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中妻 じょうた ブログ

板橋区は23区で2番目に「崖」が多い——崖線のリスクと、連載の総まとめ

2026/8/14

災害対策集中連載、最終回です。

今回は「崖」の話をして、それから連載全体をまとめます。

板橋区の災害リスクといえば、まず荒川に伴う水害です。
しかし板橋区には、もう一つの顔があります。

土砂災害警戒区域152箇所——港区に次ぐ23区第2位

板橋区の土砂災害警戒区域は152箇所、そのうち特別警戒区域は118箇所です(令和8年3月25日の見直し後)。

これは、 23区の中で港区(208箇所)に次ぐ第2位 です。

理由は、区の中央を東西に貫く「崖線」です。

小豆沢から、志村・中台・西台を通って、赤塚へ。
武蔵野台地と荒川低地の境界にあたるこの線が、高低差最大およそ33メートルの崖として、区内を横断しています。

崖の正体は、流れる幾多の川、そして「海」が台地を削った跡です。
上から武蔵野礫層・関東ローム層、その下に約15万年前の海の地層である東京層が重なっています。
貝の化石が出る地層です。

そして——赤塚不動の滝や薬師の泉といった、板橋区が誇る名湧水の崖と、土砂災害警戒区域の崖は、同じものです。
きれいな湧水が出るのは、水を通す層と通さない層の境目が露出しているからで、それはそのまま崩れやすさでもあります。

板橋区の土砂災害ハザードマップは、7つの地域に分かれています。

  • 成増
  • 大門・赤塚・三園
  • 徳丸
  • 西台・若木・中台・前野町
  • 志村・大原町・泉町
  • 小豆沢
  • 小茂根・向原・大谷口

ご自宅や職場がこの地域にある方は、一度ご確認ください。

「崖の上」も、警戒区域です

土砂災害警戒区域の範囲は、傾斜30度以上の崖について、次のように決まっています。

  • 崖の上端から10メートル
  • 崖の下端から、崖の高さの2倍(最大50メートル)

つまり、崖の下だけでなく、 崖の上に建っている家も警戒区域に入ります。
崖が崩れれば、上に建っている家は足元を失います。

崖は、地震でも崩れます

もう一つ、制度の隙間の話をします。

土砂災害警戒区域の制度は、基本的に大雨を前提にしています。
しかし現実には、崖は地震でも崩れます。

  • 2016年の熊本地震では、九州で190件の土砂災害が発生しました。
  • 2024年の能登半島地震では、400件以上です。
  • 今回の令和8年熊本地震でも、揺れで緩んだ地盤が雨で崩れることを警戒して、気象庁が土砂災害の警報基準を引き下げて運用しています。

揺れで緩み、後から雨で崩れる。
地震と大雨は、別々の災害ではありません。

さらに、雨も地震もない日に崩れることもあります。
2025年9月30日、杉並区堀ノ内一丁目で高さ4〜5メートルの擁壁が崩れ、隣接する住宅が全壊しました。
老朽化した擁壁は、全国に100万カ所を超えるとも報じられています。

板橋区の崖線には、古い擁壁が数多くあります。

区の対策は、まさに今年から本番です

板橋区には、がけ・擁壁の安全対策工事への助成があります(高さ2メートル超が対象)。

  • 擁壁の新築・築造替え:費用の5割以内、上限700万円
  • 擁壁の補強:上限100万円

そして令和8年度、区は新規事業としてがけ・擁壁およそ900か所の実態調査に着手し、あわせて「板橋区がけ・擁壁防災対策方針」を策定します。
予算は3,805万円です。

これは、まさに今動いている施策です。

同時に、率直に申し上げれば、 23区で2番目に警戒区域の多い区が、実態調査をようやく令和8年度に始める ということでもあります。
私としても、この調査の進捗を見ていきたいと思います。

「レベル4土砂災害危険警報」に名前が変わりました

最後に、実用的な話を。

2026年5月29日から、気象情報の名称が変わりました。
これまでの「土砂災害警戒情報」は、 「レベル4土砂災害危険警報」 という名称になっています。

警戒レベルが名前に入ったので、分かりやすくなりました。
レベル4は、全員避難です。

そして今年7月24日の夕方、板橋区にレベル4大雨危険警報が実際に発表されました。
都心では17時までの1時間に51.5ミリを観測しています。
1時間50ミリを超えたのは、12年ぶりのことでした。

もう、他人事ではありません。


集中連載のまとめ——6本で分かったこと

ここからは、今回の集中連載の総まとめです。

7月28日の令和8年熊本地震を受けて始めたこの連載は、途中、私自身が現地に入ったことで予定を変え、今回を含めて7本になりました。
今回以外の6本を順に振り返ります。

①板橋区の「最悪シナリオ」は意外な地震だった

https://nakatsuma.jp/2026/08/03/itabashi-jishin-saiaku-scenario/

「板橋区は地震に強い」は、都心南部直下地震のシナリオでは本当です。
しかし板橋区にとっての最悪は、あまり報道されない多摩東部直下地震でした(死者109人・区内唯一の震度7想定)。
そして東京都の被害想定には「板橋区への応援は遅れる、または限定されるおそれがある」と明記されています。

②【緊急報告】熊本県御船町に災害ボランティアに行ってきました

https://nakatsuma.jp/2026/08/05/mifune-saigai-volunteer/

8月4日、御船町で災害ボランティアとして活動しました。
現地の第一印象は「被害が見えない」。
耐震化が効いている一方で、「見えない被害」が残っていました。
持ち帰ったのは、①バッテリーは生命線②ボランティアは居住地でなく定員で仕切るべき③受援計画を実効性のあるものに、の3つです。

③【備蓄物資マップ公開】「段ボールベッドはない」と言われた

https://nakatsuma.jp/2026/08/06/bichiku-map-3routes/

町会役員の方の一言から調べたところ、区民に物資が届くルートは3本(現物備蓄・協定物資・公的支援物資)あり、 数量の公表義務があるのは1本だけ でした。
避難所ごとの備蓄を地図から引けるようにしました。

④感震ブレーカー「目標100%・現実10.6%」

https://nakatsuma.jp/2026/08/10/itabashi-kanshin-breaker/

区の目標は全世帯100%設置、現実は10.6%。
簡易型は我が家では取り付けられませんでした。
数万円の段差を、足立・品川・新宿・杉並は購入費助成で埋めています。

⑤生き延びた後、避難所で人が死ぬ

https://nakatsuma.jp/2026/08/12/itabashi-hinanjo-kanrenshi-tkb48/

日本は建物で人を守るのは世界一。
しかし能登では災害関連死が直接死の2倍を超えました。
板橋区は体育館空調全校整備・携帯トイレ約4倍増と到達点が多い一方、段ボールベッドが現物備蓄になく、1人あたり1.75㎡は都の新指針(3.5㎡)と開きがあります。

⑥あの夜、荒川は「あと53cm」だった

https://nakatsuma.jp/2026/08/13/arakawa-ato-53cm-taifu19/

2019年の台風19号で、荒川は氾濫危険水位まであと53センチでした。
床上浸水6棟という数字は、区の想定する本番の約2%にすぎません。
「ちょっと微妙な部分がございます」という率直な答弁から、荒川シフトが生まれました。

そして、動画版でも全体をお話ししています。

▶板橋区の災害対策総まくり(YouTube)
https://youtu.be/UjaYsXk2RLM

連載を通して見えた、板橋区の姿

7本を書き終えて、率直に申し上げます。

板橋区の災害対策は、水準が高いです。

体育館の空調は全校整備済み。
携帯トイレは1年で約4倍。
粉ミルクは液体ミルクに全面切替。
荒川下流タイムラインは全国初のモデル区。
舟渡・新河岸では、バス3社との覚書で要配慮者を高台へ運ぶ仕組みまで作られています。

その上で、次の一手として私が重要だと考えているのは、次の5つです。

  1. 感震ブレーカーの購入費助成の創設 — 目標100%と現実10.6%の差を、あっせんだけで埋めるのは限界に来ています。
  2. 避難所の質の目標を、数値で明文化すること — TKB48の考え方と、スフィア基準の1人3.5㎡を、区の運営マニュアルに書き込む。
  3. 受援計画の実効化 — 備蓄は3日分、避難者ピークは4日後から。都の想定は「板橋区への応援は遅れる」と書いています。御船町からの帰り道、いちばん考えたのがこれでした。
  4. 個別避難計画を、地震にも広げること — 現在の策定率は2.36%、しかも水害特化で地震は対象外です。
  5. がけ・擁壁の実態調査を、調査で終わらせないこと — 令和8年度に始まる900か所の調査から、実際の対策までをつなぐ。

議会で質問できる機会は、一人会派の私には多くありません。
それでも、機会があるごとに求めてまいります。

最後に——ご家庭で、今日からできる5つのこと

制度の話をどれだけしても、最後に命を守るのはご自身の備えです。
連載の締めくくりとして、5つに絞ってお伝えします。

1. 水と食料を、1週間分。

1人1日3リットル、最低3日・推奨1週間。
4人家族なら84リットルです。
カセットボンベは1人あたり週6本が目安。
買い足しながら使う「ローリングストック」で構いません。
必要量は「東京備蓄ナビ」で自動計算できます。

2. 携帯トイレを、4人家族で最低60個。

能登の最大の教訓です。
1人1日5回×最低3日分。
推奨は1週間分ですから、本当は140個です。

トイレを我慢して水分を控えると、エコノミークラス症候群になります。
それが災害関連死につながります。
トイレは、命に直結します。

なお、排水管が損傷しているときに水を流すと、下の階に汚水が出ます。
マンションにお住まいの方は、特にご注意ください。

3. 家具を固定する。

地震によるケガの3割から5割は、家具の転倒・落下です。
耐震改修より先に、今日できます。
板橋区には高齢者・障がい者のみ世帯への取付助成(上限22,000円)があります。

4. 感震ブレーカーと、「ブレーカーを落として逃げる」。

付けられるなら付ける。
付けられなくても、分電盤の位置を家族全員で確認しておく。
これだけで、通電火災のリスクは下がります。

5. 安否確認の練習を、家族で一度。

災害用伝言ダイヤル 171 は、 毎月1日と15日に練習できます。
今日帰ったら、ご家族で一度やってみてください。

あわせて、次の3つもご確認ください。

  • ご自宅の ハザードマップ (荒川氾濫版・集中豪雨版・土砂災害版の3種類があります)
  • 地震のときの避難先と、水害のときの避難先(同じとは限りません)
  • 罹災証明のために、被害を受けたら 片付ける前にスマートフォンで写真 を撮ること

まとめ

  • 板橋区の土砂災害警戒区域は152箇所・特別警戒区域118箇所で、港区に次ぐ23区第2位。区の中央を東西に貫く崖線が理由。
  • 警戒区域は崖の上端から10メートル、下端から高さの2倍。崖の上も対象。
  • 崖は大雨だけでなく地震でも崩れる。制度は大雨前提であり、地震時の崖リスクは制度の隙間にある。
  • 区は令和8年度に約900か所の実態調査と対策方針の策定に着手する。まさに今からが本番。
  • 「土砂災害警戒情報」は2026年5月29日から「レベル4土砂災害危険警報」に名称変更。 レベル4は全員避難
  • 連載6本を通して見えたのは、板橋区の災害対策は水準が高いということ。その上で次の一手は、感震ブレーカー助成・避難所の質の数値目標・受援計画の実効化・個別避難計画の地震拡大・がけ調査の実行の5つ。

連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。

災害は、来ないかもしれません。
しかし来たときには、備えていたかどうかだけが結果を分けます。

今日、水を1本多く買う。
携帯トイレを1袋足す。
家族で分電盤の場所を確認する。

それで十分です。
一つでも、今日やってみてください。


出典・参考資料

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