2026/7/6

本庄市にある民営霊園で、土葬の受け入れが行われていることについて、市内外から多くの関心が寄せられています。
テレビや新聞、SNSなどでも取り上げられ、本庄市のホームページにも、市民からの問い合わせが増えていることを受けて説明ページが掲載されています。市によれば、現在の日本では火葬が一般的である一方、土葬そのものは墓地埋葬法で禁止されているわけではありません。また、土葬を受け入れるかどうかは、墓地管理者の判断によるものとされています。(本庄市公式サイト)
この点は、まず冷静に確認しておく必要があります。
「土葬=ただちに違法」ではありません。
しかし同時に、「違法でないから何の問題もない」という話でもありません。
墓地は、地域の生活環境、公衆衛生、水質、土地利用、そして住民の安心に関わる極めて身近な施設です。だからこそ、行政には、感情論ではなく、事実と制度に基づいた丁寧な管理体制が求められます。
対象となっている墓地は、埼玉県本庄市に所在する民営霊園です。霊園の公式案内では、宗旨・宗派を問わない公園墓地として、キリスト教、イスラム教などにも対応していることが示されています。所在地や管理会社等も公開されています。
本庄市の説明では、この霊園は宗教法人が経営許可を受けた民営霊園であり、本庄市が管理している霊園ではありません。市は、死亡届の受付に伴う埋火葬許可証の交付を行いますが、埋葬方法として土葬を受け入れるかどうかは墓地管理者の判断になる、という整理を示しています。
一方で、市民からは不安の声も寄せられています。
本庄市の「市長への手紙」には、地下水汚染や環境への影響、無許可埋葬の再発防止、管理者への指導、独自のガイドラインや条例改正の検討を求める意見が掲載されています。これに対し市は、近隣のため池の水質調査を毎年実施し、異常がないことを確認していること、また埼玉県など関係機関と連携して巡回・訪問を行っていることを回答しています。
つまり、現時点で市は一定の確認や関係機関との連携を行っているものの、市民の不安を完全に払拭できるほど、管理基準や情報公開の仕組みが明確になっているとは言い切れません。
私は、6月の本庄市議会において、この土葬墓地の管理体制について質問しました。
私が問題にしたのは、宗教や特定の国籍の方々を否定することではありません。
また、土葬という葬送のあり方そのものを一方的に否定することでもありません。
問うたのは、あくまで行政実務としての管理体制です。
具体的には、次のような点を確認・提案しました。
土葬墓地の運用実態をどのように把握しているのか。
水質調査はどの地点で、どのような項目を、どの頻度で行っているのか。
無許可埋葬の再発を防ぐため、台帳と現地の整合性をどのように確認しているのか。
墓穴の深さ、覆土の厚さ、水源からの距離など、公衆衛生上の管理基準を市として整理する考えはないのか。
市民から不安の声が寄せられた際、どの窓口で、どのように対応するのか。
本庄市には、過去に散骨場に関する条例を整備した実績があります。地域の生活環境や住民の安心に関わる葬送の問題について、市が先例を踏まえてルールを整えてきた経緯があるのです。
であるならば、土葬墓地についても、国や県の動きを待つだけでなく、本庄市として必要な管理項目を整理し、少なくともガイドラインの形で明文化することは検討に値すると考えます。
土葬墓地をめぐる問題は、本庄市だけの課題ではありません。
報道によれば、政府は国内のムスリム人口の増加や土葬墓地の需要の高まりを受け、都道府県、政令市、中核市の計129自治体を対象に、墓地管理条例の内容や土葬を含む埋葬方式の現状について実態調査を行っています。調査結果は2026年度中に取りまとめ、自治体に必要な周知を行う方針とされています。
報道では、国内のムスリム人口が2019年末の約23万人から2024年末には約42万人に増加したとの専門家推計も紹介されています。土葬墓地の需要が高まる一方で、地域住民との摩擦も各地で表面化しています。
ここで重要なのは、国の実態調査の対象が主に都道府県、政令市、中核市であるという点です。本庄市のような基礎自治体においても、実際に土葬を受け入れている墓地が存在する以上、現場の不安や課題はまさに本庄市で起きています。
国が調査を行うことは重要です。
しかし、国の取りまとめを待っている間にも、市民の不安は続きます。
だからこそ、現場を預かる自治体として、本庄市が主体的に整理すべき論点があります。
この問題は、ともすれば「土葬を認めるのか、認めないのか」という単純な対立に流れがちです。
しかし、行政が取るべき姿勢は、単純な賛成・反対ではありません。
法律上禁止されていない以上、感情だけで一律に排除することはできません。
一方で、地域住民の不安を「差別だ」「理解不足だ」と片づけることも、決して適切ではありません。
水源への影響は大丈夫なのか。
墓地の管理は適正に行われているのか。
埋葬場所や件数は、許可や台帳と整合しているのか。
将来的に利用が増えた場合、現在の体制で対応できるのか。
災害時や廃止時、無縁化した場合の管理はどうなるのか。
これらは、宗教や文化の問題以前に、行政が当然確認すべき生活環境上の論点です。
厚生労働省も、墓地・埋葬等に関する法律や墓地経営・管理の指針などを示しています。墓地は、単なる民間施設ではなく、公衆衛生と公共性を伴う施設として扱われるべきものです。
だからこそ私は、本庄市に対し、次のような対応が必要だと考えます。
①現地確認と台帳管理の徹底
埋葬許可、墓地管理者の記録、実際の埋葬場所が一致しているかを、関係機関と連携して定期的に確認する仕組みが必要です。
②水質調査の見える化
市は近隣のため池の水質調査を実施し、異常がないことを確認していると説明しています。であれば、調査地点、調査項目、調査頻度、結果の推移を、市民に分かりやすく公表することが、不安の軽減につながります。
③管理基準の明文化
墓穴の深さ、覆土の厚さ、水源や住宅地との距離、排水や雨水対策、埋葬時の確認手続きなど、最低限確認すべき項目をガイドラインとして整理することが必要です。
④住民相談体制の整備
市民が不安や疑問を持った際、どの部署に相談すればよいのか。相談を受けた後、市はどのように確認し、どのように回答するのか。その流れを明確にするべきです。
近年、外国人住民の増加に伴い、宗教、生活習慣、葬送のあり方など、これまで地域であまり意識されてこなかった課題が表面化しています。
私は、多文化共生そのものを否定する立場ではありません。
しかし、多文化共生とは、地域住民の不安を置き去りにして、何でも受け入れることではないはずです。
本当に共に暮らしていくためには、同じ地域に住む人たちが、同じルールのもとで、互いに安心できる環境を整えることが必要です。
ルールが曖昧なままでは、不安が広がります。
不安が広がれば、誤解や対立も生まれます。
だからこそ、行政が早い段階で基準を示し、透明性を確保することが、結果として地域の分断を防ぐことにつながります。
本庄市の土葬墓地問題は、単に一つの霊園の問題ではありません。
これから外国人住民が増えていく中で、地域の生活環境をどう守るのか。
宗教的配慮と公衆衛生をどう両立させるのか。
市民の不安に対して、行政がどこまで主体的に向き合うのか。
その姿勢が問われています。
私は、土葬を感情的に否定するのではなく、また不安の声を軽視するのでもなく、事実に基づいた管理体制の整備を求めていきます。
地域の安心を守ること。
法令を遵守すること。
生活環境と公衆衛生を守ること。
そして、必要な情報を市民に分かりやすく示すこと。
この当たり前の行政対応を、一つひとつ積み重ねていくことが、本庄市に求められていると考えます。
引き続き、市民の皆さまから寄せられる声を丁寧に受け止めながら、議会の場で確認し、必要な提案を行ってまいります。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>出牛 じゅんいち (デウシ ジュンイチ)>本庄市の土葬墓地をめぐって|不安を煽るのではなく、安心できるルール整備を