職場での熱中症により、近年は一年間で約30人が亡くなり、約1,000人以上が4日以上仕事を休んでいます(厚生労働省)。屋外の現場だけでなく、工場・倉庫・オフィスでも発症するリスクがあります。

熱中症は、正しい知識と事前の準備があれば防ぐことができます。この記事では、厚生労働省の資料をもとに、管理者・労働者それぞれが取り組むべき対策を時系列でまとめました。
目次
- 暑さ指数(WBGT)とは|リスク判断の基本
- 4月の準備期間にやること(管理者向け)
- 5〜9月の対策期間にやること
- 7月の重点取組期間
- 熱中症が発生したときの応急処置
- 労働者自身ができる予防行動
- まとめ・チェックリスト
暑さ指数(WBGT)とは|リスク判断の基本
出典:厚生労働省|みんなで防ごう!熱中症
厚生労働省|熱中症クールワークキャンペーン(R7.2)
職場での熱中症対策の基本は、暑さ指数(WBGT)を活用することです。WBGTは気温だけでなく、湿度・太陽からの輻射熱も考慮した指標で、熱中症のリスクをより正確に判断できます。
| リスク区分 | WBGT値 | 目安となる行動 |
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| 注意 | 25℃未満 | 通常作業。水分補給を忘れずに |
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| 警戒 | 25〜28℃ | 積極的に水分・塩分を補給。作業の合間に休憩を |
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| 厳重警戒 | 29〜31℃ | 激しい作業は中止。こまめな休憩と水分補給を徹底 |
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| 危険 | 31℃以上 | 屋外の激しい作業は原則中止。緊急対応の準備を |
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WBGTの状況と予測は、環境省熱中症予防情報サイトで確認できます。作業開始前にチェックする習慣をつけましょう。
4月の準備期間にやること(管理者向け)
熱中症対策は、夏が来てから始めるのでは遅い場合があります。4月の準備段階から体制を整えることが重要です。
- 労働衛生管理体制の確立:事業場ごとに熱中症予防管理者を選任し、責任体制を明確にする
- 暑さ指数(WBGT)把握の準備:JIS規格に適合した暑さ指数計を準備・点検する
- 作業計画の策定:暑さ指数に応じた休憩時間・作業中止の基準を含めた計画を作る
- 設備対策の検討:屋根・通風・冷房・散水設備の設置を検討する
- 休憩場所の確保:冷房を備えた休憩スペースを確保する
- 服装の検討:透湿性・通気性の良い服装を準備する
- 教育研修の実施:管理者・労働者双方に対して熱中症予防の教育を行う
- 緊急時対応の事前確認:異常時の連絡体制・対応手順を確認し、関係者に周知する
5〜9月の対策期間にやること
キャンペーン期間(5〜9月)は、準備期間に検討した対策を実際に運用します。
環境・設備面
- JIS規格の暑さ指数計で作業場のWBGTを随時把握する
- 設備対策を実施し、暑さ指数を下げる
- 冷房を備えた休憩場所を設置する
作業・健康管理面
- 暑熱順化への対応:新しい職場・休み明けの労働者は、7日以上かけて徐々に作業時間を増やす(急激な暑熱環境への適応は危険)
- プレクーリング:作業開始前や休憩中に深部体温を下げる(冷たいものを摂る・冷却ベストの活用など)
- 水分・塩分の定期補給:のどが渇く前に補給。水よりスポーツドリンクが有効
- 日常の健康確認:朝食の未摂取・睡眠不足・前日の多量飲酒は熱中症リスクを高める。作業前に確認する
- バディ制の導入:2人1組で互いの体調を確認し合う
要注意の疾患がある方への配慮
以下の疾患を持つ労働者は医師等の意見を踏まえた個別対応が必要です。
- 糖尿病・高血圧症・心疾患・腎不全・精神・神経系疾患・広範囲の皮膚疾患・感冒・下痢
7月の重点取組期間
7月は熱中症リスクが特に高まる時期です。以下を徹底してください。
- 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じて対策を追加する
- 暑さ指数に応じた作業の中断を徹底する
- 水分・塩分を積極的に摂取させ、その確認を徹底する
- 作業開始前の健康状態確認と巡視頻度を増やす
- 熱中症リスクが高まっていることを含めた教育を実施する
- 体調不良の者に異変を認めたときは、ためらわずに救急隊を要請する
熱中症が発生したときの応急処置
「おかしいな?」と感じたら、すぐに報告・対応することが命を救います。
- 涼しい場所に避難:絶対に一人にさせない
- 衣類をゆるめる:楽な姿勢で横にさせる
- スポーツ飲料で水分補給:水よりスポーツドリンクを選ぶ。塩分・糖分も補給する
- 身体を冷やす:首・脇の下・太ももの太い血管の上を重点的に。手足も冷やす
自力で水分補給できない・意識がおかしい場合は、ためらわずに救急隊を要請してください。応急処置はあくまで応急手当です。症状が回復しない場合は速やかに医療機関に搬送してください。
労働者自身ができる予防行動
- 日頃からウォーキングなど軽い運動を行い、身体を暑さに慣らしておく
- 作業中は小まめに水分・塩分を補給する
- 冷たいもので手足を冷やす習慣をつける
- 体調の変化を感じたら、我慢せずにすぐ上司・同僚に報告する
まとめ・チェックリスト
- ✅ 職場の熱中症で年間約30人が死亡、1,000人以上が4日以上休業している
- ✅ 熱中症対策の判断基準は「気温」ではなく「暑さ指数(WBGT)」を使う
- ✅ 管理者は4月中に管理体制・作業計画・設備・教育の準備を完了させる
- ✅ 新規入職者・休み明けの労働者は7日以上かけて暑熱順化を図る
- ✅ 7月は重点取組期間。巡視頻度を増やし、水分補給の確認を徹底する
- ✅ 発症時は涼しい場所へ避難・衣類をゆるめる・スポーツ飲料・身体を冷やすの4ステップ
- ✅ 自力で水が飲めない・応答がおかしい場合はためらわずに救急車を呼ぶ
職場の熱中症対策は、管理者だけの問題ではありません。職場全体で「おかしいな?」と気づいたら声をかけ合う文化が、命を守ります。豊平区内で働く皆さんの職場環境についても、ぜひご意見をお聞かせください。
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著者プロフィール
角谷尚哉(かくたに なおや)/医学博士・理学療法士
株式会社Health Link 代表取締役。心臓リハビリテーションの普及と医療・介護分野の人材育成に取り組む。札幌医科大学附属研究連携推進機構 客員講師として大学発スタートアップの起業支援にも携わる。国民民主党北海道 札幌市豊平区 政策委員。2027年札幌市議会議員選挙(豊平区)に向けて活動中。「全世代の健康を支えるまちづくり」を政策の軸に、医療・介護・子育て・働き方など、市民生活に直結するテーマで情報発信を続けている。