2026/5/15
唐津市議会市民厚生委員会の行政視察として、令和8年5月13日から14日にかけて、熊本県合志市と鹿児島県鹿児島市を訪問いたしました。 少子高齢化、そしてゴミ処理施設の更新という、唐津市が直面している極めて重要な課題に対し、両市がいかに独創的で実効性の高い施策を打ち出しているか。その現場で得た知見と、唐津市へのフィードバックをまとめました。


合志市は、年少人口比率が18.0%(唐津市は12.5%)と非常に高く、合計特殊出生率も1.88と全国平均を大きく上回る「子育て世代に選ばれる街」です。
まず注目したのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使した伴走型支援です。 合志市が導入している子育てアプリ「Kokoa」は、単なる情報発信ツールではありません。健診予約、予防接種のスケジュール管理、さらには専門職への相談窓口としての機能を集約しており、孤立しがちな育児を社会全体で支える基盤となっています。 唐津市においても、利便性の向上と行政の効率化を両立させるため、こうしたデジタルツールの積極活用は不可欠だと再認識しました。

合志市には「ひかりの子」「ぽっぽの部屋」「わかば」という3箇所のつどいの広場があります。 特筆すべきは、これらの運営を民間委託や補助金を活用して柔軟に行っている点です。財源として「子ども・子育て支援交付金」などを戦略的に活用し、単なる「場所」の提供に留まらず、利用者が「また来たい」と思えるような、ニーズに即した居場所づくりが徹底されていました。

保育士不足は全国共通の悩みですが、合志市では「保育士等人材バンク」を設置しています。 驚いたのはその運用方法です。市は登録窓口として機能し、その後のマッチングは各施設に委ねることで、市としての直接的な経費を抑えながら、潜在保育士の掘り起こしを行っていました。 「家賃補助などの直接的な金銭支援よりも、職場の雰囲気や勤務環境を重視する」という若手保育士のニーズをアンケートで捉え、就職フェアや施設見学ツアーを強化している点は、唐津市の今後の施策立案に非常に参考になります。
次に、鹿児島市の「南部清掃工場」を視察しました。ここは単なるゴミ焼却場ではなく、「エネルギー産出拠点」へと進化を遂げていました。

南部清掃工場の最大の特徴は、ゴミ焼却施設に「バイオガス施設」を併設している点です。 家庭から出る生ゴミや、し尿・浄化槽汚泥をメタン発酵させ、そこからバイオガスを取り出します。
ガスの売却益: 年間約5,000万円(都市ガス事業者へパイプラインで供給)
発電の売却益: 年間約3億3,000万円
驚くべきは、この発電量です。施設内の電力をすべて賄った上で、余った電力を売却して巨額の収益を上げています。

この施設はDBO方式(Design, Build, Operate)、つまり「設計・建設から20年間の運営までを民間企業が一括で請け負う」手法を採用しています。 高度な技術が必要な施設だからこそ、民間のノウハウを最大限に活用し、従来方式と比較して約19億円(約13.1%)ものコスト縮減を見込んでいます。
臨海部の工業地帯とはいえ、ゴミとし尿を集約することへの懸念に対し、鹿児島市は「施設内を負圧(空気が外に漏れない状態)にする」などの徹底した悪臭対策を講じていました。周辺の民間事業者との丁寧な対話により、渋滞や環境悪化への不安を解消している点も、公共施設の合意形成において学ぶべき点が多くありました。


今回の視察を通じて感じたのは、合志市の「ソフト(人・アプリ)」と鹿児島市の「ハード(エネルギー回収施設)」、その両面における戦略的な視点の重要性です。
清掃工場の新設に向けたエネルギー戦略 唐津市でも令和18年に新焼却炉の建設を計画しています。鹿児島市の事例から分かる通り、通常の焼却施設(約234億円)に対し、発電施設を備えた場合(約239億円)のコスト差はわずか5億円程度です。それでいて年間3億円以上の利益を生むのであれば、費用対効果は極めて高いと言わざるを得ません。国の補助金(発電施設等への補助)も活用しながら、環境負荷を下げつつ財政に寄与する「稼ぐ清掃工場」の検討を強く働きかけてまいります。


唐津の福祉・民生の質の再認識と向上 合志市の民生費比率は約49%と非常に高い数値ですが、実際に聞き取り調査を行う中で、我が唐津市の民生・福祉施策も決して引けを取っていないという手応えを得ました。しかし、面積が唐津の9分の1である合志市のような密度の高い支援を行うには、やはりDX(アプリ導入)や拠点運営の「質」の向上が鍵となります。
保育士の「定着」にフォーカスした支援 「人材バンク」の設置は、単なる仲介に留まらず、離職理由の傾向(職場の雰囲気や業務負担)を把握するアンケート機能を持たせるべきです。金銭的支援だけでなく、心理的な安全性を高める支援策を強化していく必要があります。
「他市の良いところを学び、唐津の特性に合わせて磨き上げる」。これが行政視察の真髄です。 今回、南部清掃工場で見た「ゴミがエネルギーに変わり、街を支える」光景、そして合志市で見た「親子の笑顔をデジタルの力で支える」姿。これらは決して遠い国の話ではなく、私たちの唐津市でも実現可能な未来です。
今回得た膨大な資料と知見を、今後の委員会審議や提言に最大限に活かし、市民の皆様が「唐津に住んでよかった」と心から思える街づくりに邁進してまいります。
唐津市議会 市民厚生委員会 井手清和
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