2026/9/11
板橋区が行った区民健康意識調査で、死にたいと考えたことがある人の半数以上が「誰にも相談したことがない」と答えていることが分かりました。
制度や相談窓口をどれだけ整えても、本人が「相談しよう」と思えなければ届きません。この「孤独・孤立の壁」をどう超えるかが、今の板橋区の自殺対策の核心的な課題です。
板橋区の新しい計画「いのちを支える地域づくり地域計画2030」に掲載された区民健康意識調査の結果によれば、死にたい等と考えたことがある住民のうち、半数以上が「相談したことはない」と回答しています。
この事実を受けて、新計画では「孤独・孤立を軽減させる取組」が初めて重点施策として明記されました。
板橋区の自殺の実態データからも、孤立の輪郭は見えてきます。令和元年から令和5年の5年間の合算(520人)で、自殺未遂歴を持つ割合は男性13%に対し女性32%と、女性の方が高くなっています。
また、危機経路の分析(JSCPによる地域自殺実態プロファイル)では、板橋区で最も多い自殺者像は「40〜59歳・無職・独居の男性」で、失業から生活苦、借金、うつ状態を経て自殺に至るという経路が最多を占めています。「独居」であることが、この経路の起点に位置づけられている点が重要です。
板橋区は令和7年9月8日、SNS相談などで実績を持つNPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」と協定を締結しました。目的は「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現です。
この協定により、ライフリンクのSNS相談等を利用した住民のうち、本人の同意が得られた場合は区に情報が共有され、区が関係部署と連携して具体的な支援につなげる仕組みが動き出しています(板橋区公式ホームページ)。
相談の「入口」をSNSという心理的ハードルの低い手段に増やし、そこから行政の支援に「出口」をつなぐ発想です。孤独・孤立の壁を、相談方法の多様化という形で崩そうとする取り組みといえます。
体制面でも変化がありました。令和6年度から、自殺対策を担う地域協議会と精神保健福祉を担う連絡協議会が統合され、「板橋区こころといのちの連絡協議会」として一体的に運営されています。自殺対策と精神保健を分けて考えないという姿勢の表れです。
ここまで見てきた通り、板橋区はここ1〜2年でライフリンクとの協定、協議会の統合、新計画での孤独・孤立の重点施策化と、制度面の手当てを着実に進めてきました。
それでも「相談したことがない」人が半数を超えるという現実は、制度の外側にある課題を示しています。
相談窓口を知っていることと、実際にそこへ足を運ぶ、あるいはSNSで一言を送ることの間には、大きな距離があります。特に独居で無職の中高年男性など、日常的に人とつながる接点が少ない住民ほど、その距離は遠くなります。
私は、ゲートキーパー研修や相談窓口の整備といった「個人への働きかけ」に加えて、就労支援や生活困窮者支援など「社会的な支援」との連携を強めることが必要だと考えています。医療・相談の充実と、生活基盤を整える社会的な取り組みは、両輪で進めるべきものです。
もし今、あるいは身近な人が「死にたい」と感じているなら、まずSNSでも電話でも、誰かに一言伝えてみてください。板橋区は「こころといのちのほっとライン」(0570-087478)など複数の相談窓口を用意しています。
また、自分が相談されたときにどう応じるか——ゲートキーパーの視点を知っておくことも、身近な人を孤立させないための一歩です。板橋区はゲートキーパー研修を区民向けにも実施しています。
もし私に相談することをご希望でしたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
次回は、令和8年という板橋区の自殺対策の数値目標の年を迎えた今、この連載で見てきた知見を踏まえて、板橋区の取り組みを検証し、次の一手を提言します。
【出典】
– 板橋区「いのちを支える地域づくり計画2030」策定ページ(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/soudan/inochi/1064117.html)
– 板橋区「NPO法人『自殺対策支援センターライフリンク』と協定を締結しました」(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/soudan/inochi/1059566.html)
– 板橋区「板橋区こころといのちの連絡協議会(過年度)」(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/soudan/inochi/1060204/index.html)
– 板橋区 健康生きがい部健康推進課「参考資料1 板橋区における自殺の現状」(令和6年度こころといのちの連絡協議会資料)
The post 「死にたい」と思っても、半数以上は誰にも相談しない——板橋区の孤独・孤立の壁【いのちを支える板橋へ・第4回】 first appeared on 中妻じょうた 板橋区議会議員.
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>中妻 じょうた (ナカツマ ジョウタ)>「死にたい」と思っても、半数以上は誰にも相談しない——板橋区の孤独・孤立の壁【いのちを支える板...