極的な対策」(佐藤首相)であることを重ねて強調しています。

戦時中に軍事公債がインフレを招いたことから、野党の指摘はインフレ懸念に集中していました。この日の質問でも、日本社会党の野口忠夫議員は「軍事公債の発行が(中略)大きなインフレ破綻に日本経済を突き上げた」ことを指摘。
これに対して福田大臣は「戦争がインフレを起こしたのであって、公債じゃない」と反論するなど、公債発行に歯止めをかける(①財政規模を適正に判断、②建設目的に限定、③日銀引き受け方式はとらない)ことでインフレには陥らないと答弁しています。

「国債の発行が雪だるま式に大きくなって…」

12月22日の大蔵委員会では、日本社会党の武藤山治議員が「国債の発行が雪だるま式に大きくなっていって何ら支障ないというのんきな判断で、一体国民が信頼するだろうか、安心するだろうか」などと詰め寄ります。

これに対して福田大臣は、根拠となる数字を示したうえで「7年後に2600億円程度の償還、これはそう問題にするに足らないのじゃないかというふうに考えておるわけであります」と答弁。償還返却表で示した通り、7年先に償還することができると自信を示しました。

「出口戦略を議論するのは時期尚早だと思います」

このように表面上の議論では、昭和40年不況への一時的な対策だったはずの赤字国債ですが、紆余曲折を経て(ここが重要?)、現在は財政の半分を国債で賄っています。

黒田東彦(Wikipedia)

ウィキペディアより黒田日銀総裁

繰り返しになりますが、日本が赤字国債の道を選んでから今日で50年を迎えます。今年1月の衆議院予算委員会で、民主党の階猛議員が「異常な金融緩和、異常な国債の大量購入の出口戦略」について問うと、黒田東彦日銀総裁は「現在は2%の(物価安定)目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を払っているところでありまして、出口戦略を議論するのは時期尚早だと思います」と答弁しています。

現在のところ、国債大量購入の出口は見えていません。

公債残高の累増

財務省サイト「公債残高の累増」より

-参考資料-
「官報」(昭和40年10月16日、同年12月22日)
「大蔵委員会議録」(昭和40年12月22日)
「予算委員会議録」(平成27年1月29日)
「公債残高の累計」(財務省HP:
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/004.htm
『国債累増をめぐる諸問題』(財政金融調査室渡瀬義男、レファレンス平成21年6月号)

 

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ゴリ(仮名)

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1992年生まれの新米秘書。国立大卒。ジャーナリストを目指しつつ政治の世界で奮闘中。“22歳の議員秘書にしか書けない政治”で、選挙をオモシロクしたい。ご意見は @POLILLA_s まで。(※特定の人物・団体が、恩恵または損害を被る記事は絶対に書きません。実名は非公表とさせて頂きます。)

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