
書籍:『マスコミが伝えないネット選挙の真相』
著者:高橋茂
出版:双葉社
発行:2013.9.4
2015年の今からたった2年前のことだけど、「ネット選挙解禁」なんて、すでに過去の言葉になりつつあるような気がする。選挙が近づいて来たら、私のFacebookやTwitterでは当然のように、街角で見かけた立候補者のスナップ写真とその人に対する応援コメントや、「期日前投票に行ってきました」的な投稿が増えてくる。
インターネット、特にSNS経由で得られる選挙関連情報は、ここ数年でグッと増えてきた。かたや、候補者のHPがきちんと更新されていないと、「この人、やる気あるのかしら」などと思う。こんな当たり前のことを、当たり前にするために、動いてきた男たちがいた(女たちもいた。もちろん)。
株式会社VoiceJapanの高橋茂社長(前ザ選挙編集長、現選挙ドットコム顧問)は、知る人ぞ知る「安曇野の軍師」だ。2000年の長野県知事選挙に立候補した田中康夫氏の選対にボランティアで参加、インターネットを使って暗躍し、見事当選させた実績を持つ。その高橋さん、実はおしゃべり好きな中年のオッサンだけど、「ネット選挙解禁」に向けた流れを作った立役者でもある。『マスコミが伝えないネット選挙の真相』では、インターネットを使って選挙活動ができるようになるまでの流れや背景が明かされている。
高橋さんは、自身が運営をしていた選挙メディア『ザ選挙』の再スタート1周年をきっかけに、多くの仲間たちと、ネット選挙解禁を目指す運動体「One Voice Campaign」を組織した。そして自民党のインターネット活用におけるキーパーソンである世耕弘成参議院議員や、当時、自民党を揺さぶることのできたみんなの党の松田公太参議院議員らに話を持って行き、法案提出を通して国会を動かそうと試みた。キーボードの前に座っておしゃべりをしていたオッサンが、本気でロビイングを始めたのだ。
2012年に自民党が民主党から政権を奪還すると、安倍首相は突如ネット選挙の解禁を明言、事態は急進する。これには「One Voice Campaign」のメンバーも度肝を抜かれたという。そのような動きが、どこからも漏れてきていなかったからだ。おそらくは、「One Voice Campaign」のメンバーが足しげく通っていた首相のブレイン達が、ネット選挙の解禁を目指す関係者の期待や、党に寄せられる要望等をきちんと把握していたのだろう。2013年4月19日、とうとうインターネット選挙運動解禁に係る公職選挙法の一部を改正する法律が成立した。
高橋さんは、ネット選挙解禁の最大のメリットは、選挙に行く前にじっくりと候補者の比較ができる点であるとしている。「あなたが1票を入れたからと言って直ちに政治が変わることはないだろう。……けれど、あなた自身は変わる。確実に変わる。」その1票を投じるために、インターネットの情報を検討材料の1つにするのだ。
情報の幅を広げ、政治に参加しよう。
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