政治や選挙に関わるニュースを見ているとよく目にする「選挙運動」や「政治活動」という言葉。そもそも「選挙運動」とはどんなことなのでしょうか? 似たような響きの「政治活動」と何が違うのでしょう。「えっ、選挙運動と政治活動って違うの??」という人もいるかもしれません。今回は、非常にわかり辛い選挙運動と政治活動の違いや、18歳未満と18歳以上ではどう異なるのか、などをしっかりおさえておきたいと思います。
まず選挙運動とはどういうものなのかを確認してみましょう。
「選挙運動」という言葉は公職選挙法の中で用いられていますが、公職選挙法そのものでは定義がされていません。ですが昭和3年の大審院判決や昭和38年の最高裁判決などを基に「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」が選挙運動だとされています。
つまり、
・特定の選挙(○○議会議員選挙、衆議院議員選挙…など)
・特定の候補者(~~選挙に立候補する選挙太郎)
・得票の働きかけ(一票をお願いします・応援お願いします…など)
の三つの要素が選挙運動ということになります。
また、「選挙運動」ができる期間は「選挙運動期間」のみ、つまり選挙の告示(公示)日から選挙投票日の前日までと公職選挙法で定められています。選挙運動期間の前に選挙運動を行うことは「事前運動」として禁止されています。
一方、政治活動とはどういうものなのでしょう。
一般的に政治活動とは「政治上の目的をもって行われる一切の活動」とされ、広義には政治活動の中に選挙運動とされている行為も含まれることになります。しかし公職選挙法では選挙運動と政治活動を区別しているため、政治活動とは「政治上の目的をもって行われる一切の活動から選挙運動にわたる行為を除いたもの」とされています。
前述の選挙運動は行ってよい期間などが公職選挙法で厳密に定められていますが、政治活動は憲法第19条や第21条などに基づいて基本的に自由とされています。
引用:「フルカラー図解 地方選挙必勝の手引」p.47
【参考資料】
総務省・文部科学省「私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために」(主権者教育用副教材)
松田馨「フルカラー図解 地方選挙必勝の手引」選挙の友出版、2018年。
では「○○候補を落選させよう」というような「落選運動」はどんなことなのでしょう。ある候補を落選させよう、という行為でも、それが他の候補者の当選を目的としたものであれば選挙運動とみなされます。
ですが候補者などの当選目的を持たず、特定の候補者の落選だけを目的とした行為は選挙運動にはあたらないと解釈されます。
【参考資料】
インターネット選挙運動等に関する各党協議会「改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン」2013年4月26日
「18歳選挙権」が2016年に実現してから、選挙権年齢は従来の20歳以上から18歳以上に引き下げられました。
18歳といえば多くの人は高校生ですが、ひとくくりに高校生であっても年齢が18歳未満か18歳以上かによって選挙でできることが変わってきます。
まず年齢18歳未満の場合、選挙運動は(選挙運動期間中であっても)全面的に禁止されています(公職選挙法第百三十七条の二)。また、他の人が18歳未満の人に選挙運動をさせることも公職選挙法で基本的に禁止されています(公職選挙法第百三十七条の二 2)。
一方で18歳以上の場合、特に制限はありません。選挙運動は一般的なルールと同じく選挙運動期間であれば可能です。
2013年のネット選挙解禁以降、ネット・SNSなどを活用した選挙運動が可能になっていますが、18歳未満の場合は選挙運動全般が禁止されていますので、ネット選挙解禁で可能になった行為も含めて選挙運動を行うことができません。
>>ネット選挙でできることが投票日前日までと投票日当日では違う?!投票日前日・当日の「SNSの利用」には気を付けて!
高校生の政治活動については公職選挙法での定めはありません。しかし、「18歳選挙権」の開始に先駆けて2015年に文部科学省初等中等教育局長から「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」という通達が出されています。その中で高校生の政治活動は「無制限に認められるものではなく必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」とされています。
【文部科学省の通達】>>http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1363082.htm
政治活動と選挙運動の区別や落選運動、高校生の扱いなどを振り返りましたが、重要なのは高校生であるかどうかではなく、実際の年齢が18歳以上であるかどうかと選挙運動期間中であるかどうかです。
このところ若者の投票率低下が叫ばれていますが、18歳以上で選挙運動期間中であれば有権者ができる選挙運動に気を付けつつ、萎縮せずに政治や選挙に関わってみるといいかもしれませんね!
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