2026/7/29
平和教育について(令和8年第2回定例会一般質問・その1)の続きです。
次に、千代田区の公共事業における効率性、特に決定と実行のありかたについて質問いたします。
千代田区は、皇居を中心に大手町・丸の内・有楽町・神田・秋葉原などの国際的なビジネス・文化拠点を擁し、日本の政治・経済・文化の中枢を担う特別な自治体です。そのポテンシャルは他区の追随を許さず、再開発などの公共事業によって生まれる付加価値も際立っています。
ところが、本区の公共事業は、意思決定から着工・完成に至るまでに滞りが多発しています。これは区民の資産を活かしきれていないという点に立脚して、率直に問題提起いたします。
先般、五十通りバリアフリー歩行空間整備事業の入札が不調に終わった件について、私なりに取材したところ、あるデベロッパーの方から「神田警察通り工事の遅延のことは業界では広く知られており、しばらくは積極的に応札する業者はかなり少ないのではないか」という本音を伺いました。
近年の人件費・資材の高騰により、工事コストは年々増大しています。着工が1年遅れれば、その分だけ確実にコストが上乗せされます。「千代田区だから入札しない」という業者が実際に存在するのであれば、入札のあり方自体を再検討する必要があると考えます。
もう一つの問題は、議決や着手のスピードです。実行に至るまでの一連のプロセスを改善しなければ、今後さらに無駄な支出が膨らんでいきます。承認ルートが過度に複雑であったり、複数部署の調整に時間を要したりする点は、改善の余地が大きいと考えます。
ここで、意思決定の問題を別の角度から照らす、一つの歴史的文書をご紹介させてください。
1944年、アメリカCIAの前身組織である戦略諜報局OSSが、ナチス・ドイツ占領下のヨーロッパで活動する市民協力者に向けて、一冊の極秘マニュアルを作成しました。名称は「Simple Sabotage Field Manual」、邦訳すれば「簡易破壊工作マニュアル」です。

2008年にCIAによって機密解除され、現在は誰でも閲覧することができます。
本マニュアルのセクション11「組織と生産への全般的な妨害」には、組織を内部から機能不全に陥らせるための戦術が、具体的に列挙されています。

いくつか抜粋します。
「あらゆる事項を正規の手続きを通じて処理することを主張し、近道を決して許さない」
「できるだけ頻繁に、長々と演説をする」
「あらゆる事項を委員会に付託し、さらなる検討を求める。委員会はできるだけ大人数にする」
「できるだけ頻繁に無関係な問題を持ち出す」
「文書・議事録・決議の文言の細部にこだわる」
「前回決定した事項を蒸し返し、その妥当性を再検討しようとする」
「『慎重に』と訴え、拙速を戒める」
さらに、管理者・監督者向けの妨害戦術として、「書面による命令を要求する」「命令を誤解したふりをして際限なく質問する」「重要度の低い仕事を先に処理させる」「手続きと承認ルートを複雑化し、1人で済む承認に3人を必要とさせる」といった項目も明記されています。

これは、80年前に敵国の組織を崩壊させるために作られた戦略文書ですが、現代の組織の意思決定にも通用するものです。
念のため申し上げますが、これは特定の人・事案を指すものではありません。決定プロセスと実行プロセスの両面で、あらゆる組織が善意のままに陥りうる構造的な罠として、紹介するものです。
また、こうした行動を全否定すべきだとも考えません。議論は異論を戦わせる場であり、民主主義の根幹です。少数意見を保護する仕組みも不可欠です。
ただし、議論と妨害は本質的に異なります。前者は結論を目指しますが、後者は結論に至らせないことが目的です。民主主義の手続きを悪用して結論を至ることを邪魔することは議論における純然たる「破壊活動」であり、民主主義の敵です。
この区別は、有権者である区民の目には明らかであると信じます。

意図的であるか否かを問わず、こうした言動が結果として再開発など公共事業の重要案件の進捗を妨げているとすれば、それは区民の大きな損失です。
そこで、4点伺います。
第一に、工事の着工・完成が1年遅れた場合、現時点でどの程度のコスト増が見込まれるか、区としての試算をお示しください。
第二に、入札の不調・不落など工事の遅れによる無駄を防ぐために、実勢価格の的確な反映や発注方式の工夫、指名競争入札・随意契約の積極的な活用も含め、入札制度を一過性の停滞ではなく構造問題として見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。
第三に、区内で現在進行中、または計画段階にある主要な公共事業について、意思決定の遅延が生じている場合、その主な要因をどのように分析しているでしょうか。
第四に、本マニュアルを踏まえて、今後、議論や審議を効率的に進めるための対策を立てておられるでしょうか。
血税を無駄にしないために、今最も必要なのは、効率よく議論し、いったん決断したら速やかに着手することです。行政におかれましても、「速やかに決断し、速やかに実現する文化」を育てていくことが求められていると信じます。
区長、教育長、並びに関係理事者の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。
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