2026/7/9

中小企業が大企業と取引する際に、不利にならないよう規制する改正「下請法」が今年1月1日に施行されました。
その改正の背景は、日本経済がデフレからインフレへと変わる中、中小企業がコスト上昇分を適切に価格転嫁でき、確保した原資で賃上げを実現することにあります。
そのために、中小受託取引適正化法(取適法)は、中小企業や小規模事業者が不当な取引条件を強いられることのないよう、公正な取引環境を確保するために施行されたもので、その趣旨は大いに評価するものであります。
しかしながら、法律の実効性を確保するためには、制度を整備するだけでは十分ではありません。対価の決定や価格交渉の過程が適正であったか、発注者と受注者が対等な立場で協議できたかといった点は、形式的な確認だけでは判断が難しく、実際の取引現場の実態を継続的に把握することが不可欠です。
私が取適法施行後、いくつかの対象団体の方々にヒアリングを行ったところ、価格交渉がしやすくなった等、大きく前進はしたものの、これまでの商慣習から、コスト上昇を超える改善には至っていない実態が把握できました。
特に深刻な担い手不足に直面する運送業界では、荷主から運送事業者に対する過度な納期要求や、立場を背景とした取引がいまだに生じております。また、中小事業者の中には、法改正の内容を十分に理解していない事業者や、長年の商慣習から声を上げにくい事業者も少なくありません。
さらに発注者側においても、自らが法の適用対象となることを十分認識していないケースも考えられます。
そのため、法の実効性を高めるためには、違反を摘発することだけではなく、未然防止の取組が何よりも重要です。東京都としても中小企業や運送事業者等を対象とした定期的な実態調査や相談窓口の充実、業界団体と連携した制度の周知、啓発に積極的に取り組むべきであります。現場の実態を継続的に把握し、課題について国や関係機関へ適切に情報提供することで、制度の改善や適正な法運用につなげる役割を果たすことが期待されます。
また法執行にあたっては、違反行為には厳正に対応しつつも、形式的な違反のみを捉えた過度な摘発によって健全な企業活動を委縮させることがあってはなりません。業界の実情や商慣習、取引の経緯を十分に踏まえ、公平性と透明性のある運用を徹底することが重要です。
この法律の目的は、企業を処罰することではなく、公正で持続可能な取引環境を構築することにあります。行政、発注者、受注者、そして業界団体がそれぞれの役割を果たし、相互の信頼の下で適正な取引を定着させることこそが、本法の真の目的であり、東京都にもその実現に向けた積極的な役割が求められると考えます。
施行から半年が過ぎ、急激なコスト上昇で苦しむ中小企業の現場の声にもっと耳を傾け、関係する全ての方々と力を合わせ、このインフレ経済に立ち向かっていただきたいと思います。
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