2026/5/4
5月4日は、現在「みどりの日」です。
ゴールデンウイークの中にあるため、多くの人にとっては、連休の一部として自然に受け止められている日かもしれません。
しかし、この5月4日という日は、実はかなり奇妙な歴史を持っています。
もともと5月4日は、「みどりの日」ではありませんでした。
そして、もともと「国民の祝日」でもありませんでした。
前回、4月29日の「昭和の日」について書きました。
前回記事はこちらです。
https://go2senkyo.com/seijika/186483/posts/1364746
4月29日は、もともと昭和天皇の誕生日でした。
戦後の祝日法では、4月29日は「天皇誕生日」とされていました。
ところが、昭和天皇が崩御され、平成になると、天皇誕生日は12月23日に移ります。
では、4月29日は平日に戻ったのか。
そうではありません。
平成元年の祝日法改正により、4月29日は「みどりの日」とされました。
昭和天皇が自然に親しまれていたことなどを背景に、「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」日とされたのです。
つまり、現在の「みどりの日」は、もともとは5月4日ではなく、4月29日にあった祝日でした。
その後、平成17年の祝日法改正により、平成19年、つまり2007年から、4月29日は「昭和の日」とされました。
昭和の日は、祝日法上、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日とされています。
そして、4月29日が昭和の日になったことに伴い、みどりの日は5月4日に移されました。
内閣府の説明でも、5月4日は青葉若葉の時節であり、ゴールデンウイーク中の一日であることなどを踏まえて、みどりの日とされたと説明されています。
ここまでは、祝日の名称変更の話です。
しかし、5月4日の面白さはここからです。
5月4日は、もともと空白の日でした。
5月3日は憲法記念日。
5月5日はこどもの日。
その間に挟まれた5月4日は、長い間、特別な意味を持つ祝日ではありませんでした。
今の感覚では、5月3日、4日、5日は連続して休みという印象が強いと思います。
しかし、昔はそうではありません。
5月3日が休み。
5月4日は平日。
5月5日が休み。
いわゆる飛び石連休になっていたのです。
そこで昭和60年、1985年に祝日法が改正されました。
この改正で、「前日と翌日が国民の祝日である日は休日とする」という趣旨の規定が作られました。
日本法令索引によると、この改正法は昭和60年12月20日に成立し、同年12月27日に公布されています。
ここで大事なのは、5月4日がこの時点で「祝日」になったわけではないということです。
法律上は、5月3日と5月5日という祝日に挟まれているため、「休日」とされたのです。
祝日と休日は、似ているようで違います。
祝日は、その日自体に意味があります。
憲法記念日は、憲法を考える日。
こどもの日は、子どもの人格と幸福を考える日。
昭和の日は、昭和という時代を顧みる日。
みどりの日は、自然に親しみ、その恩恵に感謝する日。
一方、当時の5月4日は、その日自体に特別な意味があったわけではありません。
前の日と次の日が祝日だから、間も休みにする。
いわば、カレンダーの谷間を埋めるための休日でした。
ここに、日本の祝日制度の奇妙さがあります。
そもそも、「祝日と祝日の間だから、その日も国が休日にする」という発想自体が、かなり日本的です。
海外にも、祝日と週末の間をつなげて休む、いわゆるブリッジ休暇のような考え方はあります。
しかし、多くの場合、それは個人が有給休暇を使って調整する話です。
特に欧州では、年に数週間まとめて休暇を取ることも、それほど不自然なことではありません。
EUの労働時間指令でも、少なくとも年4週間の有給休暇が制度として位置づけられています。
つまり、休みは本来、国がカレンダーに赤い日を大量に並べて作るものではありません。
労働者が、自分の仕事、家庭、体調、人生設計に合わせて取るものです。
ところが、日本では長い間、有給休暇を自由に取りにくい社会風土が続いてきました。
本来であれば、5月4日に休みたい人は有給を取ればよい。
別の時期に休みたい人は、別の時期に休めばよい。
数日ではなく、数週間まとめて休むことも、本来は普通にできる社会であるべきです。
しかし、日本ではそれが難しい。
だから、国が祝日を増やす。
祝日と祝日の間に平日があると、飛び石で非効率だから、その日も法律で休日にする。
これは一見、親切な制度に見えます。
しかし、よく考えると奇妙です。
自由に休める社会であれば、政府がわざわざゴールデンウイークのような官製連休を設計する必要はありません。
国民一人ひとりが、自分の判断で休めばよいからです。
日本では、個人が自由に休むのではなく、国が一斉に休む日を決める。
会社も学校も行政も、同じ時期に止まる。
その結果、道路は混みます。
新幹線も飛行機も混みます。
観光地も混みます。
宿泊費も上がります。
どこへ行っても人が集中します。
それでも、多くの人はその時期にしか休みにくい。
これは、自由に休める社会というより、「一斉に休まないと休みにくい社会」です。
5月4日の歴史は、そのことを静かに教えています。
昭和60年の国会審議でも、休日を増やし、労働時間を短縮することは時代の流れであり、勤労者福祉だけでなく、貿易摩擦の解消という観点からも課題であると説明されていました。
さらに、5月のゴールデンウイークでは、5月3日と5月5日に挟まれた5月4日に出勤する「谷間出勤」の非効率性が指摘され、すでに企業の中には、5月4日を特別休日にしたり、有給休暇を使わせたりして三連休にする例が増えていたとされています。
つまり、5月4日を休みにする法律は、ただの思いつきではありません。
日本人の働き方。
休み方。
企業活動の効率。
家族で過ごす時間。
そして当時の国際経済の空気。
そうしたものが重なって生まれた制度でした。
ただし、ここで見落としてはいけないのは、これは「自由に有給を取れる社会を作る」方向ではなく、「国が一斉に休む日を増やす」方向だったということです。
この違いは大きいと思います。
有給休暇を自由に取れる社会は、一人ひとりの人生の時間を尊重する社会です。
一方、官製連休に頼る社会は、国が決めたカレンダーに国民生活を合わせる社会です。
もちろん、祝日そのものを否定する必要はありません。
国として記念する日、感謝する日、歴史を振り返る日はあってよいと思います。
しかし、祝日と休日をごちゃごちゃにし、休みを増やすために祝日の谷間まで法律で埋めていく発想は、かなり特殊です。
現在の祝日法でも、「国民の祝日」は休日とされるほか、祝日が日曜日に当たる場合の振替休日、そして前日と翌日が祝日である日の休日が規定されています。
そして現在、この「祝日と祝日の間を休日にする」仕組みが通常のカレンダーで現実に発動する可能性があるのは、ほぼ9月です。
敬老の日は、9月の第3月曜日です。
秋分の日は、天文学上の秋分日に基づくため、年によって日付が動きます。
そのため、敬老の日が9月21日、秋分の日が9月23日になる年には、間の9月22日が休日になります。
実際、内閣府が公表している2026年の祝日・休日でも、9月21日が敬老の日、9月22日が祝日法第3条第3項による休日、9月23日が秋分の日とされています。
いわゆるシルバーウイークです。
つまり、5月4日が正式にみどりの日となった後も、この「谷間を休みにする制度」は残っています。
ただし、今の通常の祝日配置では、発動する場面はかなり限られています。
5月4日は、もはや単なる谷間の休日ではなく、正式な「みどりの日」になりました。
そのため、現在の5月4日は祝日そのものです。
一方、祝日と祝日の間を休日にする制度は、主に敬老の日と秋分の日の組み合わせで現れる制度として残っています。
こうして見ると、5月4日は単なる連休の一日ではありません。
最初は、何の意味もない平日でした。
次に、祝日と祝日の間だからという理由で、法律によって休日にされました。
そして最後に、「みどりの日」という意味を与えられ、正式な祝日になりました。
空白だった一日が、制度によって休みとなり、後から意味を与えられた。
これは、日本の祝日制度の不思議さを象徴しています。
祝日は、本来その日自体に意味があるものです。
しかし日本では、祝日と祝日の間だから休みにするという、かなり独特な制度が生まれました。
その背景には、個人が自由に有給休暇を取りにくい社会があります。
自由に休めないから、国が休みを作る。
自由に長期休暇を取れないから、政府が官製連休を作る。
その結果、みんなが同じ時期に一斉に休み、同じ時期に移動し、同じ時期に混雑に巻き込まれる。
これは本当に豊かな休み方なのでしょうか。
本当に必要なのは、祝日をさらに増やすことではなく、一人ひとりが必要な時に休める社会を作ることではないでしょうか。
5月4日は、自然に親しむ日です。
しかし、その成り立ちをたどると、日本人の働き方、休み方、そして国が国民生活をどう設計してきたのかまで見えてきます。
みどりの日を、ただのゴールデンウイークの一日として過ごすのも悪くありません。
しかし、少し立ち止まって考えてみると、この日はかなり奥深い日です。
なぜ、5月4日は休みなのか。
なぜ、祝日と祝日の間まで国が休日にするのか。
なぜ、日本では個人が自由に長く休むより、国が決めた連休に合わせて一斉に休む社会になっているのか。
5月4日は、そんな日本の奇妙な休み方を考える入口になる日です。
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