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知らなかったでは済まされない「運動員買収」を徹底解説!|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】

2019/11/8

松田馨

松田馨


2019年7月の参議院議員選挙において、自民党の衆議院議員・河井克行氏と妻の参議院議員・河井案里氏に、ウグイス嬢に公職選挙法で定められた上限額を越えた報酬を支払う、いわゆる「運動員買収」の疑惑があることが週刊誌で報じられました。これを受けて河井克行氏は10月31日、法務大臣を辞任しました。

問題となったポイントは「運動員買収」なのですが、そもそも何を行ったら買収なのでしょう。そのルールを解説します。公職選挙法で何が禁止されているのか、選挙運動の中で「できないことは何か」を政治家も、支援する有権者のみなさまも理解をしていただければと思います。この解説内容は私が昨年末に出版した選挙マニュアル本「フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』」にも記載があります。

「運動員買収」の疑い

今回の騒動の鍵になるのは、公職選挙法(以下、公選法)上の「運動員買収」になります。「運動員買収」は非常に厳しい罰則がある重大な違反にも関わらず検挙数がとても多い違反です。「自分たちは大丈夫」と油断せずに、細心の注意を払ってください。

まず、「運動員買収」は公選法上の『買収及び利害誘導罪』に含まれます。

そして、『買収及び利害誘導罪』は基本的には以下の3つの要件で定義されています。

運動買収について

買収の対象は有権者だけでなく、選挙運動者(選挙運動を行う人)も含まれます。公職選挙法ではごく一部の例外を除き、選挙運動を行う人に対しての報酬の支払いや食事の提供を禁止しています。選挙運動を手伝う人は原則としてボランティアでなければならないのです。選挙運動のお礼に食事をご馳走したり日当を支払ったりすることは、買収と判断されますのでご注意ください。ボランティアという認識にも注意が必要です。例えば、経営者の友人に応援を依頼し、社員を無料で派遣してもらうとします。その社員が選挙運動を手伝っていた期間の給料が選挙運動の報酬と認められる場合には運動買収になります。何らかの利益の供与が発生していれば買収とみなされる可能性があるのです。この場合は社員が休暇を取得するか、就業時間外に選挙運動を手伝うのであれば直ちに違反にはなりません。

選挙運動に関する報酬の支払いと実費弁償

原則として選挙運動を行う人に対しては報酬が支払えません。一部例外的に報酬を支払える人や、交通費や宿泊費等の「実費弁償」については認められています。

食事の提供について

選挙事務所での食事の提供については、「何人も、選挙運動に関し、いかなる名義をもってするを問わず、飲食物を提供することはできない」(公職選挙法第139条)とされています。ただし、例外として以下は認められています。
❶湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子
❷選挙運動に従事する者・選挙運動のために使用する労務者に対して一定の金額内(1 人1食1,000円以内)の弁当を一定の数の範囲内(1日15人×3食×選挙運動期間日数)で選挙事務所において食事をするため又は携行するために選挙事務所において提供する場合

❶については、せんべい、まんじゅう、袋菓子や、みかんやりんごなどの果物や漬物も認められますが、高級な和菓子やケーキ、酒やサンドイッチなどは提供できないとされています。

❷については、●選挙運動に従事する者と労務者に対して ●1人1食1,000円以内 ●15人×1日3食 までという制限があります。ですから選挙事務所に立ち寄っただけの有権者に食事を提供することはできません。また、労務者に報酬を支払う場合、弁当を提供した場合は弁当代を報酬から差し引いて支給しなければならないとされています。あくまで弁当の提供が認められているだけですので、料理店や食堂などへ連れて行って提供することや、選挙事務所内で調理をしたものを無償で提供する炊き出し等も禁止されています。

陣中見舞について

支援者の方から「陣中見舞い」をいただく場合は注意が必要です。先ほども触れた「飲食物の提供の禁止」は第三者から候補者に対しても適用されます。なお、お茶うけ程度のお菓子や果物などは受け取ることができます。また、お酒や飲食物以外の物品や金銭・有価証券を差し出された場合は、個人から候補者への選挙運動に関する寄附と見なされます。個人が同一の候補者に寄附できる金額は年間150万円までですので、その範囲内であれば受け取ることができます。なお、企業・労働組合などの団体からの寄附は禁止されていますのでご注意ください。なお、選挙期日後に行う「当選祝い」は、個人から候補者への政治活動に関する寄附とみなされます。陣中見舞いとは異なり、お酒や飲食物も受け取ることができますが、反対に金銭や有価証券は受け取ることができません。

公職選挙法では買収以外に様々な選挙違反が定められています。より詳しく知りたい方は選挙管理委員会への問い合わせや選挙の解説本などでしっかりと確認することをお勧めします。

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松田馨

松田馨

選挙プランナー。株式会社ダイアログ代表取締役。1980年生まれ。2006年以降、地方選挙から国政選挙まで100を超える選挙に携わる。新聞や週刊誌上において国政選挙(衆議院・参議院)の当落予想を担当するなど、選挙区分析には定評がある。ネット選挙運動の解禁や投票率向上の活動にも長年取り組んできた。著書に『残念な政治家を選ばない技術 「選挙リテラシー」入門』(光文社新書)

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