ヘイトスピーチについて話そうと思う。ずっとこの話がしたかった。
ヘイトスピーチは、実害のある「差別扇動」である。ヘイトデモとはこの差別扇動を行うデモのことであり、具体的には、街宣車や横断幕を用い、見るに堪えないような醜悪かつ下品な言葉で在日韓国人の人々を罵りながら街を闊歩するレイシズム行為だ。「在特会」と呼ばれるレイシスト団体などが多く開催している。実際に見ると本当に怒りがこみ上げてきて、自然と歯をギリギリと食いしばってしまう。
これをそのまま街にのさばらせていてはいけない。レイシストの言葉で傷つく可能性のある人々にこのデモで吐かれる言葉を聞かせてはいけないし、あらゆる街に悪事を許さない人間がいない状態を作り出してはいけないのだ。当事者として苦しんでいる人々のためにも、そして悪を許さない人間としての自分の誇りのためにも、私は絶対に絶対にヘイトスピーチを許さない。
そこで、具体的に何をしているのかというと、ヘイトデモの現場に向かい、プラカードを持ったりメガホンで叫んだりしながら、デモを追いかけるのである。
街を走りながら、「レイシスト帰れ!」というシュプレヒコール、いや、シュプレヒコールと言えるほど揃わない雄叫びを上げる。
このように、国会前抗議とはまた異なり、カウンターは「実害を止める」ための活動なのだ。
そういう性質ゆえに、一部には非常に攻撃的な行動や発言をするカウンター参加者もいる。(一応言っておくが、もちろんカウンター側も一枚板では全くない)
このことについては前々から議論があった。レイシストに対して攻撃的な行動を取っていいのかという問題だ。取るべきではないと言う人はいるし、憎悪に立ち向かうために憎悪を振りかざすのは正しいのか、という疑問もある。憎悪に憎悪で対抗しているイメージが、まだヘイトデモの現実を知らない人々に根付いてしまったとしたら、カウンターは正義のはずなのに「どっちもどっち」と思われてしまうかもしれない、と私は懸念している。
だが、当事者の人たちの中には、本気でヘイトデモに憎しみをぶつける人々の姿を見て救われたという人が少なくない。それに、現場の参加者からすれば、「まずはカウンターに出てからものを言え」という意見も根強いだろう。確かに、実際に見ればわかると思う。あれがどんなに許されざる行為なのか。
さて、今から1年前、18歳だった年の5月、私は生まれて初めてこのカウンターに参加した。一人で「なかよくしようぜ」と書かれたプラカードを手に、家を出たのである。今日は過激なことはせず、ただプラカードでヘイトデモを牽制しよう、下品なことはやめよう、そう思っていた。
しかし、現場を見た私は激昂し、怒りに飲まれた。生で見るヘイトスピーチは、あまりにもひどかったのだ。想像していたよりずっとハードなデモの追跡の中で、私は我を忘れていた。「なかよくしようぜ」なんて気さくな呼びかけのプラカードが途端に恥ずかしくなった。奴らは人の心をぐちょぐちょに汚している。人間の尊厳を踏みにじる行為がなぜこの美しいはずの近代都市東京にまかり通っているのか。自分の故郷すら蹂躙された気分で、私はデモ隊に向かって無意識に中指を立てていた。今日はしないでおこう、そう決めていたことを、やったのだった。
帰宅して怖くなった。確かに私が彼らへ中指を立てたことが誰かの心を慰めたかもしれない。別に、もし私が始めから自分に中指を立てることを許していたなら、それはそれで良かったのだ。しかし私は、自分でやらないでおこうと思ったことをやった。それが恐ろしかった。あの場所で、私は私ではなかった。私だと思いたい私ではいられなかったのだ。
そういう経験を経て、その後も数回カウンターに出ながら、私は考えた。今ヘイトスピーチに必要なのは、「人数」と「周知」である。過激な抗議をする人も必要だし、その人たちばかりが中心なんだと感じさせないぐらいに、もっと人がいればいいと思う。プラカードだけで追う人も、声だけ出す人も、いろいろな人が現場に来て、ヘイトスピーチを許さないという姿勢を見せてくれたら、レイシズムをより抑止できる力になるはずだ。自分はどういう気持ちでどういう行動をするのか、自分で決めて参加したいし、してほしい。
そして、今何が起きているのかを伝えなければならない。まだまだヘイトスピーチとは何か、カウンターとは何かなど、世間での認知度は低いと感じている。正しく現状を知ってほしいのだ。今苦しんでいる人がいること、それに抗議する動きがたくさんあることを、もっと伝える努力をしたい。ヘイトデモとカウンター抗議を、「どっちもどっち」なんて感じる人がいなくなるように。
人間が人間の尊厳を破壊しようとする、その意思暴力の恐ろしさを、私は見た。私の故郷の、この国で。
私は故郷が好きだ。この国を愛したい。だから今のこの国を愛せない。少しでも愛せるように努力をしたい。だから街を走る。国にも私に愛される努力をしてほしい。さっさとヘイトスピーチ規制の法律を作ってくれ。
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