選挙に関する犯罪と言えば、買収などが代表的ですが、選挙に立候補することでお金儲けを企んだ事件が頻発した時期がありました。今回は「選挙でお金儲け事件」を紹介します。
選挙は多額の金銭がかかることが一般的であり、選挙を利用してお金を儲けるということは困難なように見えます。しかし、選挙に立候補してお金を儲けた事例が確かに存在します。例えば、特定の勢力からお金を受け取って選挙に立候補し、選挙運動と称してその勢力と敵対している候補者の妨害や中傷をしていたとされる事例があります。しかし、このような候補者の対立に乗じるのではなく、選挙のルールそのものを利用してお金を荒稼ぎしていた事例があるのです。
日本の選挙ではなるべくお金のかからない選挙にするためと資金力のある候補者とない候補者で過度な差が出ないようにすることを目的とした「公費負担制度」というものがあります。これはポスターやビラの印刷、新聞広告、選挙運動用自動車のレンタル料金やガソリン代などの選挙に関する費用を公費で負担してくれる制度です。そして、この公費負担制度は様々な形で悪用されて大きな問題になった時期があります。
公費負担制度の悪用が激しかった1960年代の国政選挙では1人の候補者が全国紙の新聞に公費負担の限度分の広告を出した場合、約100万円の公費が支払われていました。この時、一部の広告代理店が契約をする見返りに支払われた広告費の3割以上の金額を候補者に渡していたことが明るみに出ており、広告代理店と結託して候補者がお金を手に入れた事件が頻発していました。さらにこれに関しては、悪用する意思が全く無い候補者が広告代理店側から自社と契約すれば、献金の形でお金を渡すと持ちかけられて驚いたという証言もあります。
また、広告の悪用以外にも、候補者に無料で交付される選挙用はがきを他の候補者に横流しして数十万円の荒稼ぎをしていた事例も頻発しています。
このような悪用の収支計算ですが、1962-69年当時の国政選挙の供託金が衆議院、参議院の選挙区で15万円、参議院の全国区で30万円と比較的低額であったため、供託金を支払っても公費負担制度を悪用することでかなりの儲けが出る計算になっていたのです。
上記に示した例以外にも公費負担制度は悪用されて大いに問題になりました。その結果、世論の動きや選挙管理委員会の対応、金儲けに利用されないように業者との契約に関して透明性を上げるような対策が行われたほか、一定以上の票を取れないと一部で公費負担が受けられないようになり、さらには供託金が大幅に値上げされました。
このような対策の結果、公費負担制度の悪用は減少しましたが、一方で資金力が少ない人は一般的に集票力が少ないことから公費負担制度を一部受けられなくなるようになってしまっただけではなく、多額の供託金が支払えず、選挙自体に立候補することができなくなり、資金力によって選挙運動に大きな差が出てはいけないという公費負担制度の趣旨からは外れることとなってしまったのです。
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