選挙ドットコム

中妻 じょうた ブログ

精神疾患603万人は「急増」なのか——統計のトリックと社会のリアル【いのちを支える板橋へ・第3回】

2026/9/10

精神疾患を持つ人は、この国でおよそ603万人にのぼります。
数字だけを見れば「急増している」と感じるかもしれません。しかし実態は、単純な病気の増加だけでは説明できません。国の統計手法の変更や、受診行動そのものの変化が大きく影響しているのです。
本日9月10日は「世界自殺予防デー」です。この連載の第2回では、自殺者の9割超に何らかの精神障害があったという確立された研究知見をお伝えしました。だからこそ、精神疾患の実像を正しく理解することが、自殺対策の出発点になります。

603万人の内訳と、急増して見える理由

厚生労働省の患者調査によれば、精神疾患を有する総患者数は約603.0万人です。内訳は入院が約26.6万人、外来が約576.4万人で、外来が大半を占めます。傷病分類別では、気分障害(うつ病・躁うつ病を含む)、神経症性障害・ストレス関連障害等、その他の精神および行動の障害の順に多くなっています。
外来患者数の伸びはとりわけ顕著です。平成14年から29年までの15年間で、認知症(アルツハイマー病)は約7.3倍、気分障害は約1.8倍、神経症性障害等は約1.7倍に増えています。一方で入院患者数はむしろ減少しており、平成14年の約34.5万人から平成29年には約30.2万人になっています。
つまり「精神疾患が急増している」という印象の中心にあるのは、入院を要するような重い病状の拡大ではなく、外来で通院する人の増加なのです。

統計のトリック——推計方法が変わった

もう一つ、見過ごせない事実があります。厚生労働省は令和2年の調査から、総患者数の推計方法を変更しました。外来患者数を推計する際に用いる「平均診療間隔」の算出方法で、平成29年までは前回受診から31日以上空いたケースを除外していたのに対し、令和2年からは99日以上空いたケースのみを除外するように基準を変えています。
この変更により、同じ受診実態であっても推計上の患者数は増えやすくなります。単純に「昔と比べて何倍になった」と比較することには注意が必要です。

「意識の変化」というもう一つの側面

一方で、社会全体の意識が変わってきたことも事実です。厚生労働白書は2004年、2014年、2024年の3回にわたり、健康状態にとって最もリスクとなる要因を住民に尋ねる調査を行っています。2024年の調査では、精神的ストレスを挙げた人の割合が、生活習慣に次いで2番目に多い15.6%となりました。これは20年前の調査と比べて3倍の数値です。
心療内科や精神科を受診することへのハードルが下がり、これまで受診に至らなかった人が支援につながるようになったのだとすれば、それ自体は前向きな変化だと私は考えます。問題を「隠す」社会から「相談できる」社会への転換が進んでいると見ることもできるからです。

板橋区でも進む、精神障がいの増加

板橋区障がい者計画2030によれば、区内の精神障がい者(手帳所持者)は令和5年度時点で6,575人となりました。令和元年度を100とした指数では126.8で、身体障がい者(104.1)、知的障がい者(110.7)と比べても、精神障がいの増加ペースが際立っています。
全国の傾向と同じく、この数字も「病状の急拡大」だけでなく、相談・受診につながりやすくなった結果を含んでいる可能性があります。だからこそ大切なのは、数字の増減に一喜一憂するのではなく、増えた分だけ相談・治療・生活支援の受け皿を用意できているかを問うことです。

中妻じょうたの見解

私は、精神疾患の患者数を「急増している、大変だ」という一色の危機感だけで語ることには慎重であるべきだと考えています。統計上の技術的な変更と、社会が抱える実際のストレスの増大とを、きちんと分けて議論する必要があります。
同時に、受診率が上がったこと自体を歓迎しつつ、増えた需要に見合うだけの精神科医療へのアクセスや、地域での相談体制が整っているかを、区議会でも継続して確認していきます。数字の読み方を誤れば、対策の優先順位も誤ってしまうからです。

住民の皆さんへ

本日9月10日は世界自殺予防デーです。板橋区でも「こころの体温計」など、気軽にストレス度を確認できる仕組みが用意されています。
もしご自身やご家族が「最近ストレスが続いている」「眠れない日が多い」と感じているなら、それは弱さではありません。精神科・心療内科への受診や、区の相談窓口の利用を、どうか一つの選択肢として考えてみてください。
もちろん、私に相談いただいてもかまいません。どうぞご連絡ください。
https://nakatsuma.jp/contact/

次回は、板橋区の意識調査で明らかになった「死にたいと思っても家族に相談しない」という孤立の実態を取り上げます。

The post 精神疾患603万人は「急増」なのか——統計のトリックと社会のリアル【いのちを支える板橋へ・第3回】 first appeared on 中妻じょうた 板橋区議会議員.

この記事をシェアする

著者

中妻 じょうた

中妻 じょうた

選挙 板橋区議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 2,943 票
選挙区

板橋区議会議員選挙

肩書 板橋区議会議員
党派・会派 立憲民主党
その他

中妻 じょうたさんの最新ブログ

中妻 じょうた

ナカツマ ジョウタ/55歳/男

中妻 じょうた

中妻 じょうた トップページへ

寄付して応援する

「中妻 じょうた」をご支援いただける方は、是非個人献金をお願い申し上げます。
※選挙ドットコム会員登録(無料)が必要です。

月別

ホーム政党・政治家中妻 じょうた (ナカツマ ジョウタ)精神疾患603万人は「急増」なのか——統計のトリックと社会のリアル【いのちを支える板橋へ・第3回】

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode