2026/7/1
教育の独立性は揺るがせにしてはなりません
金沢市議会2026年6月定例月議会は、6月25日、本会議で討論・採決の後、総額54億1,131万円余の補正予算と中東情勢影響対策の1億4,800万円余の追加補正予算を可決して終了しました。
この最終日、議会議案として「教育基本法第14条第2項の運用方針及び認定基準の明確化を求める」意見書案をわが会派から提出しましたが、残念ながら少数否決されました。
ー末尾に提案理由説明全文ー
ただ、これに関連し、10人の連名で提出されていた「公立中学校における平和教育及び校外学習の政治的中立性と安全確保を求める陳情書」は、全会一致で不採択となりました。
以下、みらい金沢を代表して私が行った提案理由説明の全文を掲載し、ご報告とします。また、代表質問と答弁の全文は、追ってご報告いたします。
【提案理由説明】
提出会派を代表し、ただいま上程されました議会議案第3号 教育基本法第14条第2項の運用方針及び認定基準の明確化を求める意見書案の提案理由を説明いたします。
一昨日の6月23日は、81周年の沖縄慰霊の日でありました。沖縄県知事公室平和・地域外交推進課は、公式ホームページに沖縄戦の概説を掲載しています。それによれば、1945年3月26日、那覇市西方の慶良間諸島に、4月1日に沖縄本島中部の読谷村に米軍が上陸して以降、首里城をめぐる40日間の激戦を経て、南部地域が住民を巻き込んだ凄惨な地上戦となりました。守備隊である第32軍の牛島中将が自決し、組織的な戦闘が終結したこの6月23日が沖縄慰霊の日と定められ、沖縄県民9万4,000人、沖縄出身者もふくむ日本軍9万4,136人、アメリカ軍1万2,520人に上る戦争犠牲者を慰霊し、国の内外に対し、不再戦と平和を誓ってきたのです。
私は、読谷村のチビチリガマ、南部南風原の地下壕に設置された陸軍病院の跡、その分室として600人以上の負傷兵を収容した糸数壕(アブチラガマ)をフィールドワークした経験があります。また、当時、鉄血勤皇隊員とともに医療に当たった経験を人命軽視の玉砕主義への悲憤と慟哭を記した『青年医学徒の沖縄戦回想記』の著者、金沢赤十字病院名誉院長遠藤幸三さんの最晩年の証言をお聞きしたことも思い出されます。
玉城デニー知事は、沖縄全戦没者追悼式における平和宣言で次のように述べました。「沖縄戦の実相にふれるたびに、戦争というものはこれほど残忍でこれほど汚辱にまみれたものはありません。全てを失ったと言っても過言ではない81年前のあのときから、今日のような美しい島々を取り戻すまでに、先人たちの懸命な努力があったことを、私たちは忘れてはなりません。しかしながら、沖縄には今なお広大な米軍基地が存在し、過重な基地負担と基地から派生する諸問題により人間の安全保障が脅かされる現状が続いています。戦争という手段を否定し、戦争によらない課題解決を追求することにより、日本国憲法にうたわれる恒久の平和とその過程としての核廃絶を目指すことは、空虚な理想論などではなく、取り組むべき責務として求められているのです。」
沖縄が希求する平和とは、鉄の暴風に県民すべてが巻き込まれた沖縄戦史の継承と、その歴史と切れ目なく今日に持ち越されてきた基地の島の解決であることが訴えられました。私たちも沖縄の過去と現在に学び、向き合うことが求められていると思います。次の時代を生きる子どもたちの学びが殊更に重要であることは論を待ちません。
このように、平和のうちに共に生きられる未来を拓こうと自治体を挙げて大義に挑む沖縄において、その現地学習の最中に海難事故により若い命を含み尊い人命が失われたことは、かえすがえすも痛切の念に堪えません。二度と事故を起こさないための検証と再発防止策が徹底されねばなりません。
しかしながら同時に、文部科学省が、同志社国際高校の辺野古現地学習を、政治活動を禁じた教育基本法第14条第2項に違反すると初めて認定し、是正指導を行ったことは、戦争の惨禍から生まれた教育における憲法とも評される教育基本法立法の精神をいかに認識し、その尊重の立場に立った判断であったのか、深い疑問を禁じ得ません。
教育基本法は、教育の目的を、教育は人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民を育成することと謳い、2006年の法改正でも、この規範は維持されました。この目的条項と対をなすのが、第14条です。主権在民を担う主権者たる良識ある公民に必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならないと政治教育の責務を明記した上で、その第2項で、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動に限って禁じているのです。ここには、「政治的中立」なる文言はありません。第15条の宗教教育も同様の趣旨をもって規定されています。
因みに、1954年制定の義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法でも、その第3条で禁じているのは、特定の政党を支持させる等の教育の教唆及びせん動としています。今回の事案において、教育基本法第14条第2項に違反したと認定した教育とは一体何を指すのか、何が抵触したのか判然としません。
教育基本法を考えるうえで、さらに重要なのは、旧法第10条教育行政「教育は不当な支配に服することなく国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」改正基本法では第16条「教育は不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものである。」との規定です。教育の独立性の確保です。
これは、戦前の軍国主義に教育が統制動員され、多くの国民が戦地に駆り出されたことの反省が立法の精神です。この根幹の立法趣旨が、教育実践に対する行政権力の介入を抑制し、教育基本法違反との認定と是正指導を80年間にわたって行わせてこなかったのです。今回の文部科学省見解と是正指導は、教育行政に求められる教育の独立性の尊重を踏み越える政治的介入ではないかとの疑念や批判が上がっているゆえんです。
報道によれば、すでに修学旅行等で行われる平和学習の現地学習において、基地問題をはじめ現代の課題をコースから外したり、ガイド内容で触れないように求める教育現場の萎縮が始まっていると伝えられています。今日の政治問題を学習対象から避ける動きです。これを誘発した文部科学省の違反認定と是正指導は、教育基本法の立法趣旨に矛盾しない教育内容に対する行政判断であったのかが問われています。教育行政が恣意的に法規定を解釈し、権限を濫用することは許されません。
私たちみらい金沢は、こうした傾向が広がれば、子どもたちに保障されねばならない主権者たる良識ある公民に必要な政治的教養を身につける機会を奪い、国の意思に従順な国民が育成されるおそれを憂慮するものです。それを防ぐには、文部科学省は今回の教育基本法第14条第2項違反の認定を検証したうえで、教育の自主性の尊重を基本として、日本全国の教育機関が明確に理解できる認定基準の提示が求められると考えます。
よって、本意見書では、そうした立場から、国に対して、教育基本法第14条第2項の運用方針と認定基準を明確化する責任を果たすよう求めるものです。議員各位におかれては、本意見書の趣旨をご賢察のうえ、満場のご賛同をもって採択いただけますよう要請し、提案理由説明といたします。


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