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今何が起きているのか/日常のためのデモ入門(寒川倫のエッセイ)

2015/8/17

寒川倫

寒川倫

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デモって、どうやって行けばいいんだろう?

そう思っている人のために、今回は私から見た「実際の現場」で起きていることやその場にいる人について話そうと思う。
あくまで、無所属の私から見た感想と案内である。ただ、無所属でふらりと参加しただけでも、得られることは少なくないのだということをお伝えしたい。これは私なりの「デモ入門」だ。デモという行為へのハードルは、絶対に下がって然るべきである。気軽な日常の予定としてデモを提案したいと思い、筆をとることにする。

無所属の根暗大学生から見た「SEALDsデモ」

今最も有名なデモといえば、SEALDsによる安保法案反対の官邸前抗議だろう。SEALDsは若者中心に結成された学生団体である。デモというと、前線でメガホンを取っているのは学生運動を経験してきた年代の方々だ、という印象を持っている人も多いはずだ。SEALDsはそういったイメージを払拭し、ラップ風のシュプレヒコールや、まるでテニスサークルのような気さくな呼びかけが話題になった。
そう、明るい。明るいのである。そしてメンバーは皆垢抜けていておしゃれなのだ。私のような根の暗いオタク気質の人間から見ると、そこへは混ざれないという空気があった。「安倍政権、許せないでしょお〜!」と叫ぶそのノリが私にはキツかった。伝わるだろうか? 文化資本の違いを感じたのである。私はSEALDsの意思には賛同するが、SEALDsのメンバーにはなりたいと思えない。
でもそれはいいのだ、別に。これは完全に趣向の話で、SEALDsのデモに出ている人は皆SEALDsと空気やノリを共有しなくてはいけないというルールはどこにもない。そんなことはしなくていい。目的が一緒であるなら、参加のスタンスも方法も程度も、何もかも自由だ。デモは意思のための場所だから。もしこれを読んでいるあなたが、SEALDsや他の参加者の雰囲気についていけないし、そういうグループへコミットしたくない、という理由でデモ参加を避けているならば、私は笑顔であなたの背中を押すだろう。デモはいつ来てもいいしいつ帰ってもいいし、一切会話を含む発声をしなくても、どの辺りに立っていても、もしくは座っていても、全く構わないからだ。あなたはあなたがしたいように振舞うことができる。当たり前だが、大事なことだ。無駄な義務感は感じなくていい。

また、SEALDsのデモの参加者は若者がほとんどなのかと思っている人がいるかもしれない。しかし実際彼らは学生であるため集合するのは放課後で、昼過ぎの国会前にいるのは他のデモと変わらずおじいちゃんおばあちゃんが中心だ。「SEALDsのデモは若い人が多い」という話は、「比較的」という意味では納得できるが、これまで反原発運動や反差別運動に携わってきた人も平常通りにたくさん参加しているので、報道で強調されているほどの変化はないように感じられる。若い参加者は増えてはいるのだろうが、現場で「若いのに偉いね」と言われてしまう程度には少ない。国会前抗議の最前線で、マスコミのカメラは若者をできるだけ集めた画面で写真を撮ろうとしていた。メディア側も、「SEALDsのデモは若者がたくさんいる。デモの現場は変化している」という印象を与えたいのだろうと思う。そしてその印象と実態には、多かれ少なかれ差異があることを覚えておいて欲しい。

実際に現場に出るには? デモデビューガイド

では、デモに実際に行く場合、どうすればいいのか、簡単にガイドしよう。
デモがある日は、大体主催団体や関係者のツイッターで前々から告知される。その日の夕方何時から、まで指定されるが、実際はそれより前からたくさんの人が集まり始める。好きな時間に来ればいい。開始時間になると、シュプレヒコールが始まる。スピーカーから聞こえる言葉を繰り返すだけでいい。もちろん参加不参加は自由だ。そして参加している国会議員や学者のスピーチもある。聞きたければ耳を澄ませればいいし聞きたくなければ適当に流せば良い。
こういう流れが何度もあるので、私は2時間ちょっとで離脱することが多い。デモは、状況や時間帯にも寄るが、最悪の場合身動きが一切取れないレベルまで混むので、ある程度疲れるのである。
ちなみに、私のデモの必須アイテムは「汗拭きシート」「飲み物」「手作りプラカード」の3つだ。
最前線に入ると周囲の人と肌が触れ合わざるをえない距離感になるので、汗拭きシートは必須アイテムである。デモは立って叫ぶので本当に誰もが汗をかくのだ。去年夏の国会前抗議に参加した時は、隣のおじさんが太鼓を叩いていた。腕が振り下ろされるたびに汗が飛んできた。地獄であった。すぐさま両腕を拭いた。
こういうわけなので飲み物も絶対に必要だ。国会議事堂前駅内には菓子類と飲み物の自販機はあるがコンビニがない。注意してほしい。
手作りプラカードは、持っていると写真を撮られる確率が格段に上がる。特に海外プレスからは受けがよい。取材を受けたいなら手作りプラカードはぜひおすすめだ。私のプラカードをどこかで見た誰かが、私が今国会にいて声を上げていることを知ってくれたら嬉しいな、と願って、私は写真を撮られ続けている。

そして行列は続く

こんな風に、私は政治について、やりたいことだけやっている。できることだけやっている。無理はせず傷つきもせず、ただそれが生活だからそうしている。あなたも一度デモを見に行ってみてほしい。国会前で、叫ぶ私に会ってくれ。

 

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寒川倫

寒川倫

1995年生まれの大学3年生。イラク戦争の頃にデモに初参加し、現在も一人でデモに出ている。「正しい倫理子」名義でねとらぼなどで執筆中。

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