2026/8/7
皆さん、こんにちは。枚方市議会議員のかじや知宏です。
皆さんは、枚方市が積み立てている「基金」が、普通預金や定期預金だけでなく、債券でも運用されていることをご存じでしょうか。
枚方市の積立基金は、令和8年5月末現在で約411億3,500万円。このうち、**約93億3,765万円が債券で運用され、債券運用率は22.7%**となっています。
自治体にとって基金は、市民の大切な財産です。
少しでも利息収入を増やすことも重要ですが、一方で、災害や物価高騰などによって急にお金が必要になったときに備え、必要な資金をすぐに使える状態にしておくことも重要です。
今回は、枚方市の基金運用について、近隣の交野市とも比較しながら考えてみたいと思います。

基金を簡単に言えば、**自治体の「貯金」**です。
ただし、一般家庭の貯金とは少し違い、それぞれ目的を決めて積み立てられています。
枚方市の普通会計の基金には、「積立基金」と「定額運用基金」があります。
積立基金の代表的なものが、
📌 財政調整基金
年度によって税収や支出が変動したときに対応するための貯金です。
📌 減債基金
枚方市が発行した市債、つまり市の借金を将来返済するための貯金です。
このほかにも、特定の事業や将来の行政需要に備えたさまざまな基金があります。
特に財政調整基金は、急な行政需要の増加や物価高騰対策、大規模災害などが発生した際にも重要な役割を果たします。
だからこそ、基金には「増やす」という視点だけでなく、**「安全に守る」「必要なときに使えるようにしておく」**という視点が欠かせません。
枚方市では基金を、
✅ 普通預金
✅ 定期預金
✅ 地方債などの債券
などによって保有・運用しています。
低金利の預金だけでは、十分な利息収入を得ることが難しいため、安全性を確保しながら債券を活用することは、自治体の財源確保という面で意味があります。
枚方市では令和5年度に、基金の債券運用について見直しを行いました。
それ以降、毎年度「債券購入計画」を作成し、それに基づいて計画的に運用しています。
これまでは5年債を基本としていましたが、5年債の規模を縮小しながら、より長期で利回りが期待できる10年債への切り替えも進めています。
令和5・6・7年度は、それぞれ、
5年債:5億円
10年債:2億円
を購入しています。
枚方市が債券運用で採用しているのが、**「ラダー方式」**です。
少し難しい言葉ですが、考え方はシンプルです。
一度にすべてのお金を長期間固定するのではなく、満期を分散させて債券を保有する方法です。
たとえば5年債と10年債などを組み合わせ、毎年一定額が順番に満期を迎えるようにしていきます。
「はしご(ラダー)」の段のように満期が並ぶことから、ラダー方式と呼ばれています。
これによって、
✅ 金利変動のリスクを分散する
✅ 定期的に現金が戻ってくる
✅ その時々の金利で再投資できる
といったメリットがあります。
「利回り」だけを追うのではなく、「いつ現金に戻ってくるのか」を考えることが、公金運用では非常に重要です。
枚方市では、行財政改革プランの取り組みとして、**「基金の債券運用額の拡充」**も進めています。
現在行っている5年債・10年債のラダー方式とは別に、財政調整基金・減債基金の残高のうち50億円を原資として5年債を購入し、利息収入を財源確保につなげるものです。
計画では、
令和7年度:30億円(購入済み)
令和8年度:20億円(購入予定)
となっています。
購入した債券については、償還期日(満期)まで保有することを前提としており、この取り組みによる運用益の総額は3億5,310万5,000円となる見込みです。
つまり、基金の安全性や必要な流動性を確保しながら、すぐに使う予定のない資金を債券で運用することで、新たな財源を生み出すことが期待されています。
その結果、令和8年5月末現在では、
積立基金現在高 411億3,500万円
債券運用額 93億3,765万円
債券運用率 22.7%
となっています。
枚方市も債券運用を積極的に活用していますが、現時点では積立基金全体の約3割という水準です。
ここで重要なのは、債券運用そのものが問題なのではなく、「どの程度の資金を」「何年間」「どのように運用するのか」というリスク管理です。
この点が、次に紹介する交野市との比較を考えるうえで大きなポイントになります。
ここで、近隣の交野市と比較してみます。
令和7年3月末時点の交野市の基金残高は、
103億8,200万円
そのうち、
債券 74億5,000万円(約71.8%)
現金 29億3,200万円(約28.2%)
となっています。
枚方市と単純比較すると、
| 枚方市 | 交野市 | |
|---|---|---|
| 基金残高 | 約411.4億円 | 約103.8億円 |
| 債券運用額 | 約93.4億円 | 約74.5億円 |
| 債券運用率 | 22.7% | 71.8% |
基準時点が異なるため厳密な同時点比較ではありませんが、基金に占める債券の割合には大きな違いがあります。
交野市では、基金の7割以上が債券となっています。
さらに気になるのが、交野市が保有している債券の期間です。
添付資料によると、交野市は74億5,000万円の債券を保有していますが、その中には20年、22年、30年という非常に長期間の債券も含まれています。
内訳を期間別に整理すると、
10年:18億円
15年:17億円
20年:31億円
22年:2億円
30年:6億5,000万円
です。
つまり、**20年以上の債券だけで56億5,000万円。債券全体の約75.8%**を占めています。
30年債の場合、2023~2024年に購入したものは、満期を迎えるのが2053~2054年頃です。
枚方市が5年債・10年債を中心に運用していることと比べると、非常に大きな違いです。
ポイント⑤で紹介したように、交野市では基金の多くを長期債で運用しています。
ここで問題となるのが、金利上昇による「含み損」と流動性のリスクです。
債券は一般的に、市場金利が上昇すると価格が下落します。特に長期債は、金利変動による価格への影響が大きくなる傾向があります。
実際、交野市で行われた住民監査請求の資料では、請求人が証券会社の協力を得て調査した結果として、令和7年8月25日時点で、
債券額面総額 74億5,000万円
時価 約62億4,690万円
含み損 約12億310万円(16%超)
との試算が示されています。
※この金額は交野市が公式に算定したものではなく、住民監査請求の請求人側が証券会社の協力を得て調査した時価に基づく試算です。
もちろん、含み損が約12億円あるからといって、すでに12億円の損失が確定したわけではありません。満期まで保有し、発行体に問題がなければ、基本的には額面で償還されます。
交野市も公式資料で、長期債には**「現金化できないというリスクもある」**と認めています。その一方で、中・長期の財政運営において安定して保有できる範囲で運用していると説明しています。
しかし、ここで考えなければならないのは、20年後、30年後まで本当に売却する必要がないと言い切れるのかということです。
20年、30年先には、人口や税収、社会保障費、公共施設の更新、物価など、自治体を取り巻く環境が大きく変化している可能性があります。
さらに、基金が必要になるのは大規模災害だけではありません。物価高騰や景気悪化による税収減、想定外の行政需要など、現在では予測できない財政需要が発生する可能性もあります。
交野市は、大規模災害時には国庫負担や地方交付税、起債などの制度があるため、**「債券の売却により現金を確保する必要はないものと考えている」**と説明しています。
しかし、将来起こり得るあらゆる資金需要について、20年、30年先まで「債券を売却する必要はない」と見通すことは困難です。
金利上昇によって含み損が膨らんでいるときに、想定外の財政需要から途中売却を余儀なくされれば、含み損が実際の売却損として確定する可能性があります。
私は、これほど長期間にわたって資金を固定し、「満期まで保有する」ことを前提とする運用には、将来の財政需要への対応という点で懸念があります。20年後、30年後の状況を正確に見通すことが難しい以上、より慎重なリスク管理が求められるのではないでしょうか。
債券運用そのものが問題なのではありません。
「どれだけ利益が出るか」だけでなく、「必要なときに使えるか」。
市民の大切な基金だからこそ、将来の不確実性まで考え、安全性・収益性・流動性のバランスを取った運用が必要だと考えます。
もう一つ注目したいのが、交野市の債券の発行体です。
資料を見ると、74億5,000万円のうち国債は5億5,000万円で、それ以外の69億円は電力会社・電力系企業の社債となっています。
特に東京電力パワーグリッドの債券は、
7億円+11億円+17億円=35億円
です。
これは**債券全体の約47%**にあたります。
もちろん、これだけで直ちに危険な運用だということではありません。
しかし、市民の大切な公金を運用する以上、
「特定の発行体や業種にこれだけ集中させる必要があるのか」
という点についても検証する必要があると考えます。
ちなみに、交野市の債券74億5,000万円から得られる年間の受取利息は、資料上では約1億1,107万円です。
利息収入だけを見るのではなく、安全性・流動性・分散性とのバランスを見ることが重要です。
私は、債券で基金を運用すること自体が問題だとは考えていません。
むしろ、預金だけに置いておくより、安全性を確保したうえで債券を活用し、利息収入を増やすことは、限られた財源を有効活用するという意味で重要です。
枚方市でも債券運用を拡大しています。
だからこそ大切なのは、
「どれだけ儲かるか」だけではなく、「市民のお金を安全に守り、必要なときに使えるか」
という視点です。
その意味で、基金の約72%を債券で保有し、さらにその債券の約76%が20年以上、特定の発行体への集中も見られる交野市の運用については、リスク管理の観点から慎重な検証が必要な運用だと私は考えます。
一方、枚方市についても「交野市より安全だから大丈夫」で終わらせるべきではありません。
枚方市も今後、債券運用を拡大していくからこそ、
✅ 基金全体に占める債券の適正な割合
✅ 5年・10年など償還時期の分散
✅ 災害など緊急時に必要となる現金の確保
✅ 金利上昇時の含み損の把握
✅ 発行体の分散
✅ 将来の基金取崩し計画との整合性
を継続的にチェックする必要があります。
運用益を増やすことと、安全性・流動性を確保すること。このバランスこそが自治体の基金運用では重要です。
基金は、市役所のお金ではありません。
市民の皆さんからお預かりした大切な公金です。
今後、人口減少や社会保障費の増加、公共施設の更新、物価高騰など、枚方市の財政を取り巻く環境はさらに厳しくなることが予想されます。
だからこそ、基金をただ貯めておくだけではなく、安全性を最優先しながら、効率的に運用して財源を確保することも必要です。
同時に、目先の利回りを求めるあまり、将来必要になる資金を長期間動かせなくしてしまっては本末転倒です。
私は枚方市議会議員として、枚方市の基金が「安全性」「収益性」「流動性」のバランスを保ちながら適切に運用されているのか、今後もしっかりと確認していきます。
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