18歳選挙権の解禁にあわせて「有権者教育」の重要性が指摘されています。政府も当然対策はすすめており、日経新聞の報道によれば、
政府は選挙権年齢の来夏からの引き下げにあわせ、高校生への周知や政治教育、システム改修費用に2015年度予算の予備費約12億8000万円を充てる。選挙制度の解説、模擬選挙に対応したワークシートなどを盛り込んだ高校生向けの副教材作成に1億8500万円を回す。新たに選挙権を得る高校3年だけでなく全学年向けに作成し、今秋をメドに全ての高校で配布する。(選挙権年齢引き下げ、高校生への周知に12億円 予備費で:日経新聞 7月19日)
このように予算もつけて着々と進めているようです。有権者教育の重要性については私も異論はありません。ただ、選挙の現場にいるものとして、新たな有権者が投票という意思決定をするために必要な情報を、政党や候補者がきちんと提供することも大きな課題だと認識しています。
街頭立ち、電話作戦、あいさつ回り、選挙カーでの名前の連呼といったこれまでの政治活動や選挙運動のやり方だけでは、彼らに、投票選択をするに足る十分な情報を届けることはできません。
新たな有権者層は、生まれたときからインターネットがあたりまえの環境として存在していた「デジタルネイティブ」でもあり、今後の選挙ではネットで発信する情報の質がさらに問われるようになります。SNSやLINEといったサービスの活用や、スマートフォン対応はもちろん、発信する情報を精査し、デザインし、読む気にさせる工夫が必要です。
私は以前、新聞社のインタビューで候補者と有権者の間であるべき様式や演目が決まっていることから「選挙は伝統芸能だ」と発言したことがあります。18歳、19歳といった新たな有権者にあった新しい演目を各政党・候補者陣営の創意工夫によって開発していくことが、選挙の盛り上がりにもつながっていくと考えています。
今回の公選法改正では、買収など連座制の対象となる選挙違反を犯した場合、未成年であっても成人と同様に厳しい処罰の対象となることが盛り込まれました。「事前運動の禁止」や「未成年者の選挙運動の禁止」、そしてネット選挙運動に関連する禁止事項などは非常にわかりづらいため、注意が必要です。
例えば、18歳以上の高校生には選挙運動も認められるため、選挙期間中であれば候補者の選挙運動に関する発信をシェアやリツイートといった形で拡散できますが、クラスメートの17歳の生徒が行うと「未成年者の選挙運動の禁止」という違反に問われる可能性があります。他にも、投票日当日に満18歳をむかえるケースでは、投票日の投票や不在者投票はできるものの、期日前投票や選挙運動はできないといった制度上のややこしい話もあります。
文部科学省と総務省は具体的な選挙違反の事例を盛り込んだ教材を配布し、啓発に取り組むとしていますが、新たな有権者から逮捕者が出ることのないよう、高校や大学での有権者教育においては、選挙違反への注意喚起も丁寧にやっていただきたいと思います。
日本では「政治」と「宗教」の話はタブーとも言われ、選挙に良いイメージを抱く人は少ないと感じています。18歳選挙権の解禁をきっかけに、日本の選挙がもっと開かれた、明るくわかりやすいものへと変化していけばと期待していますし、選挙ドットコムでも微力ながらそのお手伝いができればと考えています。
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