2026/4/22
市川市は「不交付団体」です。
聞き慣れない言葉ですが、これは市川市の財政の強さを示す一方で、別の見方をすれば、国の普通交付税による下支えを受けない自治体でもある、ということです。
こう聞くと、
お金持ちの自治体なのか。
国からお金をもらっていないのか。
船橋市より余裕があるという意味なのか。
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実際、この言葉は日常ではほとんど使いません。けれど、市の財政を考えるうえでは、とても大事なキーワードです。
今回は、市川市民の皆さん向けに、「不交付団体」とは何かを、近隣自治体とも比べながら、できるだけやさしく整理してみます。
まず、ここがいちばん誤解されやすい点です。
「不交付団体」とは、普通交付税を受けない自治体のことです。逆に、普通交付税を受ける自治体は「交付団体」です。千葉県も、普通交付税は基準財政需要額が基準財政収入額を上回る自治体に対し、その差額を基本として交付されると説明しています。
少しやさしく言い換えると、国はそれぞれの自治体について、
「標準的な行政を行うにはどれくらいお金が必要か」
「その自治体は標準的にどれくらい税収を見込めるか」
を計算しています。
前者が基準財政需要額、後者が基準財政収入額です。
必要なお金のほうが多い自治体には普通交付税が配られ、自前の税収などで標準的な行政をまかなえると判定された自治体は、普通交付税を受けません。
つまり、不交付団体とは、少なくとも国の算定上は、自前の財源で標準的な行政を回せる自治体という意味です。
「国から何ももらっていない自治体」という意味ではありません。
市川市自身の資料では、財政力指数について、単年度の値が1を超えるとその年度は普通交付税が交付されないと説明されています。市川市の決算関係資料では、単年度の財政力指数として1.108が示されています。
さらに、千葉県の令和7年度普通交付税等の決定でも、市川市は不交付団体に含まれています。
つまり市川市は、税収力が比較的強く、国の算定上は標準的な行政需要を自前でまかなえると判定されているため、不交付団体なのです。
これは市川市の財政上の強みの一つです。けれど、それは「何もしなくても安心」という意味ではありません。
ここで市民感覚として不思議なのが、船橋市です。
船橋市は人口規模も大きく、中核市で、税収もかなりあるはずです。
それなのに、なぜ交付団体なのでしょうか。
答えは、税収の大きさだけでは決まらないからです。
普通交付税は、単に「どれだけ税収があるか」だけでなく、その都市規模に見合った行政需要がどれだけ大きいかも見ます。税収が大きくても、それ以上に必要な行政コストが大きければ、交付団体になります。
船橋市の令和6年度当初予算案では、普通交付税を100億円計上しており、前年度比で大きく増えています。背景として、公共施設の光熱費、施設管理委託料の増加、給与改定、会計年度任用職員への勤勉手当支給などによる需要増を見込んでいると説明されています。
つまり船橋市は、税収は大きいが、それ以上に都市として必要な行政需要も大きいため、普通交付税の対象になっているのです。
ここは大事です。「人口が多い」「税収が多い」イコール不交付団体ではないのです。
近隣で市川市と似た位置にいる自治体として、浦安市も参考になります。
千葉県の令和7年度普通交付税等の決定では、浦安市も不交付団体です。
浦安市は公式ページで、ふるさと納税について、交付団体なら住民税減収の75%が地方交付税で補てんされるが、不交付団体では補てんがなく、流出分は純粋な減収になるとはっきり説明しています。
この説明は、市川市民にとっても分かりやすいヒントになります。
不交付団体とは、見方を変えれば、国からの普通交付税による下支えを受けない自治体でもあります。そのぶん、自前の財政運営がより重要になります。
ここで見落としてはいけないのが、ふるさと納税による税収流出です。
市川市の令和8年度施政方針によれば、令和6年度の寄附受入額は約8,200万円だった一方、個人市民税の寄附金控除額は約29億3,400万円にのぼり、差し引き約28億5,200万円の減収となっています。約30億円近い財源が市外へ流れている計算です。
しかも市川市のような不交付団体では、この流出の痛みがより直接的に響きやすくなります。交付団体であれば住民税減収の一部は地方交付税の算定を通じて事実上補てんされますが、不交付団体は普通交付税を受けないため、その補てん効果を受けにくいからです。
市川市が不交付団体であることは、財政力の強さを示す一面があります。
しかし同時に、ふるさと納税のような税収流出に対して、国の普通交付税による下支えを受けにくいという弱点も抱えているのです。
たかさんが前回の市議会議員選挙で、ふるさと納税への対策を訴えていたのも、この流出を看過できないと考えたからです。約30億円近い財源が市外へ流れていく状況を、ただ黙って見ているわけにはいかない。そう考え、前回の選挙でもこの問題への対策を訴えました。
そして、その具体策の一つとして、市川市動植物園とパンチくん人気を、市川市への寄付やふるさと納税の追い風に変える発想も提案してきました。以前の関連記事でも、その方向性を具体的に書いています。
https://go2senkyo.com/seijika/186483/posts/1329362
ここは慎重に見なければいけません。
市川市はたしかに不交付団体です。けれど、それはあくまで、その年度の算定で標準的な行政を自前で回せると判定されているという意味です。
つまり、不交付団体という肩書きは永久保証ではありません。税収が落ちれば外れますし、福祉、教育、インフラ維持などで標準的な行政需要が大きく伸びれば、交付団体側に入ることもあり得ます。制度上、市川市が「なぜ交付にならないのか」といえば、今のところは基準財政収入額が基準財政需要額を上回っているからです。とてもシンプルですが、制度の答えはこれに尽きます。
ここも誤解しやすい点です。
不交付団体というのは、普通交付税を受けないという意味であって、国や県から来る他の財源までゼロになるという話ではありません。市の財政は、市税だけでなく、地方消費税交付金など、さまざまな財源で成り立っています。市川市の施政方針でも、一般財源として地方消費税交付金が挙げられています。
つまり、市川市が不交付団体だからといって、
「国から一円も来ない市」
「全部自腹でやっている市」
というわけではありません。
不交付団体とは、あくまで普通交付税に頼らず、標準的な行政を行えると算定されている自治体という意味です。
そのため、市川市の財政を考えるときは、「不交付か交付か」だけでなく、市税以外にどのような財源があり、それを何に使っているのかまで見ることが大切です。
市川市の立ち位置を一言でいえば、こうです。
市川市は、千葉県内でも財政力が比較的強く、普通交付税に頼らず標準的な行政を行えると見なされている自治体です。
ただし、それは単純に「余裕がある」という意味ではなく、税収と行政需要のバランスの上に成り立つものです。
船橋市のように、税収が大きくても行政需要がさらに大きければ交付団体になります。浦安市のように、市川市と同じく不交付団体であれば、ふるさと納税による流出もより直接的に痛みになります。市川市では、その流出が直近で約28.5億円の減収にまで膨らんでいます。
だからこそ、市川市の財政を考えるときは、
単に「不交付団体だから安心」
単に「税収があるから大丈夫」
で終わらせてはいけません。
本当に大事なのは、その財源を何に使い、どこを整え、どこを後回しにしているのかです。
不交付団体であることは、市川市の強みの一つです。
しかし、それはゴールではありません。
財政の強さが、市民の安心や暮らしやすさにきちんと変換されているか。
そこまで見てこそ、初めて意味があります。
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