2026/7/29
白岡市議会議員 細井藤夫です。
7月28日に、白岡市議会産業建設常任委員会所管事務調査(視察)で、新潟市へお伺いしました。
今年の産業建設常任委員会の視察では、新潟市内で2つの視察事項を一日でまとめることができたため、早朝出発、深夜着の日帰りになりました。
視察項目は、
① DXプラットフォーム推進事業の取組について
新潟市DXプラットフォーム推進事業の取組について(白岡市議会産業建設常任委員会所管事務調査の報告) - 細井藤夫(ホソイフジオ) | 選挙ドットコム
② アグリ・スタディ・プログラムの取組について
でした。
本稿は、「アグリ・スタディ・プログラム」を、私の報告書をもとにブログにするものです。
新潟市は726.01㎢の面積のうち、約45%が農地であり、水稲の収穫量は国内全自治体の1位を誇っています。
(令和7年の141,000トンの収穫量は、2位の自治体の倍近くになります)
また、農作物全体の農業産出額も全国トップクラスにあります。
一方で、少子高齢化の影響により、新潟市内の15歳未満の子どもの人口が10万人を割り込み、総人口に占める割合も11%となったほか、令和7年の新潟県人口移動調査では、新潟県から県外への流出人口の約44%を、20歳から29歳までが占めるなど、将来的な「農業の担い手不足」が大きな課題です。
このことから、市民に対して、もっと新潟の農業について理解し、農業を応援する心情を育むことを目的として、平成26年に食育・農業体験の取組として「新潟発わくわく教育ファーム推進事業」をはじめています。
また、新潟市では平成26年6月に農業体験施設として「新潟市アグリパーク」を開業しており、令和6年の農業体験施設ランキングで全国1位の評価を得るなど、農業体験を通じた農業への理解推進に注力しているところです。
今回視察した「アグリ・スタディ・プログラム(ASP)」の取組は、「新潟発わくわく教育ファーム推進事業」の取組を契機として、学校において農業に関する事項を教育するものです。
ASPは、平成25年度に「にいがた流教育ファーム」の推進過程で、ASP検討委員会を設立し、作成されたものです。検討委員会では、学校関係者30名、行政から教育委員会24名、農林水産部16名、民間の指定管理者22名によって、検討会を年10回以上実施し、ASPを作成しました。
(ASPは、平成26年度に初版がつくられ、27年度に改訂版、28年度に実践集がまとめられました。)
その後、平成29年、30年の学習指導要領の改訂や、GIGAスクール、SDGs未来都市への対応などを踏まえ、令和4年度に「令和版『アグリ・スタディ・プログラム』活用の手引き」を取りまとめています。
reiwaban.ver1.pdf (令和版「アグリ・スタディ・プログラム」活用の手引き)
「アグリ・スタディ・プログラム(ASP)」は、新潟市の学校園で行う、新潟にふさわしい農業体験学習の総称です。
農業体験を各教科等の学習に位置づけ、学習指導要領に準拠しつつ、各教科等において、農業体験活動を活かした単元等を構成するものであり、将来を担う子供たちに「人との絆や命を大切にし、郷土愛を育むとともに、問題解決力を高めていくことを目的としています。
期待する子どもの姿として、3つのストーリーを掲げています。
・持続可能社会の実現に向けて、よりよく問題を解決する「未来へのストーリー」
・豊かな食の恵みに感謝し、命と人の絆を大切にする「命のストーリー」
・農業のすばらしさに気づき、ふるさと新潟を愛し、誇りに思う「郷土愛のストーリー」
です。
ASPでは、
a)「視る」「聴く」「触る」「嗅ぐ」「味わう」の『五感』を通して学ぶ
b)「自分が育てること」と「自分が消費すること」のつながりを通じた『アグリ魂』に学ぶ
c)働くことを通して学ぶ
d)アクティブ・ラーニングで学ぶ
e)専門家に学ぶ
の5点を大切にし、単に体験しておわりではなく、事前学習と振り返りまでを授業として行うこととしています。
例えば、学校でミニトマトやピーマンといった野菜を育て観察する授業と連動して、アグリパークを訪問して、栽培法を専門員に聴いたうえで、アグリパークで自分たちで収穫した野菜を使ってピザを焼いて食べて、「美味しい野菜」を実感し、また学校での栽培の工夫につなげていく…、そんな教育をするのが、ASPの実践になります。
ASP実践の場としては、「新潟市アグリパーク」「市内各地の農家」「学校教材園」「いくとぴあ食花」「学校教育田」を、『教育ファーム』と定義し、市内の児童生徒に対し、合計70の基本プログラムを展開しています。
ASPは、新潟市教育振興基本計画のなかで、
基本施策2 確かな学力の形成
基本施策10 郷土の歴史・文化に親しむ教育の推進
にかかる事業として推進されているものです。
推進体制としては、教育委員会、新潟市農林水産部、アグリパーク運営グループ及びアグリ・スタディ指導主事の三者連携を行い、ASP定例会を実施することで、官民推進を図っています。
なお、アグリ・スタディ指導主事は、公立学校の教員が異動で教育委員会等の行政に配属され、勤務先としてアグリパークに配属されているものです。
三者の役割として…
教育委員会は、ASPの作成・改善ならびに、教職員体験学習研修を担い、ASPの学校への周知・指導を行っています。
農林水産部は、アグリパークの設置・施設整備、宿泊費・交通費助成、専門家・補助者の謝金負担、アグリ・スタディ指導主事の配置を行い、施設整備や運営支援を行っています。
指定管理者は、アグリパークの運営、ASPの実践を行っています。
「教育ファーム」の学校利用者数は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、令和2年度に激減したが、その後は、増加傾向にあり、アグリパークの受入数も順調に推移しているといいます。
アグリパークの受入状況では、「幼稚園・保育所・認定こども園」の就学前児童、特別支援学校の利用が新型コロナウイルス感染症流行前より増加しているのが目立つところです。
令和7年度のASPの学校園別の実施状況では、小学2年生の実施が多いが、学習指導要領で野菜を育てる授業を行うなど、学校での学習にリンクした状況にあるようです。
ASP学習後のアンケートでは、達成度について肯定的評価が目立つほか、農業についての意識においても「農業が新潟市の自慢になると思うか」の設問に97.6%が肯定的な回答をするなど、一定の成果があるものと考えます。
一方で、ASP実施上の課題として、
・天候に左右されること
・冬期間の利活用
・学習指導要領との結びつきの強化
・物価や交通費等の金銭的問題
(アグリパークまでの交通費が値上がりし、訪問しにくくなったほか、諸物価の高騰で、ASPの実施費用の見直しが求められる状況になっていることなど)
などがあげられています。
今後は、令和10年度に向けて、施策の総合的見直しにより、施策内容の質的向上を行うそうです。
現在、新潟市ではASPのほか、「食と農のわくわくSDGs推進事業」「学校教育田設置事業」を行っています。
令和10年度の施策見直しでは、学校教育田を廃止のうえASPに統合するほか、SDGs推進事業のうち小中学校向けをASPに統合し、高校生以上を対象として「食と農に関わるスタートアップ推進事業」の開始を目指しているといいます。
アグリパークでの学習で、農業に興味関心を持ったことをきっかけとして、農業高校へ進学した児童がいるなどの効果も出ていることから、今後の施策強化によって、さらに農業を考える生徒児童が出てくることを期待します。
農業の担い手不足は、白岡市においても深刻かつ喫緊の課題であると考えています。
市内において、5地域の「地域計画」が策定され、概ね10年後の農業の姿を検討し、目指すことになっていますが、集約化を行ったとしても、「農業が就職先として魅力ある職種」であると感じていただかない限り、人材不足はなかなか解決しないとも考えます。
新潟市の施策の白岡市への導入は、
「施設整備上の問題」(大規模な施設をつくることが難しい)
「運営上の問題」(施設を利活用する人がどれだけ見込めるか)
だけでなく、埼玉県教育委員会との
「教育カリキュラム構築上の問題」(学校教育との連携のためには、県との調整が必要と考えられる)
もあると考えており、同様施策の実現は難しいと感じました。
一方で、児童生徒への農作業体験などについては、農業への理解促進、食への関心の強化などの効果も見込めることから、市内農家の協力をいただだきながら、実施を検討する価値があるものと考えています。
土日実施など学校教育に支障のないかたちでの実施も含め、方向性を見出せればよいのですが…。
(天候に左右される農業では、数か月前からのイベント告知といった手法が難しいことも課題だと思っています。)
今回、視察先となった「新潟市アグリパーク」は、野菜・果物の育成、乳牛の飼育から、食品の6次加工の研究まで行う大規模な施設でした。
農作物の直売所では、市内産の様々な農作物が並べられ、店内の壁には生産者の氏名が掲示されており、「自分たちが作ったものを、ここで売る」という農家さんの意欲を感じることが出来ました。
併設のレストランでは、市内育成の豚肉や野菜をつかった食事が出されており、訪問時は、食材切れで早々に閉店するなど盛況でした。
(今回の視察では、昼食時に、こちらのレストランで定食をいただきました。)
アグリパークに来たからここで、という方だけでなく、レストラン目当てにお越しになる方もおられたのではないかと推察しました。

牛舎では、乳牛2頭に、本年出産された子牛がいましたが、飼育員さんによれば、「この子牛がいることで、生徒児童に対して、牛乳はこの子の飲む分をわけてもらっているんだ」と説明できるとのこと。そういうことを考えながら牛乳を飲む機会、ありませんでした…。

牛舎の外では、堆肥の生産も行われており、牛舎から出た糞を、時間をかけて堆肥にしていく過程を観察できるなど、農業全般について体験できる環境が整えられていることに強く感心しました。

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