2026/5/16
最近の観光をめぐる議論は、どうしてもインバウンドを中心に語られがちです。しかし、日本に住む私たち自身が日本各地を訪れ、その土地の自然や文化、食に触れ、日本の豊かさを改めて感じることも、この国の観光の大切な土台です。地方の旅行需要の約9割は日本人が下支えしており、国内旅行は地方の旅館や飲食、交通などを支える重要な内需でもあります。
政府は「観光立国推進基本計画」において、日本人の「地方部延べ宿泊者数」を令和12年までに3.2億人泊とする目標を掲げています。しかし、現状は3億人泊にとどまっており、この壁をどう乗り越えるかが問われています。
目標達成に向けてまず直面するのが、予算の壁です。観光庁の予算の大半は国際観光旅客税を財源としており、インバウンドを意識したものです。一般財源のなかにも訪日プロモーション等が含まれており、日本人の地方宿泊を直接後押しする予算が一体どこにどれほどあるのか、心もとない状況です。「インバウンド向けの環境整備が結果的に国内旅行にも裨益する」というだけでなく、日本人の地方旅行を増やすことを正面の目的とした施策と予算の確保が急務です。
国内旅行を阻む具体的な要因として、現役世代では「休暇の取りにくさ」が挙げられます。長く働き続けるためには、心身を休め、地域と関わる時間を持つことが不可欠です。現在の休暇改革は「混雑する時期を避けよう」という呼びかけにとどまりがちですが、これを一歩進め、平日の温泉地や農山漁村での滞在、ローカル鉄道の旅など地方側の受け皿と働く人の休暇取得を具体的につなげ、実際に行動へと移せるような取組を強力に進めるべきです。
さらに、今後の国内観光の鍵を握るのはシニア層です。しかし、60代以降、健康上の理由から旅行を控える方が急増していることは大きな機会損失です。長年働いてこられた方々が退職後に日本各地を旅することは、人生の豊かさそのものです。シニア層の国内旅行を、厚生労働省の健康寿命延伸や介護予防の取組とも連携し、「健康寿命を支える観光」として国を挙げて後押ししていく必要があります。
また、国内旅行の重要な目的地である温泉地も深刻な課題を抱えています。私の身近な箱根や鶴巻温泉をはじめ、全国各地の温泉地で後継者不足や老朽化による旅館の廃業が相次ぎ、大型廃屋が放置されています。さらに、経営に行き詰まった施設が外国資本に買収され、特定の外国人観光客向けの施設となる事例も報じられています。
今年度、観光庁は「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」を創設しました。公費を投じて再生する以上、特定の資本や客層に偏るリゾート化を助長するのではなく、地域のまちづくり方針に合致し、地域住民や幅広い旅行者に開かれたものになるよう、国としてしっかりと確認し配慮を求めるべきです。そして、この事業を出発点として、必要な規模への拡充を含め、中長期的に日本の温泉街全体の再生に本腰を入れて取り組むことが求められます。
最後に、観光振興の影で生じている問題にも目を向ける必要があります。神社仏閣は観光地である前に、地域の信仰や暮らしに根ざした神聖な場所です。しかし近年、無断撮影や立入禁止区域への侵入など、いわゆる「映え」スポットとして扱われることによる観光客のマナー問題が深刻化しています。地域の方々が大切にしてきた信仰の場や日々の暮らしを守りながら、持続可能な観光のあり方を模索していくことが、これからの日本の観光政策において極めて重要であると考えます。
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