前回のインタビューで、「通過した安保法案の廃案に向けて動き出すことを決めた」と語ったSEALDs KANSAIの脇田燦志朗さん(23)。いよいよ、今回は大阪ダブル選挙での活動内容や、方針を固めた過程について聞きました。
——大阪W選挙について、活動しようと決めたのはいつですか?
安保が一旦終わって、W選がある、と気づきました。僕たちは法案には反対してきたけれども、そもそもは、いまこの国の自由と民主主義が危機にあるため、自由と民主主義を守るために緊急的に始まった活動がきっかけでした。だから、関東だけでやるのではなくて、関西、東海、琉球、東北、各地でシールズが立ち上がっているのは、各地で自由と民主主義を求めるためというのが根本にはある。
関東の国会だけに焦点を当てていればいいのであれば、「関西」という名前をつけてわざわざ立ち上げる必要はありませんでした。関西のメンバーと話し合う中で、関西で起こっている問題があるのであれば、それについて声を上げなければ関西で立ち上がっている意味がないのでは、ということになりました。
——「反維新」という立場をとるまでの過程、すんなりいきましたか?
これについては、正直、悩みに悩みました。シールズ関西のメンバーは、イコール大阪ではなくて和歌山・奈良・京都などバラバラです。関西の大学に来ているけど、高校までは福島だったという子、別の場所から来ている子もいます。大阪の政治をしっかり意識している人ばかりではない。僕は兵庫出身ですが震災があって、大阪に移りました。高校時代を大阪で過ごしていたので、なんとなくその政治の中に暮らしてきたけれど、なんとなくというのではなくて、関わるのなら間違った情報はながしてはいけない。だから、必死に勉強しました。
僕を含めて3人のメンバーが、新聞各紙を読んだり、本を読んだり、ネットで検索しながら資料を作り、メンバーが集まるときに提案して、そのとき集まったメンバーに資料を配って説明をしました。レジュメは、A4・5ページくらい。メンバーからは「もっと具体的にはどんなことがあったのか」「他の事例は」などたくさんの質問が上がるなかで、「 僕たちは現政権に否定的な立場を取っているのに、 今の結論は自民党を推しているような捉え方されるのではないか」という声も上がり、議論を重ねました。
僕らの方向性が決まりかけると、安倍さんも自民の候補者に推薦状を出す、握手をする。すると、その度にメンバーも揺れる。もう、いろんな葛藤があり、リスクがあるから、「声をあげなくてもいいのでは」という意見も出ました。
でも、ここでおかしいと思えることが起こっているときに声をあげられないなら、民主主義のために立ちあがったとは言えない。おかしいことがあるなら、声をあげていくことが大切だ、8年間の政治に見直すべきところがあるから、見直しを求めるべきだと結論を出しました。
方向性が決まるまでに3〜4時間の審議が数十回行われました。審議に審議を重ねた上で、出た結論だから、「なぜ自民を推すのか」という批判は想定内です。
——「おかしい」「見直すべきだ」という根拠は?
そもそも、僕たちのデモや街宣に関して、「選挙が全てだ」と批判していた橋下徹市長が、大阪都構想については、住民投票が行われて決まった結果なのに、その選挙の結果を反映させないのか、という疑問の声は自然とあがりました。
僕たちとしては、選挙が全ての民意というわけではないので、もう一度民意を問うことが悪いことだとは言わないが、あれだけ豪語していた人が、選挙の結果を無しにするというのは筋が通らないという意見があったし、あのときの住民投票で使われた税金も何十億にも上ります。そのお金、もっと他に使えたんじゃないの?って。
それで、勉強してみると橋本市長が府知事時代、「3年連続定員割れした高校は廃校する」とする教育基本条例案が可決されていました。でも、それって定員割れ=人気がない=必要がない、につながるのでしょうか。
府教委と大阪市教委は18年春入試までに府立と市立を合わせて7校程度の募集停止に踏み切る方針だと報道がありました。既に池田北高と咲洲高の府立2校が決まっており、残る5校の選定作業が進んでいます。3年連続で定員を満たさず、廃校対象になっている能勢高校は、人口3万人の田舎町にあるたったひとつの高校です。住民らからは「地元の子たちの進学先がなくなってしまう」との声も上がっています。経済的な事情などいろいろな事情で地元の学校にしか行けない人たちは学校に行けなくなる。教育を受ける権利さえなくなる。それはおかしくないですか。それをするぐらいなら、他にもっとけずるべきものあるんじゃないかと思うんです。
また、「大阪都構想」の制度設計を協議する大阪府・大阪市特別区設置協議会において、「大阪市特別区設置協定書」(都構想の設計図)案の採決を強行するため、大阪維新は自陣営以外の会派を排除しました。重要なことであればあるほど、急がずにしっかりと審議していくことが大切であるというのは一般的に当然のことです。その方法がとられていると知ったときに、「あれ、声を排除する、この手段って今の政権と似てないか?」って気づいたんです。国会でも、専門家の学者の声を聞かない、元最高裁判事の声を聞かない、数の力で押し切る、国会前の集まりも無視。福島原発の事故が収束していないのに、オリンピックをする、とか。
見なくちゃいけないこと見てるのかって。そういうことが、リンクするようになりました。より現政権と近い政治をしているのは、大阪の自民党よりも、これまでの大阪維新の政治の方が近いんじゃないかって。そして、(前知事の)松井さんが「私たちの考えと現政権の考えには近いものがある」と発言をし、自ら現政権と近いと認めてしまいました。僕らは、個々の政党を批判しているわけではなく、現政権の非民主的な政策や議会運営を批判してきました。そこで見直すべきことは、確信的になりました。
——今回、共産党が自民党の候補を支援する立場を取っています。どう評価していますか?
別にいいんじゃないの?って感じです。共産党は、自民党の政治を評価しているわけではないと思います。スポーツだったら「これまでの監督良くなかったから、違う人に代わってもらいます」っていうスタンスを取るのは普通であって、これまでの政治は良くなかったから、まず代表を変えてみませんかっていうことと同じじゃないですか。
自民党とは相反する立場にある共産党が、自民党を支援しているというのは、それほど大阪維新の8年間の政治が良くなかったんじゃないかな。これまでの歴史を取っ払ってまで、手を組まないといけないことなんだろうなと受け止めています。選挙は票の数が最終的には物をいうので、100対99でも、100が通る。1票でも上をいった方が勝ち。99の民意でも、負けは負け。大阪維新の会のこれまでの政治を絶対に終わらせたい人たちにとって、戦術の一つとして手を組み、協力して票を集めるしかないありません。
「サザンのコンサートで決める方がよっぽどまし」「国民の何%なんだよ、反対してるのは。デモなんかで政治が決められていたらそれこそ民主主義の破壊だよ」と発言してしまうような人(橋下徹市長)の姿勢をみれば、人の意見は全然聞き入れる気はないのかなと思ってしまいます。政策は異なっても、議論に応じてくれる人を選ぶ方がまだまし。大きな目的を達成してから、議論をしようという立場なのかな、と理解しています。そのやり方が嫌なら、有権者が投票で選べばいいのでは。僕一個人としては、だから「別にいいんじゃないの」という感じです。
——シールズは既成政党との距離を大事にしているように見えます。実際は?
街宣車を特定の政党から借りていると批判されました。実際は、必要な時々で「貸してくれる」というところから借りています。特別な政党と繋がりがあるわけではありません。そもそも街宣車だって、政党からかりるしか他にない。学生とか、個人的に街宣車持ってますっていう人います?生活に必要ないし、街宣車買うくらいなら普通の車買いませんか?個人的に貸してくれるところ、知ってるなら教えてください。借りようと思って借りれるなら借りたいです。
政党への支持もメンバーそれぞれ違うし、護憲派とレッテル貼られるけど、それもメンバーそれぞれです。よく「左翼」といわれるけど、それにも抵抗があります。右か左という考えがよく分かりません。「それおかしいんじゃない」っていったら左翼ですか?おかしいと思ったときに、議論しようとしたら左翼なの?って。逆に、「なんでもいいんじゃない」っていってたらあなた右翼なの?「排除するの良くないよ」っていったら左翼って。いつも選択肢は2つしか用意してくれません。物の見方がいつも一方通行。本当は選択肢なんていくらでもあるのに。
確かに勝ち負けは選挙で決まるけど、 政治のアプローチは選挙だけじゃないと思います。何か社会的な問題があるとき、もし自分の身に起きたら、自分の大切な人の身に起きたら、って想像して話すだけでもっと世界は変わると思う。人の立場に立って想像できる人が社会にもっと多く必要だと思います。
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