2026/7/6

現在、政権が進めている「副首都整備推進法案」について、私は強い問題意識を持っています。
まず前提として、私は副首都構想そのものに反対しているわけではありません。首都直下地震や大規模災害に備え、東京一極集中を見直し、政治・行政・経済・通信・物流などの国家機能を分散させることは、国民生活を守る上で極めて重要です。
実際、今回の法案も、大規模災害に備えて国家社会機能の継続性を確保し、多極分散型経済圏の形成を通じて日本経済の成長に資することを目的としています。法案では、首都中枢機能の一部を代替する「首都中枢機能代替地域」と、首都中枢機能の全部または大部分を代替し、多極分散型経済圏の中核にもなる「副首都」が分けて位置づけられています。
だからこそ、この議論は本来、国民全体にとって極めて重要なテーマであるはずです。
しかし、現在の進め方を見ると、どうしても「大阪ありき」「維新の都合ありき」で進んでいるように感じざるを得ません。
自民党と日本維新の会は、令和8年6月24日にこの法案を共同提出しました。衆議院の議案情報でも、提出会派は自由民主党・無所属の会と日本維新の会であることが確認できます。 また、日本維新の会は3月31日の時点で、与党統治機構協議体において同法案の骨子案が合意されたと公表しています。
もちろん、与党が政策合意に基づいて法案を提出すること自体は、議会政治の一部です。しかし問題は、その内容と進め方です。
報道では、この法案が「大阪都構想」の実現を目指す日本維新の会の肝いりであり、附則には特別区設置や道府県名を「都」に変更する手続に関わる内容も含まれていると指摘されています。自民党内からも、「抱き合わせるべきではない」といった異論が出たと報じられています。
副首都構想が本当に国家の危機管理や国民生活のための制度であるならば、特定政党の看板政策や、特定地域の制度変更と結びつけて進めるべきではありません。
さらに懸念するのは、国会運営のあり方です。
与党が多数を持っていれば、形式上は法案を可決することができます。しかし、数の力で押し切れるからといって、それが国民のための政治であるとは限りません。特にこの法案は、東京一極集中の是正、国家機能の代替、国土構造の将来像に関わる重大なテーマです。であれば、与党だけで結論を急ぐのではなく、野党の意見、地方の声、防災・都市計画・交通・財政の専門家の知見を丁寧に反映させるべきです。
ところが、報道では、与党が副首都構想関連法案などの審議入りを強行する構えを見せ、野党側が反発しているとも伝えられています。 国民生活に直結する制度であるにもかかわらず、十分な議論を尽くさずに進められているように見えることは、大きな問題です。
では、副首都機能はどこに置くべきなのでしょうか。
大阪には確かに大きな強みがあります。経済規模、都市機能、空港・港湾、大学・企業の集積、西日本の中核都市としての存在感。これらを考えれば、大阪が西日本の経済・行政拠点として重要な役割を担うことは否定できません。
一方で、大阪、とりわけ湾岸部には、南海トラフ巨大地震、津波、液状化、長期浸水といったリスクがあります。国家機能のバックアップを担う拠点を考えるのであれば、単に大都市であることや、政治的な都合だけで判断してよいはずがありません。
候補地は大阪だけではありません。
名古屋・中京圏には、東京と大阪の中間に位置し、産業集積が大きいという強みがあります。一方で、南海トラフ地震の影響圏にあることや、湾岸・低地部のリスクも考慮しなければなりません。
京都・奈良には、歴史・文化・象徴性という大きな価値があります。しかし、用地、交通容量、既存行政機能、警備・宿泊機能などには課題があります。
仙台、札幌、福岡・北九州なども、地方中枢都市としての力を持っています。ただし、東京からの距離、即応性、気象・災害リスクなど、それぞれに検討すべき課題があります。
さいたま新都心には、既に国の行政機関が集積しており、東京との近接性という強みがあります。しかし、東京に近すぎるため、首都直下地震の同時被災圏としての懸念もあります。
その中で、私は本庄市を含む埼玉県北部地域にも、内陸型バックアップ拠点としての可能性があるのではないかと考えています。
本庄市周辺は、東京から近すぎず遠すぎない距離にあり、上越新幹線、JR高崎線、関越自動車道、国道17号など、首都圏と北関東・上信越方面を結ぶ交通軸上にあります。湾岸部とは異なるリスク構造を持つ内陸地域であり、首都直下地震や南海トラフ巨大地震と同一のリスクに偏らない分散先として、検討に値するのではないでしょうか。
もちろん、本庄市を含む埼玉県北部にも課題はあります。
大阪や名古屋と比べれば、人口・経済規模、国の行政機関の集積、宿泊施設、医療機能、警備体制、国際会議機能などは十分とは言えません。また、深谷断層帯などの地震リスクも存在します。
したがって、「本庄市を副首都に」と単純に主張するのではなく、国の多極分散政策の中で、危機管理、行政継続、データバックアップ、広域物流などの一部機能を担う候補地として検討すべきだ、というのが私の考えです。
副首都構想は、大阪のための制度であってはなりません。
また、与党の都合で押し切る制度であってもなりません。
本当に国民のためになるのか。
大規模災害時に国家機能を守れるのか。
東京一極集中の是正につながるのか。
全国の地方にとって公平な制度設計になっているのか。
将来世代に無駄な負担を残さないのか。
こうした観点から、冷静に見極めていく必要があります。
私は、特定の地域を否定したいわけではありません。大阪にも、名古屋にも、さいたまにも、各地域にそれぞれの役割があります。大切なのは、政治的な取引ではなく、国民益を基準に判断することです。
副首都構想を本当に国民のための制度にするならば、与党は数の力で押し切るのではなく、野党の意見にも耳を傾け、全国の候補地を客観的に比較し、国民に開かれた議論を尽くすべきです。
その上で、本庄市を含む埼玉県北部地域も、内陸型の首都機能バックアップ拠点として、検討対象の一つに加える価値があるのではないか。
この問題について、今後も冷静に見極め、発信してまいります。
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