2026/7/31
一般質問の解説の続きです。
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前回の記事では、令和2年の中野学園への土地売買において、不当な安価での譲渡による「公金の損失」と手元に残された残地の「財務規則違反の放置」についてお伝えしました。
今回は、なぜこれほど不当な安値(1㎡あたり25,700円)で特定法人へ払い下げられたのか、その根幹にある「価格算定における構造的欠陥(歪められた算定ロジック)」、そして本会議の質疑で判明した有効期限切れの書類流用と行政の決裁実態について検証します。
今回の問題を理解する上で不可欠な不動産評価の「証明力」と「有効期限」に関する重要用語を整理します。
国家資格である不動産鑑定士が「不動産鑑定評価基準」に則って作成する「不動産鑑定評価書」は、公的に認められた唯一にして最高の価格証明です。
評価書の有効期限(実務上のルール):
不動産鑑定評価書には法的な有効期限はありませんが、価格形成要因(地価動向や社会情勢)は日々変動するため、公有地の処分手続き等における実務上の有効期限は原則として「価格時点(評価した日)から6ヶ月以内」、長くとも「1年以内」とされています。1年を超えた評価書は過去の参考資料に過ぎず、売却価格の直接の根拠とすることはできません。
「意見書」が有効な期間:
価格の大きな変動がないかを確認する補足的な「調査意見書」等が有効とされるのも、評価書作成からおおむね6ヶ月〜1年程度が限界です。さらに、分筆や地上権設定など「土地の物理的・権利的な性質そのものが変化した場合」は、意見書の流用すら不可であり、新たな「鑑定評価書」の再取得が必須となります。
今回の市のように、数年前の古い評価書や意見書を引っ張り出し、有効期限が切れた状態で流用することは、公有財産管理の実務として著しく不適切です。
地積過大: 対象の土地が周辺の標準的な土地に比べて「広すぎる(大きすぎる)」ため、単価を引き下げる(減価する)要因のことです。
個別格差率: 標準的な土地の価格を100とした場合、対象の土地固有の長所・短所(形状、日当たり、埋設物リスク、地積過大等)を数値化して補正する割合のことです。
第三者がその土地の地下や地上に工作物(地下用水管など)を設置・所有し、長期的に利用できる強い法的権利のことです。地上権が設定された土地は、建築制限や将来の掘削リスクが生じるため、資産価値が著しく下落(減価)します。
今回の売却価格(25,700円/㎡)は、これらの期限や概念を歪めて算出されています。
市は正当な「不動産鑑定評価書」を新たに取得せず、有効期限(1年)を大幅に過ぎた平成30年度の鑑定評価書や令和2年度の意見書を不当に流用し、令和3年3月に市職員が自ら作成した「不動産鑑定調書」に依存しました。
さらに、①売却エリア275.88㎡(83坪)内に用水管が残存しているのは全体のわずか2.2㎡(0.6坪)に過ぎず、リスクがほぼ解消された綺麗な土地であるにもかかわらず、市は「地積過大5%減」「地下埋設物による利用制約5%減」等と個別格差率をわざわざ「16%減(格差率84%)」に修正し、単価を30,600円から25,700円へ引き下げました。また、この調書では地上権設定の存在自体が考慮されていません。
公有地鑑定では「一団の土地(348坪)」として一体評価を行うのが原則ですが、分筆後に各土地のリスクに著しい差が生じた場合、一律の評価をそのまま当てはめることは評価基準の原則に反します。
将来的に「公衆用道路」として市に無償帰属することが確定していた164.22㎡(49坪)について、本来は建築不可のため大幅に減額して評価すべきところ、他の宅地と全く同じ「1㎡あたり25,700円」という高値の宅地価格のまま算定・売却されました。
令和2年2月、千葉県によって本土地(残地エリアの一部)に地上権が設定されました。市民の貴重な財産である市有地に「永久的な利用制限」と「将来的な減価リスク」という極めて強い法的権利がかけられたわけですから、これは当然、市民の代表である市議会へ速やかに報告・説明されるべき重要事項です。
しかし、市はこの地上権設定の事実を議会に対して一切報告することなく、処理を進めました。
【二重の隠蔽構造】
地上権が設定された事実を議会に報告しなかっただけでなく、その後に作成された売却用の「不動産鑑定調書」においてすら地上権設定を評価に反映させませんでした。
不都合な権利制限がかけられたことを隠し、議会によるチェックを意図的に回避した姿勢は、二重の意味で市民と議会に対して背信的行為と言わざるを得ません。
有効期限切れの書類を使い回し、地上権設定の報告も伏せたまま、職員自作の「不当な格差率(16%引き)」で処分された本件について、私が本会議で質問した際、市幹部からは行政のガバナンス崩壊を裏付ける決定的な答弁が飛び出しました。
担当部長は、鑑定調書の内容について「最終決裁前に管理職が判断して決裁する」と答弁しました。つまり、組織のトップである市長をはじめとする幹部が、自作調書の内容をチェックして承認したという認識を示したのです。
しかし、その決裁前に調書の内容について報告や説明を受けたのか質問したところ、市長は「当時の記憶はない」と答弁しました。
公金損失に直結する公有財産処分の決定という最高度の重要事項における決裁の実態が露呈した瞬間です。
地上権設定や分筆という現況変化があったにもかかわらず、3年ごとの財産評価および台帳価格の改定を定めた財務規則第261条が履行されていない点について、「庁内でまともに合議(協議)がなされていたのか」と質しました。
これに対し、担当部長は以下のように答弁しました。
「評価についての適切な説明が当時十分になされていなかったことで、合議が回ってしまったと思われる」
これは自ら「必要な情報共有や検証を怠ったまま、形式だけでチェック機能をスルーさせ、不適切な財務管理を組織的に通してしまった」と自白したに等しい極めて重い答弁です。
有効期限の切れた古い評価書を流用し、地上権設定の事実を議会に一切報告せず、リスクのない綺麗な土地にわざわざ減価補正をかけて安く売り、将来の道路用地を高値で処理する――。
この「作られた安値」と議会軽視の対応が、チェック機能すら働かない形骸化した決裁ラインを通り、財務規則違反の放置へと繋がっていったプロセスは、まさに我孫子市行政の「構造的欠陥」そのものです。
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ホーム>政党・政治家>西垣 一郎 (ニシガキ イチロウ)>一般質問「市有地取引における巧妙なスキームの検証」⑥価格算定における構造的欠陥