先月に引き続き、全国各地で執行された10月中の地方選挙をまとめてみました。
10月の都道府県議会議員選挙から市町村議会議員選挙(補欠選挙も含む)まで合わせて、執行選挙総数は65件でした。そのうち、前回2011年度(一部2013年度)の選挙と比べ、投票率がアップした選挙は以下の11件です。
このうち、2桁台の上昇があった選挙は廿日市市長選挙の12.27ポイントと、橿原市長選挙の13.77ポイント。
廿日市市長選挙は現職に新人3名が挑んだ構図となり、4人が立候補するのは1974年の旧廿日市町長選挙以来41年ぶりという事が投票率アップの要因のひとつと見られています。
一方の橿原市長選挙では前回の投票率が29.02%と過去最低となりましたが、これは現職に対抗する立候補者の出馬表明が大幅に遅れ、実質、現職市長の信任投票に近いものだったことが一因と思われます。(2011年度の橿原市長選挙はこちら)今回の市長では40%台と、前々回の投票率に近い数値に「回復」した形となりました。
その他の選挙も、いくつかピックアップして見てみましょう。
今回の注目は、小牧市と所沢市の2つの選挙で、両市とも住民投票が行われるなど、地域の課題と選挙が密接に関わっていました。
小牧市議会議員選挙では、投開票と同日、TSUTAYAと提携した私立図書館建設の是非を巡る住民投票も行われ、結果は賛成24,981票、反対32,352票で否決され投票率は50.38%でした。市議選も投票率50.42%となり前回より3.31ポイント上昇しました。相乗効果により注目度が高まった結果だと思われます。
所沢市長選挙も前回選挙より投票率が2.61ポイントアップしました。今年2月に行われた市の住民投票では、航空自衛隊入間基地の騒音軽減対策として整備された小中学校の防音校舎に、エアコンを設置すべきか否かが問われました。
投票結果は賛成多数となりましたが、そもそも投票率が低く、市条例で定める「多数票が投票資格者の3分の1以上」に満たなかったため、投票結果が効力を持ちませんでした。当時の藤本市長(今回再選)のエアコン設置表明は2校のみ。また同市は「育休退園」で保護者から訴訟を起こされ、保護者側の申立てが認められるなど、有権者が市政の進め方に対して考える機会が多かった事が、市長選の投票率を押し上げる要因になったと思われます。
福岡県の粕屋町長選挙は、前回選挙に比べ6ポイントも投票率がアップしました。その要因と思われるのは「漬物」。
西日本新聞の記事によれば、町長が公共工事発注をめぐる議案採決に向けて、根回しのために反対派町議の自宅を訪れた際、手土産にお手製の白菜漬けを持参し、採決時の「退場」を迫ったというもの。町議会は真相究明に「百条委員会」を設置。町長は反対派町議とは旧知の仲で「ちょっと酸っぱくなったのが好き」と、漬物の好みも熟知していたといいます。
現金片手に訪問するようなきな臭い話ならいざしらず漬物ごときで、と言うなかれ。百条委員会の設置は、福岡市のベットタウンと化した粕屋町ならではの、新住民に対する旧住民町議達の「民意が読めない」もどかしさのあらわれの一つといえます。手土産文化に代表される町制への改革意識を持ち始めた町議達の思いは新住民、さらには旧住民にも伝わったのでしょうか。今回の町長選挙で、「漬物」町長は800票余りの差で敗退しています。たかが漬物、されど漬物。町長にとっては、「酸っぱい」ならぬ「苦い」思い出となってしまったようです。
「選挙まとめ」は、今後も翌月の上旬頃にお伝えする予定です。
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